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千の刃のリリアンローゼ  作者: 夢辺 流離
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狙われし者

「2人、か。」

 ギルドを出てからリリアムは何者かに尾行されているのに気づいていた。

狙いは依頼の報酬か、次元刃か、はたまたダークエルフ自身か。

どれもあり得るだけに絞り込むことは出来なかったが、いずれにせよ何ひとつ譲ってやるつもりはない


尾行者の技量が大したことがない、というのが唯一の救いだったろうか。

もっともわざと気づかせる尾行者の後ろに、玄人をつけさせている可能性も否定できなかったが。

 晶角狼は決して弱い相手ではなかったし、晶角は死んでから剥ぎ取ると力が弱くなるため倒すより先


に角を切り落とす必要があったため、ただ倒すより難易度ははるかに高かった。

疲労具合も並ではない。正直イラついていて、尾行者を殺ってしまったほうが楽なんじゃないか?と考


えてしまうが、下手につけ込まれる理由を作るのは得策ではなかった。


 常時依頼の、


 近辺の薬草集め ランクF GP:10 報奨金:300G

 ポーション作りに欠かせない薬草の収集。

10束で依頼達成だが80束までは持ち込むことで一度に連続達成を許可する。似たような毒草がある


ので気をつけること。


 期限がないため、一枚依頼を受理して確保してある。

町の門番に見せることで、下手に詮索されること無く町を出ることが出来る。ギルドカードを身分証と


して提示しても難癖をつけられることが度々あったので今では受理済みの依頼表を見せることにしてい


るのだ。


 ともかく町を出て街道をゆっくり歩き、人気が少なくなったところで、今にも尾行者が「いくぞ」と


いう空気を醸し出したところで道に対して直角に折れて森の中へと走りこむ。


 精霊たちの声を聞けなくなったとは言え、今でもリリアムにとって森は自分達のテリトリーである。

どれだけ深い森であっても方向を見失うことはないし、潜伏からの奇襲、枝から枝への移動など、圧倒


的にアドバンテージがある。

木々が自分を避けるよう錯覚するほどに不自由なく走るリリアムに尾行者たちは早々に姿を見失う。

途中で拾っていた石を尾行者の近くに投げやれば、男2人は意識を地面へと向けた。

その一瞬をついてリリアムは幹を、または枝を蹴って樹上へと駆け上がり様子を見る。


「くそっ。忌々しいダークエルフめ。」

「晶角狼を倒すなどDランクに出来るわけがない。どうせ他の冒険者が倒したのを汚ない手を使って掠


め取ったに違いないのだ。卑怯者に報酬などやる必要性はない。我らが正しく使ってやろうと言うもの。」


 男達の言い分は勝手なものだったが、リリアムは安堵した。

ギルドを敵に廻し、監視者をつけられるより数倍マシだったからだ。


 彼らが自分の足元から距離をとったのを確認して、再び町へと向かう。但し、門ではなく、スラムがあるほうの町壁のほうだ。

門から入れば先ほどの尾行者の仲間が可能性があるし、それ以外でも私を狙っている者達が張っているだろう。


 事前に調べておいた町の無法者や孤児らが集い住んでいるあたりに向かう。細工をしてわずかに手足をかけられるように穿ってある。

---といってもいわれなければ気づかないほどだが---に手足をかけて中に入り込むと金さえ払えば誰であろうと泊まれるわけアリの宿にいく。見かけはボロく、いや、中身もボロいのに不相応な金額を要求されるのはそれなりの需要があるからで、リリアムはこういう宿でしか泊まれない。

いっそ野宿でも構わないのだが、昨日の今日で疲労が溜まっているのだ。

「流石に今日は無理だな。次にいつ手に入れられるかわからない素材だけに慎重を期して今日は休もう」

 蒼い晶角を手に持ちながら呟く。

木板が腐っていそうなベッドが一つあるだけの部屋の隅で剣を抱き、壁に背を預けるようにしてまぶたを下ろす。


ここ数年変わらぬリリアムの休み方だった。

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