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子供の夢 〜3人の王女と北の魔女〜

作者: 青空白雲

三人の王女と北の魔女


メグちゃんは六歳になり二人の妹のお姉ちゃんになりました

二つ下の妹はまなちゃんといいます。四つ下の妹はみきちゃんです。

でもメグちゃんはあまり妹が好きではありませんでした

まなちゃんはおねえちゃんである自分の言うことを聞いてくれないし

みきちゃんは生まれてすぐに病気になり それでお父さんもお母さんも

みきちゃんにかかりきりで 一人きりで過ごす時間が多くて、寂しい思いを

したからです。

ある日のこと、みきちゃんが布団で寝てるのを、まなちゃんと二人で見ていました。

未来ちゃんの寝息を聞きながら、二人はつられてうとうとと眠りに入りました





ここはとある国の王家の城

国の名はワリカイ王国という

国王とお妃様と王女二人の4人が仲良く国を治めていました

国は豊かでみんなが幸せに暮らしていました

でもその暮らしは、長い戦いで得たものでした

その昔 国は魔法使いに治められて、国民はいくら働いてもみんな魔女に

取り上げられていつも悲しい思いをしていました。

あるとき、若い王子が勇気を出して魔女と戦い

魔女を北の氷の国に追い払いました

それから、この国は豊かで幸せな国になりました

でも魔女は いつか国を自分のものにしようと

ずっとチャンスをうかがっていました

今年は国中が賑わっています

それもそのはず 3人目の王女が生まれたのです

国中お祝いで毎日が楽しい日々でした

でも・・・メイ姫にとってはあまりうれしいことではありませんでした

お父さんも、お母さんも国の人もみんな生まれたばかりのミイ姫をかわいがります

「ねえお父様・・」そう呼びかけても

「今ミイ姫を抱いてるから」そんな答えしか返って来ません

いつの間にかメイ姫は心の片隅でミイ姫をねたましく思い始めました

子供なら誰でもが思ってしまう、素直な気持ち

思ってはいけないことと感じながらもどうしようもない感情は

涙となってあふれていきました。

その姿を遠く北からのぞいている魔女がいました

「ヒッヒッヒ 人は弱いものじゃ」

北の魔女は人の心の隙間や弱いところを狙っては仕掛けてきます

「もっと もっと 憎むのじゃ ひっひっひっひっひ」

魔女は大きな声で笑うと 謎の呪文を唱え始めました

「王様 王様」お城で大きな声が飛び交いました

「どうした 騒がしい」

「ミイ姫が ミイ姫が・・」

王様が駆けつけると ミイ姫が苦しそうな顔で息をしていました

「どうしたのじゃ これは」

「あなた・・」

そうです 北の魔女が呪いをかけたのです

でもなぜ3女のミイ姫にだけ呪いがかかったのでしょうか

それは・・メイ姫がミイ姫を疎ましく思ったからです

ミイ姫なんて居なくなればいいと 思ったほんの一瞬に

魔女の呪いがミイ姫にかかったのでした

「これはきっと北の魔女の仕業に違いない」

王様は怒りをこめ言いました

「すぐさま兵を集めよ 北の魔女を打ち晴らすのじゃ」

王様はそう言うと 兵を集め北を目指して行きました

何日も 何ヶ月も 何年経っても王様が帰ってくる気配はありません

聞こえてくるのは国の人々の悲しい声だけ

いつの間にか国は荒れてしまい、人々は無気力で働くこともせず

喜びの歌もいつしか悲しみの叫びに変わっていきました。

王様がいなくなってから一人で国を治めて居た王妃も疲れていました

ある日、一人の兵士がぼろぼろになり帰って来ました

「兵士よ 王の様子を教えておくれ」

そう問いかける王妃に兵士は

「兵達はすべて北の魔女の前に倒れてしまいました」

「王は 王はどうなったのじゃ」

「おそらく王様も無事ではいられないかと・・」兵士はそれを最後に息を引き取りました

「このものを手厚く葬ってやるがよい」

王妃はかすかな声でそう命じるのが精一杯でした

「王よ あなたは今どこで何をされているのですか」

王妃も王女達も嘆き悲しみました

悲しみとミイ姫の看病で疲れてしまった王妃はやがて病にかかり

床に伏せることになってしまいました。



国も荒れ お城の周りにも草が生え とても豊かな国があったとは思えない

