【第1話】気付いたら異世界、目の前には甲冑。
最近、異世界転生チート物とか異世界からヒーローやヒロインみたいな何かが来る系小説には食傷気味…どころか既に食傷だろう…?
僕もそうだよ、結構『なろう系小説』とかラノベのその手のジャンルを読んだからね。
勇者と魔王が(バ)カップルになるのや善悪逆転してるのも然り…
そんな僕が、ひょんな事からその当事者になりました―
いきなりですが、とりあえずひとこと。
どうゆうことなの…?
僕は今、警備員(※自宅ではなくデパートである)の仕事の真っ最中だったはず…
いや、確かに警備員ってのは『不審者』を相手にするもんなんだけどさ…
目 の 前 に 居 る 甲 冑 の 青 年 は 何 で す か ?
あぁうんコスプレかな…?
でも剣がリアルなんですがそれは…?
と言うかその隣にはショットガンを構えた青年も居るんだけど!?;
でも慌てているのは僕だけって訳でも無いみたい。
何せ相手も僕を警戒してるんだし。
とりあえず訪ねてみよう、うん。
「あの、君、頭大丈夫?」
瞬間、空気が凍った。
と言うかしまった…ついドストレートに聞いてしまった…
案の定憤慨した様子になる青年。
「いきなり出てきて何だよそれは!
変な格好をしてるお前こそ頭おかしいんじゃないのか!?」
「変?失敬な!!これは僕達警備員の制服だ!!
お前こそなんだよ!!デパートで甲冑とかバカじゃないの!?」
「はぁっ!?ここがデパートだって!?もう埒が明かないな、とりあえず消えろっ!」
「!?」
そう言った甲冑の青年が剣を振り上げた瞬間、その姿が炎の玉に弾かれて消える…
ついでにショットガンの青年も。
訳が分からず周りを見回すと、和服を着て刀を構える女性(龍人みたいな翼と尻尾付き!?;)と、その女性に守られるドレス姿の女の子を見付けた。
って ま た コ ス プ レ イ ヤ ー !?;
そう思って警戒すると、和服の女性が鋭く叫ぶ。
「そこの君!その二人は危険だ!!悪いが今は説明している暇が無い!そのまま私達についてきてくれないか!?」
「えっ?えっ??」
いきなりの展開に僕はついていけないんだけど!?;
でも助けてくれたっぽいし、さっきの人よりは話が通じそう…
そう思った僕は彼女達の後を追った―
それから直ぐに真っ白な部屋に着いた僕は、ようやく冷静になってきて初めて周りを見渡した…
そして、ここはさっきまで居たデパートでは無く、何処かのお城だと気付いた…
どうやら大分混乱していたらしい…;
改めて僕を助けてくれたっぽい女性と向かい合う。
「あの…ひとまず助けてくれたっぽいのでありがとうございます…?」
僕が疑問系でお礼を言うと、女性が頷いて、それから頭を下げた…!?;
「いや…いきなり巻き込んでしまってすまない…。」
「えっ?;あ…はい…?;」
「…混乱しているのは分かるが…私は回りくどいのが嫌いだからハッキリ言っておこう。
君は一度死んでしまったんだ…。」
「…あ…。」
ここで僕は思い出した…
そうだ…デパートに爆弾の様な物を抱えた男が来て…そいつを取り押さえようとしたらそのまま自爆に巻き込まれたんだ…
まさか日本で自爆テロが起こるなんて思わなかったんだよね…
最近じゃ殺人が日常茶飯事だったってのにさ…。
そんな僕の様子を見て、彼女は申し訳なさそうな表情になる…別に彼女に悪い所は1つもありはしないのに…
うん…とりあえず大分冷静になってきたから一先ず状況整理から始めよう。
先ず、僕の名前は『黒崎 悠希』、今年で23歳になるとある大型デパートの警備員だ。
身長は165㎝、体重は48㎏。所謂中肉中背。
黒髪のショートカットで二重の吊り気味の目、日本人らしい低い鼻、薄い唇な所謂普通顔、特徴は吊り目気味の二重で中性的な顔っての位かな。
服装は一般的な警備員の服だ。
そんな僕はさっきも言ったように不審者の自爆テロに巻き込まれて死んだ…はずだったんだけど気付けば見知らぬ城にて甲冑の青年と対峙していた訳で…
武器…と言えば警棒位かな―
…ってあれ…?;
警棒に意識を向けたら頭に何か…;
【警棒(異世界産)】【黒崎悠希専用装備】
分類…鈍器
ランク…S
スキル1『警戒』…不意討ち無効、後方からのダメージを50%カット
スキル2『警備』…戦闘中のみ敵対勢力に対する攻撃力強化(大)、被守護者が近くに居る場合は更に守備力強化(大)追加
