表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

とある少年少女が残した手紙・手記・ラクガキ

一人きりではダメなのに・・・

作者: 北屋 風

3作品めです

短いですが、よろしくお願いします。

 あんなにたくさん人がにぎわっていた部屋で


 みんなが楽しく笑いあった部屋で


 君とスゴしたこの部屋で


 大切な思い出が詰まった部屋で


 今は冷たい部屋で


 「別れは必ずやってくる」


 だから大丈夫


 ほんとうに?


 部屋で一人たたずんだ


 必ず別れのやってくる世界


 必ず終わりのやってくる世界


 必ず何かを手放さないといけない世界


 そんな世界


 そこで


 失うなんて絶対に嫌だから


 みんなとの思い出を


 君との思い出を


 忘れるなんて嫌だから


 僕は何回でも言い訳をする


 自分自身に何回も


 僕は何回でも君に語り掛ける


 誰もいないその空間に向けて


 何回も


 あの子の声が聞こえてくる


 その声に向けて手を伸ばす


 手のひらに感じたのは 


 ひんやりと冷たい壁


 みんながいた時のぬくもりを思い出して


 部屋の中でたった一人


 泣き叫んだ


 「一人にしないでよ」


 

 世の中はみんな身勝手で


 自分のことさえ良ければそれでよく


 僕個人でさえ身勝手で


 うそをついていた


 自分のために


 でも


 あの子はきれいだった


 みんなよりほんの少しだけ身勝手じゃなかった


 僕よりもほんの少しだけ身勝手じゃなかった


 だから

 

 あの子は愛されていた


 いまはもういない



 あの子はもういない


 切り捨てられたから


 親友といっていた


 大切なものといっていた


 仲間から


 あんなに簡単に切り捨てられて


 必死に手を伸ばしたのに


 必死に声をあげたのに


 しのぶの乱れ


 そんな思いは


 にやにやと笑う


 過去の友に遮られた


 あの子はやがて枯れ果てて


 いなくなってしまった



 僕は「ひとり」が大好きといっていた


 信用することは疑うこと


 大切な人なんて信用できない


 みんななんて勝手にすればいい


 僕は一人で十分だ


 あの子は「みんな」が大好きといっていた


 信用することは信じること


 親しい友は信用できる


 みんな楽しければそれでいい


 

 あの子がいなくなった後


 みんなどんどん連れていかれた


 どこへ?


 しらない


 みんな連れていかれた


 ある人は壁に落書きを残して


 ある人は手紙を書き残して


 ある人は大切なものを残して


 連れていかれた


 いつからおかしくなったのだろう


 あの子がいなくなってから?


 いやちがう


 みんながおかしくなったんだ


 どうして?


 しらない


 誰も教えてくれない

 

 ねえ


 おしえてよ



 僕らは学校で暮らしていた


 先生の言う学校で


 毎日

 

 朝ごはんが出て


 昼ごはんが出て


 夜ご飯が出て


 お菓子も出て


 授業も楽しかったし


 べんきょうもおもしろかった


 楽しい時間を暮せていた


 

 ある日


 ベルが鳴った


 鐘が鳴った


 悲鳴が泣いた


 どこから?


 外から


 学校の外から聞こえた


 どーん


 どーん


 ばんばん


 そんな音も聞こえた


 僕は先生に聞いた


 「この音は何ですか?」


 先生はにこりと笑って


 教えてくれなかった


 ほかの人にも聞いた


 教えてくれなかった


 

 みんながおかしくなり始めたのはこの頃


 何があったんだろう


 先生はやつれていき


 みんなはどんどんおかしくなっていく


 あの子と僕だけが正常で


 何があったのだろう


 なんであの子は消えたのだろう


 なんでみんな連れていかれたのだろう


 なんで僕だけ取り残されているのだろう


 それをこたえてくれる人は


 もういない



 もういいや


 もうどうだっていいや


 この部屋には僕一人で十分だ


 僕だけがいればいい


 僕だけが覚えておけばいい


 僕だけが守っておけばいい


 近くの窓に背もたれて


 座り込み


 次の言葉を冷たい体でつぶやこう


 何回でもつぶやこう


 「ひとりだけでじゅうぶんだ」


 一人きりではダメなのに。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