そんな国になってしまいました。

それでもメイ姫とマイ姫だけがこの国の宝でした

もう何もかもをあきらめかけたある日のこと、一人の老人が城にやって来ました

目はくぼみ ひげは白く 今にも倒れそうなその老人は、

この国の王であると名乗りました。

メイ姫とマイ姫は会ってみることにしました

「おお メイ姫 マイ姫 元気であったか」

その声は老いてはいるものの まさしく王の声でした

「お父様」

メイ姫もマイ姫も泣きながら抱きついていきました

「王妃はどうした?」

王の問いかけに 家臣は小さな声で

「お妃様は ご病気でございます」と答えました

「おお 王妃よ なんと言うことだ」

王様は王妃の手を握りながら 大きな声で泣きました

「あなた・・」王妃が消え入りそうな声で答えました

「ごめんなさい あなたの留守を守れなかった」

「でも・・あなたが無事で良かった」

そう言うと深い眠りに入ってしまいました。

そばにはミイ姫がすやすやと眠って居ます

「ミイ姫」

でも声をかけても目を開けることはありません

「すまない 北の魔女を倒すことができなかった」

王様は後悔の涙をたくさん流しました。

メイ姫はうすうすと気がついて居ました

そして後悔をしていました

「きっと私がミイ姫をいらないって思ったから・・」

メイ姫も同じように苦しんでいました。

王様は戦から帰ってきてから病となり、いつしか王妃と同じように病に伏せり

ある日王女達を呼んでこう言いました

「メイ姫 マイ姫 お前たちにとってわしは悪い父親だったな」

「ミイ姫にかかりきりでお前たちを可愛がってあげられなかった」

「メイ姫」

「はい お父様」メイ姫は王様の手を握りました

「お前が寂しがっているのをわしは知っていたぞ すまなかったな」

「マイ姫」

「はいお父様」

「お前は素直な子でメイ姫と仲良くしてくれた ありがとう」

「二人とも仲良く 暮らすのじゃぞ」

王様はそう言って静かに眠るように息を引き取りました

「お父様」二人は悲しみでいっぱいになりました

それからというもの二人は毎日泣きながら暮らしました

やがて年月が経ち 二人の王女も成人になりました

王妃とミイ姫は相変わらず眠りについたままです

ある日、北の方から一人の旅人がやって来ました

その旅人は国中を旅して回ってる青年でした

「この国の王女のお耳に入れたいことがあります」

青年はそう言うと王女にお目通りを申し出ました

「何を知らせたいというのじゃ」

メイ姫は一度会ってみることにしました

「メイ姫様 王様が残されて言葉をお伝えにまいりました」

青年はそう言うと静かに話し始めました

それは、王が北の魔女との戦いに破れ、生死の境をさまよっていたときの

ことでした

話を聞きながら、王女達は涙を流しました

その話には壮絶な北の魔女との戦いのほかに、王妃や娘達への愛がいっぱい

詰まっていました

「知りませんでした ありがとう」

話を聞いたメイ姫とマイ姫はそう言いました

「王の話はそれだけですか?」

メイ姫は聞きました

「いいえ これだけではありません」

「なにか他にもあるのですか」マイ姫が聞きました

「はい それは・・」

「どうしたのですか?」

口ごもる青年に王女達は問いかけました

「北の魔女のことでございます」

青年はおそるおそる話し始めました

その中には、王様が北の魔女との戦いでつかみかけたもの

そう 北の魔女を倒す方法がありました

「王様はあと少しというところで北の魔女に敗れてしまいました」

「北の魔女を倒す方法は・・」青年が口を開きました

「その方法とは・・・」

「あなたたちの力でございます」

「北の魔女は、人の悲しみで力を得ます・・・」

青年が話す言葉はメイ姫にとっては聞きたくない話でした

それは自分でも後悔している、ほんの少しの普通の感情

ちょっとした寂しさからでた気持ち

「もう良い!!」思わず声を荒げたメイ姫でした

「お聞きください!!」青年が声を大きくして言いました

「王様はすべてを知りそれでも戦ったのです」

「この気持ちを無駄にされるのですか?」

青年は静かに力強い声で言いました

よく見ると その目には涙があふれています

「私には 父は居ません あなた方のように恵まれた生活もありません」