スキル3『正に相棒』…この武器を『黒崎悠希』が装備するとこの武器と『黒崎悠希』の能力が倍加する
ど ゆ こ と !?;
と言うか何これ!?;
何で只の警棒がこんな凄いチート装備になってるの!?;
僕が再び狼狽えたのを感じたのか、彼女は心配そうな表情をする…
「その…大丈夫か…?」
「あ…うん…;」
あ…そうだ、彼女なら何か知ってるかも知れないな…。
そう思って訪ねようとして気付いた、まだ名前を聞いてなかった事に。
「あの…僕は『黒崎 悠希』っていいます、貴女のお名前は…?」
「ん?クロサキ…あぁ、異世界人…特にニホン人はファミリーネームが先に来るのだったな。
紹介が遅れてすまないユウキ殿、私の名は『サクラ』だ、我々『魔族』は基本的にファミリーネームを持たないので君、ユウキ殿も名前で呼ばせてもらうがそう理解してくれ。
そして私は此方に居られる『ティエサ』様の近衛騎士を勤めている、見ての通りの龍人だ。」
そう言ってにっこり笑う女騎士さん(和服美人)。
因みに見た目は、桜色の髪をポニーテールに纏め、顔立ちは『凛々しい』、と表したらしっくりくる切れ長の蒼い瞳にスッと通る高い鼻、ピンクの唇は彼女に化粧っ気が無くとも美人である事を現している。
桜色の翼や尻尾が何だか逆にコケティッシュに見えるのは気のせいかな…?
服装は桜の葉の装飾が施された桜色の和服だ(どうやって着ているのだろう?)、髪も含めて全身ピンクでも雰囲気のお陰か落ち着いて見える。
因みに『彼女』の言動が漢らしいのに何故女性だと断定したかと言えば、声は若干低いが女性のもので、何よりそこに山があったからだ。
―と、おずおずとした様子でサクラさん
の陰から『ティエサ様』が顔を出した―
「あっ…あの…、わたしがティエサです…、よろしく…ね…?」
その瞬間、心を撃ち抜かれた…気がした。
だってさ!だってさ!!
そのティエサって娘、クリーム色の長いツインテールに真ん丸なライムグリーンの瞳、小さな鼻や口のお人形さんみたいなあどけない少女なんだもん!
それだけならまだしも僕の大好きな種族なんだもん!!
やっぱりエルフとかダークエルフって美男美女だよね!!
何この純情可憐なダークエルフって言う俺得な素晴らしい組合わせ!!
恥ずかしそうに頬を染めて若干涙目なのもgood!!
僕はその感情を何とか抑え込んで警備員スマイルで『ティエサ様』に右手を差し出した。
「是非僕に貴女の警備をさせて下さいッ!!」
「えっ!?///」
「おや?」
「…あ;」
…しまったぁぁあっ!!;
全 然 感 情 を 抑 え 込 め て 無 い じ ゃ ー ん !!;
ほら!;二人とも困惑―してない…?;
姫様こそフリーズしてるけれど、サクラさんは嬉しそうな表情をしている…?
あ…姫様がおずおずとした様子で僕の右手を両手で包み込む様に握った…
「はい…是非…よろしくお願いします…///」
そう言ってはにかむ姫様、その隣ではサクラさんが実に嬉しそうに微笑んでいる。
「そちらから頼んでくれて良かった!君は元々、その為に召喚んだのだからな!!」
「…はい?;」
ど ゆ こ と ?;
そんな目でサクラさんを見ると、嬉しそうな表情のまま詳しい事情を教えてくれた。
要点を纏めると…
ここは剣と魔法が主流で中世なファンタジー世界『エルラント』(ベターと言えばベター…でも銃みたいな現代兵器っぽいのとか在るし…結構カオスだなぁ…;)。
その中にある国の1つで、ここは魔界と呼ばれる国であり、この世界に満ちる魔力素を調整する場所であるらしい。
そんな魔界のリーダー、魔王様は人間の国の1つであり、魔界の資源を狙う『フェンネル帝国』の勇者に殺されてしまっており、魔界そのものも壊滅した…
『ティエサ姫』はそんな魔王様の一人娘で今は亡国の姫らしい。
そんな姫様に遺された、3人居る魔姫様直属の近衛騎士の内、今はサクラさんしか居ないらしい。(他の二人とは別行動なだけで死んではないらしい。)
流石にサクラさん一人で守るのは限界があるし、魔王様がもしもの時の為に遺してくれた魔法陣で異世界から『最近死んで、尚且我々の味方になってくれそうな魂』を召喚する事にしたらしい。
そしたらダークエルフ萌えで警備員をしていた僕に当たったのでラッキー♪って事らしい。
そしてここが重要だね。
今 の 僕 も 魔 族 に な っ て い る らしい!!
