出発~鎖乃said~
大和の心は本当に純粋だった。彼の彼女のことばかり考えていて、優しい人。
「本当に優しい人。私、あなたには仲間に入って欲しい。」
「……?……嬉しいけど俺は理論の勉強……。」
「あぁ、それなら大丈夫。私にあてがあるから。」
私の唯一の友達……というか幼馴染みは理論科のトップなのだ。眼鏡でがり勉で……とかではなく家にあった大量の理論本を読み漁っただけ。彼女の記憶力が人より飛び抜けて高いからこそ出来ることである。
でも今は忙しいかな?理論書の提出が迫ってるとか言ってたし。
「じゃあ……よろしく。俺は大和。氷の使い手なんだ。」
「私、鎖乃。さっきちょっと心を覗かせてもらったの。ごめんなさい。」
「あぁ、知ってるよ。だって俺のこと初めてなのに優しい人って言ったから。」
にっこり微笑む大和に昔のあの感覚がした。忘れられない大切な……。
「卒業してからが楽しみだな!」
「私頑張ってもっともっと実技の力向上させます!」
あれからしばらくたって、私達は無事卒業した。仲間も増えて賑やかになりつつある。心を読んでも皆いい人ばかりで……初めて人といるのが楽しいと感じた。
「で、鎖乃。どこにあるとか予想はついてるの?」
気の強そうな口調の美少女、妃茉莉が私に話しかける。大和にあてがあると言ったのは彼女のことだった。正直、妃茉莉が仲間に入ってくれるとは思っていなかったが私からのお願いということで引き受けてくれたんだ。言い方がきついときがあるけど、本当は優しい妃茉莉は私の自慢の幼馴染みで友達である。
「わからないからとりあえずブラブラ行こうかなって。」
「それならビルギに行きませんか?あそこは情報の街として有名ですから。」
「そういえば俺、ビルギに行ったことないな……。」
ビルギは私たちの学校がある街から少し離れたところにある街だ。都心の近くにある上に小さい街なので情報の行き来がすごいらしい。
私たち使い手は都心にあまり近づいてはいけないという決まりもある。都心には一般人が多くいるため、使い手たちがよると危険だから。でも……宝魔石を手に入れるために必要な手段なら問わない。いつかは通らなければならないかもしれない道なんだから。
「あ、じゃあ俺、ビルギが今どういう状態か十六夜に確かめてもらう!」
十六夜というのは渉の相棒の霊の名前。黒い鳥で、始め渉の相方になることを躊躇っていたので十六夜と名付けたそうだ。まぁ、霊なので私が触ることは出来ないのだけど可愛い小鳥のような見た目でよく癒されている。
「十六夜よ、出てこい。」
渉が手を前に出すと、手の中……つまり体内から十六夜が現れる。渉は飼っている霊を体内に宿しているのだ。霊の使い手もなめたもんじゃない。
「さぁ、行こう。情報の街ビルギに!」