「そんな私を王様はとても優しくしていただいたのです」

青年はじっと下を向き話を続けました

「のう 男というものは父というものは悲しいものじゃのう・・

我が子を皆同じように扱っていても、子供はそう思ってはくれん

いつか心も離れていくのじゃろうのうの・・・

それでもいいのじゃ 男はそれでも大切なものを守るために戦うのじゃ」

話しながら涙に変わってくのがわかりました

本当はメイ姫もマイ姫もわかっていたのです

どんなに愛されているか 大切に思われているか

小さなわがままも大きな心で許してくれるその愛を知って居たのです

メイ姫も マイ姫も大きな声で泣きました。

メイ姫は思いました

私の弱い心が北の魔女の呪いの元になってしまった

私が強くなれば呪いも解けるのではないかと

そして、決断しました

「私、北の魔女を倒す マイ姫手伝ってよね」

「え そんなことできないよ」

マイ姫は悩んでいます

「やらなくちゃ だめなんだよ 私にとってもマイ姫にとっても」

「そうなんだ わかった私も一緒に行く」

二人は力をあわせて北の魔女を倒すことを誓いました。

だけどどうすればいいのかわかりません

北の魔女の居るところへ行く方法も知りません

「どうしよう」

考えて考えて考えて・・・見つけた答えは

もしかしたら私の心の中にあるのかも、そこから居場所がわかるかもしれない

そう考えたのでした。

メイ姫は、ミイ姫の所に行き静かに眠って居るミイ姫を見つめました

「ミイ姫 あなたは何を思ってるの?」

小さな声でそっと聞きました

「私はここにいるよ」かすかな声が聞こえた気がします

「え?誰?」

周りを見回しても誰も居ません

「ここだよ」

その声の先はミイ姫から聞こえてきます

おそるおそるミイ姫の顔をのぞき込みもう一度聞いてみました

「ミイ姫?」

「そうだよ ここだよ」

眠っているミイ姫から頭の中に声が聞こえてきます

声は続けて

「あなたは何も悪いことはしていない 少し心が揺れただけ」

「誰にでもあることだから気にしないで強くなって」

メイ姫はそれを聞いて涙が出ました

そして誓ったのです

「私、強くなるお父様の代わりに北の魔女を倒しこの国をよみがえらせる」

その目はきらきらと輝いていました。



 戦いと絆



次の日、メイ姫とマイ姫は馬に乗り北の魔女を倒す旅に出発することにしました

「お母様 私たちは旅に出ます そしてきっと北の魔女を打ち晴らします」

女王が眠るベッドのそばで、メイ姫とマイ姫は戦いの報告をしました

「これを持って行きなさい」

女王が指さす先には、金色に輝く剣と銀色の弓矢がありました

「あなた達の心が一つになったとき、この剣と矢は力となってくれるでしょう」

女王はそう言うとまた眠りに入っていきました。

「わかった きっと北の魔女に勝つよ」

メイ姫は剣をマイ姫は弓を持ち、二人は互いを見つめ合いました。

城を出てからメイ姫は自分の心の感じる方へと馬を走らせます

「急がなくちゃ」そう思う心はもう今までのメイ姫ではなく力強さがあふれてい

ました

「マイ姫 早く着いてきて」

「待ってよ~」

北を目指し二人は進みます

それを空の上で静かに見守っているのは、北の魔女の戦に敗れた王様でした

「頑張るのじゃぞ」その声はメイ姫とマイ姫の心に届きました。 そしてもう一人 離れた場所から二人を見つめる姿がありました

そしてもう一人 離れた場所から二人を見つめる姿がありました

北へ進むと、景色は一変しました

草は枯れ、土は黒く住んでる人は皆痩せ細っています

目はくぼみ、二人を見る目も恐ろしい感じです

「メイお姉様」マイ姫は恐怖を感じました

「大丈夫、心をしっかり持って」

メイ姫の言葉には迷いはありませんでした

まっすぐ前を見て、その姿は王のように勇ましいものでありました。

「何があったというのか・・」

メイ姫が村人に問いかけると

「森の奥に魔物が住んでいて、作物も全部取られてしまった」

「魔物が歩いた後にはもう作物はできなくなってしまう」

村人の嘆きの言葉が返ってきました。

「メイ姫 行くよ」

「うん」

二人は森の奥へと入って行きました。

「おのれ 生意気な奴め」

北の魔女は鏡に二人の姿を写していました