どうゆうことなの!?;
そう聞くとサクラさんは笑顔で「『自分のステータス』と念じてみてくれ」って言ってきたので言われた通りにしてみた、すると…?
名前【ユウキ】【(男)】
年齢【23】
種族【妖狐】
┗妖術使用可能、火炎属性強化、光属性強化
クラス【異世界人】
┗体力強化(小)、魔力強化(小)、言語自動習得済み
あーなるほど…。
こうやってゲームみたいに自分や意識を向けた物のデータを見れるんだ…。
ん…確かに僕の頭に耳がある…もしかしなくても尻尾も生えてるよねこれ、何故かズボンを透過してるみたいだけど。
と言うか『妖狐』は魔族に含むの…?;まぁ…妖怪ではあるけどさ…;
ついでと言ったらなんだけど、サクラさん達のステータスも見てみる。
名前【サクラ】【女】
年齢【12000(寿命限界突破、本来の死後2000年経過)、見た目は人間で言う所の20前後で固定】
種族【龍人(桜火竜)だったモノ】
┗火炎ブレス使用可能、火炎属性強化、SAN値直葬耐性
クラス【魔姫近衛騎士隊副長】
┗戦闘中、特定の味方が近くに居ると守備力強化(中)、被守護対象が近くに居ると更に全ステータス上昇(特大)が上乗せ
名前【ティエサ】【女】
年齢【120】
種族【ダークエルフ】
┗闇属性強化
クラス【可憐な魔姫様】
┗全魔術使用可能、魔術超強化、敵性魔術無効、守護者の近くに居ると守護者に全ステータス上昇(大)を与える。
特定敵対勢力の行動を阻害。
うん…
こ の 二 人 も 結 構 チ ー ト だ っ た !!;
と言うか二人ともクラスのルビ酷くない!?;
ってかサクラさんの【龍人(桜火竜)だったモノ】って種族としてどうなの!?;
それだとサクラさんは(龍)人として一体どうなってるの!?;
それと『SAN値直葬耐性』ってなに!?;
ネットスラングが普通に存在してるとかますますカオスだよ!!;
後これで気付いたけどさ…
僕 自 身 は 姫 様 よ り 弱 い じ ゃ な い か …!;
僕が盛大に狼狽えていると、気付いたサクラさんが安心させる様に微笑みながら僕の頭に手を置いた…?
「君は今、私のステータスを見たのだろう?」
その優しい声に、僕はつい素直に言ってしまう…
「あ…はい…;ステータスがおかしいな…と思いました…;」
言ってから『しまった』って思ったけれど、サクラさんは笑顔のままとんでもない事をさらりと言った―
「まぁそうだろうな、私は2000年前に龍人を棄ててるから。」
「はい…?;」
僕はすっとんきょうな声を上げたけど、サクラさんはそれをスルーし、話を止めてしまった…
なんだろう…?ちょっと嬉しそう…??
でも、会って数分の僕には理由がさっぱり分からないので追求しようも無いのだけれど…。
「とりあえず今は落ち着いてほしい…まだ話は終わりじゃ―
そのタイミングで盛大に破壊される扉、流石は現職の騎士様、サクラさんは直ぐに姫様を飛んでくる扉の残骸から庇った!
僕も顔の前で腕を交差させてやり過ごし、扉があった場所を睨み付ける。
「―話している暇が無くなったな、だから手短に言おう。」
そう言いながら刀を抜いたサクラさんは構え―
「こいつらがその帝国の勇者共だッ!!」
と言いながら飛び出した!!
直ぐに金属同士がぶつかる音が響く、どうやらサクラさんはいきなり僕に魔姫様を任せるつもりらしい…
まぁ…守りながらよりは戦いやすいだろうし…。
でも僕はまだゲームで言う所の所謂Lv.1だと思うんですけど!?;
そう思いながら姫様に助けを求めると、ふにゃりとした笑顔で『大丈夫、です…。』と言って僕にしがみついた…。
…あぁ、ティエサ姫マジ天使♪
じゃなーい!!;
「姫様!?;
僕には姫様を守る力なんて無いんだけど!?;」
そう…いくら異世界でステータスとかのファンタジー要素が在っても、僕はそこら辺に居る様なしがない警備員だ、プロの警備員や警察、SPとかならまだしも、僕にはそんな力なんて…
でも、姫様は安心しきった表情をしている…
何で会ってすぐの僕をこんなに信頼してくれるのだろう…?
