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自由間接話法を用いない三人称一元視点

 その前に語り手の立ち位置について考えてみたいと思います。小説では地の文のことですが、本を朗読した場合、声に出して読んでいる人が語り手、聞いている人が聞き手(読者)になります。ここでの語り手には物語を演出するという権限が与えられます。

 落語を例にとると、女性のセリフなら女性らしい声、所作、男性なら男性らしい声、所作で演じます。時には語り手が主観で登場人物を批評することもあるでしょう。同じ落語でも落語家が違えば面白さも変わってきます。

 逆に語り手の権限の及ばないこともあります。語彙です。例えばトイレですが、かわやといいます。多くが古典落語で現代から見ると昔話なので、雰囲気を壊さない言葉が用いられます。

 つまるところ、語り手の役割は読者に分かりやすく説明すること、読者を物語の世界に引き込むこと、さらに、読者の興味や感情などの思考を作者の意図するように操作すること、になると思います。小説を書く上でのテクニックとして語られるものの多くは、語り手としての権限の範疇になるはずです。


 自由間接話法を用いない三人称一元視点に話を戻しますが、例に挙げると、小野不由美『十二国記』


 彼女は駆けてくる影をただ見開いて見つめていた。

――あれが来たら殺される。

 そう理解できても、身動きできない。おそらくは八つ裂きにされ食われるだろうと思ったが全く身体が動かなかった。たとえ身体が動いたとしても、逃げる場所もなく戦う方法もない。


>>――あれが来たら殺される。

彼女はあれが来たら殺されると思った。と同一ですね。主語述語を省くことでより主人公の言葉(声)に寄せてきています。セリフと一緒で落語の独り言と同じです。名前がないので仮に独白式とでもつけておきましょうか。独白式も自由間接話法も主語述語を省きますが、自由間接話法は基本的には語り手の言葉(声)です。

 もう一つ主人公の心理描写があります。

>>おそらくは八つ裂きにされ食われるだろうと思ったが

述語を付けることで語り手の言葉に寄せてきています。――以降は主人公の声、地の文は語り手の声と明確に分けられています。曖昧な自由間接話法と違うところです。


 独白式と自由間接話法との印象の違いですが、独白式の方が固い印象を受けます。そういう作品が多い気がします。これは悪い意味ではなく、小説の世界観に合わせやすいということです。時代劇とか例にとってみるとそうですね。自由間接話法より神視点に近い印象です。


 では、どんな心情を独白にすればいいのか、となりますが、これは私も試行中で、ただ、インパクトを求めるのであれば短い文章です。

 心情には2種類あると思います。感覚的なことと、どうしようかという思考。感覚的なこととは、痛いとか、熱いとか、眩しいとかの五感や嬉しい悲しいなどの喜怒哀楽。思考は明日は何しようとか、彼女はどう思っているのかという迷いや選択です。

 感覚的なことは語り手の言葉で代替えしやすいです。腹減った。→空腹だった。痛い。→激痛が走った。など、それに比べ、思考はどうしても直接的表現でなくては表せません。

 これだ、という枠組みはありませんが、バランスを考えると思考で更に文章を短くすることが独白の表現ではないのかなと考えています。無論ケースバイケースでここは作者の感性にゆだねられます。


 三人称一元視点にまだ慣れていない方は、三人称の鍛錬も含めこの書き方がいいのではないかと思います。


 少し話はそれますが、十二国記『華胥の幽夢』華胥で明らかな視点のブレが発生しています。最初読んだときにものすごい違和感を感じました。ここはどこという感じです。自由間接話法も使われています。自由間接話法がなければまた違った感覚だったかもしれません。プロでもするんだなあという感じです。引用すると長くなるので、機会があったら注意して読んでみてください。

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