三人称一元視点の細かなテクニック
これも私の経験上の話です。
・1文改行をしないこと。
自由間接話法が1人称の表現に近いこと、前後の文章で誰の言葉であるか、誰の想いかがわかることが関連してきます。改行で前後の文章を分断すると、三人称の文章のなかに、1人称の表現が目立ち、浮いて見えるからです。続けて読めば全体で誰が言ったか分かるけれど、ぶつ切りで個別にみると意味が伝わらなくなります。
・直接的、自由間接話法は段落の最後に持ってくるとより効果的。
直接的、自由間接話法とは前の『自由間接話法についての思考』で話した例の”--直子最高!”という独白のことを便宜的にさします。
例
重しとして置かれた口紅の下に一枚のメモが置いてあった。それを手に取ると「この鏡台は豊にあげます」とひとこと綴られていた。なぜ僕に?
小説を読むときに、読者は読むにしたがって以前の情報を忘れていきます。ですので、イメージとして残したい情報は最後に持ってきた方がよいです。
それと、一人称と三人称との情報の出し方の違いです。一人称は、地の文自体が主人公の言葉であるため、まず、思ったこと、感じたことを書いて理由は後に来ます。
三人称一元視点では、神である語り手が状況を説明してから、主人公がこう思った、と書きます。
別の言い方では、客観的描写の後に心理描写を書いた方が読者は分かりやすいです。
・客観的描写であるか、主人公の心理描写であるか見分ける。1文にまぜこぜにしない。
例文
彼女からラブレターをもらったことは嬉しかった。
彼女からラブレターをもらった。嬉しかった。
どっちがより嬉しく感じるでしょうか?
下の嬉しかったが、独白(直接的、自由間接話法)に変わっていることがなんとなくわかりますか?
無論、小説のすべての心理描写を、直接的、自由間接話法にすると、単調になりかえって白々しくなるので、ここぞという場面ではこのような表現は有効だと思います。