そう思っていたから…
いや…そうでなくても僕は戦いの素人だ。
ショットガンの銃口がこちらを狙っているのに気付―
「っ!やぁぁっ!」
「なっ!?グァァァッ!」
―いて警棒で弾を打ち返していた!?;
警棒ぉぉぉっ!!ありがとぉぉお!!(泣)
何か咄嗟に後ろが危ないと思って警棒を振りかぶったんだよぉぉ~!!
それを見た姫様は『ねっ?大丈夫でしょう?』とでも言いたげにニコニコしていた…;
武器スキル…凄いなぁ…;
ついでにショットガンが大破したし…ショットガンの青年…もしかして死んじゃったかな…?
…目の前で人が死ぬのは例え敵でも気分が悪いけどさ…。
「でも…ここからはそうも言ってられない…か…。」
覚悟を決めないと死ぬのは僕だ。
違う…それだけならまだ良い、僕は既に1度死んだ身だから…。
でも、『姫様』は?
僕が死んだら…恐らく、サクラさんの士気が下がる…。
下がらなくても一瞬の隙が出来てしまうだろう…。
それでサクラさんが死ねば…それは姫様の死を意味する…!
かなり無理矢理だけど(実際、爆発音がした時一瞬だけ姫様の安否を確認して以来、サクラさんは全く此方を見ていないし)、この姫様を死なせたくないのは本心だしね!!
…ただ…何故姫様が最初から信頼度MAXなのかは謎だけど…。
うん、警棒のスキルとか姫様が張った魔力の盾で流れ弾とか勝手に弾いてるし、相手は今サクラさんが相手をしている一人だけだから思いきって訊いてみよう。
「…ねぇ姫様。」
「…何でしょうかユウキさん。」(ニコニコ)
「(うっ…可愛い…///)じゃなくてっ!なんで会ったばかりの僕をそんなに信用しているの??」
僕のこの質問に、姫様はかなり簡潔に答えた…
「勿論、わたしを『魔姫』や『ダークエルフ』だからと言って嫌わない所か、『ダークエルフが大好き』だから、です…♪」
「あぁ成程。」
そりゃあ、大半の人は『魔王やダークエルフ=悪』の方程式が成り立っているから、魔姫様を見た瞬間に嫌悪感を抱くだろうね…
そうでなくてもティエサ姫の場合はダ ー ク エ ル フ な の に 清 楚 な ロ リ っ 娘 だ し 。
普通のイメージならダークエルフ=『妖艶なお姉様』とか、『嫌味な男』とかだろうから違和感…と言うかダークエルフが嫌いでなくとも微妙な反応だっただろうね…。
だから大体の想像はつく。
きっと今まで召喚した人達の大半は、ダークエルフの姫様を見た瞬間に嫌悪感を顕にしたのだろう。
仮に嫌悪感を抱かなくても『今日から君も魔族だ!!』と言われて誰が喜ぶと言うのか。
異世界転生と言えば『勇者召喚』なのだろうし、それが『魔姫の近衛騎士候補(しかも魔族)=人類の敵』じゃあねぇ…。
ま ぁ 僕 は 願 っ た り 叶 っ た り だ け ど ね 。
そもそも、話し的には善悪逆転・魔界を再興する御話のタイプっぽいし。
…いや…流石に善か悪かだけの判断は狭量だし、これはもう現実なんだけどさ。
それに、魔力素を調整しているって事は他の世界で言う所の『世界樹』と同等って事でしょ?
・・・。
そ ん な 魔 界 が 滅 ん だ っ て 事 は む し ろ 危 な く な い !?;
そんな僕の心配に気付いたのか、姫様は苦笑いになる。
「世界が滅ばないか心配ですか…?
それなら一応は大丈夫ですよ、約1000年くらいは…。」
「1000年…ね…。」
このままにしていたら世界が滅ぶまで約1000年…
それは果たして長いのか短いのか…
そもそもどうやって魔界を再興するのだろうか…?
まぁ本人に聞いた方が早いよね。
「ねぇ姫様、魔界って姫様さえ居ればどうにでもなったりするのかな?」
「ん~…そうですね、わたしは魔王なのでほぼ無限の寿命がありますし…
わぁい…魔王様長寿すぎぃぃぃ~…
但し先代は殺されたから寿命以外でも死ぬみたいだけど。
「わたしの近衛騎士は強いですから。」
「うん、魔王様が殺された時点で寿命が長いとか近衛騎士が強いとか関係無いよね!?;」
「えっ?」
「えっ?」
何今の姫様の反応…;
もしかしなくても何か間違えた…?;
案の定、首を傾げた姫様はすぐに納得がいったのか、両手をぱちんと合わせた。
「あ、それは違いますよ?
