戦神の誓い
「戦神様、お久しぶりでございます」
「そなたは我の名を知っておろう、そちらで呼んでも構わんのだぞ」
「畏き方々を御名で呼ぶなど恐れ多いことでございます」
誰にも自身に与えられた名である【真名】があり、悪意あるものが魔力を持ってその名で呼べば、相手を掌握することに等しく、夫婦であっても互いの真名を教えあわないのが当たり前である。
唯一まっとうに使われるのが王に仕える近衛兵の任命である。
王にその身を持って使える証を立てるのだ。
そんなものであるので、遥かに格が上で効果がないとは言え
真名で呼ぶなどということができるはずがない。
真名を告げられるのは言わば加護を得たということであり、感謝を示すのは当然として、調子にのれば跡形も無く吹き飛ばされかねない相手に変わりはないのだ。
危うきに近寄らず―とはよく言ったものである。
「まあよい。先にも言ったとおり、4年の間に200の剣刃を鍛えるは見事である。先の制約にしたがいそなたに加護を授けよう。"刃掛"の能力を強化しよう」
私が初めて剣を作ったときに与えられた加護が"刃掛"である。
私が鍛えた剣刃に限り自在に出し入れすることができる剣の倉庫である。初めは鍛えた剣が条件をクリアしているかチェックのための納品場所であった能力だが、50本、100本と鍛えた際に能力を強化されてきた。今回200本目を鍛えるに当たってまた強化されたようだ。
手首に戦神様の印、"御璽"が刻まれ、収められた剣刃を自由に入れ替え持ち替えできるようだ。
「では次の試練に挑むがよい---」
その声を響かせて御姿が消えると、見慣れた洞窟の風景が映し出されてくる。
この世界には"神様"の存在は身近である。
その姿を拝見した者は少なくなく、直接声を交わした者も多い。
そんなわけであるので、"神頼み"という行為も割と一般的である、が、
より切実な願いを奉る儀式として"神誓の儀"というのがある。
3日3晩にわたり祈り、神々にその祈りが通じれば、祈った神によって様々な試練が課される。
その試練を乗り越えたものには神々により願いが叶えられる。
それであれば、誰しもが行おうとするであろうが、実際にこの儀式を執り行なおうとするものがそれほどいないのはやはり儀式の厳しさからである。
神々に祈りが通じるかそもそもわからず、与えられる試練は願いにもよるが非常に難易度が高い。
そして、一旦試練を受けた者は誓いを果たすことを諦めた時点で死ぬ。
神々とて暇ではない。
気軽に何でも請願されても応える訳にはいかないのだ。
そして私、リリアムに与えられた試練は"千刃"。
戦場で有効な武器を千本鍛えることだった---。
刃がついた武器でないと駄目です。
青龍刀はOKだけど、槍はだめですみたいに。
他にも詳細なルールがあります。