水象刀
グリップ(柄)の柄頭とは反対側に大きな凹みがあり、そこに加工後の蒼晶角をはめる。
わずかな隙間もなくカッチリはまる。
蒼晶角にあわせたフィッティングは完璧だった。
角の先が出るように、ガード(鍔)の中心に空いた穴に通し、グリップとガードを固定する。これも無駄な隙間はなく、蒼晶角はガッチリと固定された。
はっきりいって造り方としては余りにも邪道である。
グリップとガードまでなら剣らしいが、
強度が低いのはもちろん、刀身の代わりに30セクトミーテルほどの水晶が出ているだけなのだ。儀式用の装具であるならふさわしいと言えたかもしれない。
息を整えたリリアムはその不恰好な道具を持つと、左手小指をポメル(柄頭)に添えると。魔力を流した。
だが何も起こらない。
しかし、蒼晶角を湧き出ている水に漬けると触れた水が形を変えていき
片刃の刀身を模す。
水象刀 ランクB
結晶部分に触れた一塊の水塊を剣の形に集約させる。
水量が少なすぎれば刀身を模すことができず、多過ぎれば形を留めることが難かしくなるが、水で出来た刃は当然折れることも曲がることもない。切れ味は、刃の部分を圧縮した水で再現することで生み出している。刀身は調整することが可能だが、戦闘中に自在に形を変えるまでには至らない。ポメルから魔力を流すことにより刀身を作るが、扱う水量により消費する魔力の量は変化する。用途を制限することで魔力の使用効率を上げている。
「ふぅ」
ひとまず想定通りに出来ているのを確認して息をつく。
刀身の重心の微調整は必要だが、とりあえず切れ味のテストなどを行う。
「はぁぁあっ」
準備しておいた藁人形に袈裟斬りに斬りかかれば、ゾブゾブゾブと削るような音と共に抵抗少なく抜けていった。
刀身を形作れるギリギリの水量では軽過ぎて違和感があるが、十分な切断力はあるようだ。
次にギリギリまで水量を増やして同様に藁人形に切りかかると、当たった瞬間に爆発音に近い音がしてそのまま粉砕するように通り抜ける。
能力のピーキーさに唖然とする。
水象刀を武器として使うなら剣というカテゴリーに当てはめきらずに習熟が必要かもしれない。
また取り込む水量によって剣の大きさなどは変わらないが、重量が雲泥の差があり、構え方などに影響する、と。気づいたことをちょこちょこメモしていってひと段落したところで周囲が真っ暗なことに気づく。
集中していたとは言え、まだそこまでの時間ではないはずだ。
「――かれこれ、始めて4年で200振りとは、大したものだ――」
威圧感のある低音が洞窟に響いた。