お父様の命令で近衛騎士達はバラバラに行動していましたから。
…ヴィーさえ居れば…お父様も助かったかも…知れませんね。」
「ヴィー…?3人居る近衛騎士の内の1人だよね??」
「はい、近衛騎士隊の黒一点(?)にして隊長の『ヴィクトル』さんです。
彼はとっても強いんですよ♪」
うん、とりあえず突っ込みどころは色々あるけど話が進まないからスルーしとこう。
…と、サクラさんが戻ってきたね。
「ユウキ殿、私達の事は理解してもらえたかな?」
「あ、はい。
…と言うか勇者は…?;」
「む?勇者なら破壊したが??
今のは量産型の劣化勇者だったしな。」
「さいですか…;
って!量産型の勇者ってなに!?;」
「えっ?」
「えっ?」
本日2度目の認識の齟齬…;
サクラさんはすぐに理解したらしく、『量産型勇者』について教えてくれた。
「量産型勇者と言うのはそのまんまの意味だ。
帝国は召喚した勇者の能力をコピーした傀儡を作って、それを兵器の様に使用している。
その弊害なのか傀儡勇者にも当たり外れが多いんだ。
ほら、そこの傀儡勇者を魔眼で見てみろ。」
「魔眼?」
僕が首を傾げると、サクラさんはバカにするでも無く、丁寧に説明してくれる。
「…君はさっき私達のステータスを見ただろう?
他人のステータスを見れるのは異世界から召喚された『勇者』特有の能力なんだ。
無論、我等魔族の勇者にも種族に関係無く『魔眼』が備わっている。
帝国は我等に対抗して『アナライズ・アイ』と言っているがな。
まぁとにかくそれで傀儡を見てみてくれ。」
「うん。」
【ユーゴ・レプリカ】
分類…傀儡勇者(剣士型)
ランク…B
スキル1 『勇者の光/劣化』…自分とパーティーメンバーを強化(小)
【セイヤ・レプリカ】
分類…傀儡勇者(狙撃手型)
ランク…B
スキル1 『ガンズ・オブ・パンツァー/劣化』…狙撃手の命中率を強化(小)+静止中狙撃攻撃力上昇(小)
「…なんだ…人形だったんだ…;」
「あぁ、人形だな。
だが…それが数え切れない程襲い掛かってきたんだ…
「それに…お父様を殺したのは…こんなオモチャではありませんしね…
「…つまり…Sランクの傀儡…?」
「ああ、それに本物も加わっての一方的虐殺だった…。」
「なっ…!?」
「わたしはサクラと一緒に逃げるだけで精一杯でした…。
…ヴィーも居れば数の利は無いも同然だったのですが…。」
「・・・。」
うん、もう突っ込んで良いよね!?;
「ちょっと待って!?;
そのヴィクトルって人(?)どんだけ強いの!?;」
「えっ?お父様並みですけど??」
「ああ、魔王様と肩を並べる強さだな。
あの二人が揃えば敵無しだった。
そのくせ面白いし、アイツが来るまで魔界最強の騎士だった私に勝っても威張らないし…それだけでは無いが…私はアイツを好きになったんだ…///」
「因みにヴィーはサクラの旦那様ですよ!」
「…うわぁ…。
それは何か…会いたいかも…?;」
と言うかサクラさんのはノロケ…?;
それでサクラさんのクラスのルビが『最強の嫁』だった訳ね…;
「…それで、これからどうするの??」
「『王国』へ亡命する。」
「『王国』?」
「…『ウィンドル王国』、我々魔界と親交が深い国だ。
そこのギルドで冒険者として世話になるつもりだ。
ヴィー達ともそこで合流する。」
「へぇ…。」
無知ですみません…;
でもサクラさんは優しく教えてくれるから本当に助かる…。
それにしてもギルドかぁ…!何かワクワクしてきた…!!
「ひとまずウィンドル王国まで行かないと話にならない…。
ここからは野宿もあるが、いけそうか?ユウキ殿。」
「うん!野宿って結構慣れてるから平気だよ!やってやるさ!!」
実際、前世でサバイバルキャンプ(ガチ)をやったことがあるし。
「さぁ!ならば長居は無用だ!!
早くこの城から脱出するぞ!!」
「「お~っ!!」」
こうして、僕の異世界での物語が幕を上げた…。
これからどうなるのやら…。