「この魔物と戦い食われてしまうが良いわ」

「ひっひっひっひ」その声は暗い闇に響き渡りました

「マイ姫」

ただならぬ気配に、メイ姫は馬を止めてマイ姫に声をかけました

「うん」

マイ姫も気配を感じていました

「来るよ 用意はいい?」

「大丈夫!」

マイ姫も剣を持ち身構えます

次の瞬間

木が大きく揺れ 大きな音を立てて倒れて行きます

その奥から二人の倍以上の大きな人のような魔物が出てきました

目は赤黒く光り、邪心があふれていました

振り上げた手で二人に襲いかかります

「気をつけて」

メイ姫は身をかわすと、飛び上がり剣を振り下ろしました

頭の角を剣が切り落とすと、魔物は小さくなって行きました

「やった お姉さま」

マイ姫が叫びます

小さくなった魔物は地面の上でばたばた暴れています

「この村を元通りにしなさい」

メイ姫は魔物に言いつけました

小さくなった魔物はおとなしく言うことを聞き

村にかけた魔法を解きました

すると、村はみるみるうちに緑になり、村人の顔も明るくなりました

「王女様 ありがとうございます」

村人達に見送られ二人は北を目指して旅に出ました。

次はもっと強い魔物が現れるに違いない

二人はそう思いながら北を目指します。

何日も経ったある日、空が真っ黒な村に着きました

「きっとここも北の魔女の仕業に違いない」

二人はそう感じました

二人が村に近づこうとすると 空から大きな音がしてきました

咄嗟に身を隠す二人

「何?」互いに顔を見合わせました

「来る」マイ姫はそう感じて弓を持ちました

「お姉様ここは私に任せて」

銀の矢を力一杯引きました

カラスが大きくなったような魔物が、目を光らせて向かって来ます

「お母様 力を」

マイ姫はそう唱えて狙いをつけました

大きなくちばしを開けて向かって来たところへ

「今だ」

矢を放つと、銀の矢は魔物の眉間に深々と刺さりました

魔物は断末魔の叫びを残して消えて行きました

そして空には青空が見えて来ました。

二人は母から授かった剣と矢の力を知りました。

そして二人で力を合わせればきっと北の魔女にも勝てると確信しました。

「おのれ おのれ」北の魔女は手下のふがいなさに怒っていました

「もうこうなったら 私の手でひねり潰してやる」

「アブロドアドロブ・・・」呪文を唱えると、翼が生え空に飛び立って行きました。


二人は旅をしながらある思いを持っていました

もしかしたら、この戦いには北の魔女と戦うこと意外に何かの意味が有る

そう感じるのでした。

運命のように導かれて行く中で、魔物を倒すだけでなく人々の喜びの声を

聞く、笑顔に出会う

それは、これから自分たちが背負う国のあり方のように思えるのです

荒れ果てた村の小さな小屋で、夜を迎えた日のこと

その日は珍しく、月も出て辺りを柔らかの月の明かりが照らしていました

どこからともなく聞こえる笛の音に、外の出て見ると

遠くで村の明かりが見えます

「お姉様 行ってみましょう」マイ姫に促され二人は歩き始めました

「ここは・・・」二人は驚きました

そこは、小さな動物達がお祭りをしていたのでした

その中のやぐらで笛を吹いていたフクロウが、二人を見つけました

「よそ者だ」その声に今まで輪になって踊っていた動物達が

一斉にこちらを見ました

気の荒そうなイノシシが「お前達はどこからきた」

そう聞くと、二人を取り囲みました

「私たちはワリカイ国の王女です」

「二人で北の魔女を討つために旅をしているのです」

二人はこれまでのことを話しました。

「北の魔女を討つだって!」

「アハハハ 冗談はよせ」

動物達は大笑いです

「なぜ?笑うの 」

二人は聞きました

「だって、北の魔女にお前達がかなう訳がない」

「おかしくて 笑うしかない」

笑いはおさまりません

そのうち、どこからともなく

「嘘つき、、嘘つき」と合唱が始まりました

「嘘じゃない!!」メイ姫はそう言って剣を抜きました

金色に輝く剣を見た動物達は

「おお!!」

「この剣は・・・」

驚きの声に変わりました

やがて取り巻きの後ろの方から、年老いた猿がやってきて

「この剣を持つ人は勇者の印です、この剣をどこで手に入れられた」

そう聞きました

「この剣は我が王家に代々伝わる剣」

「そして弓」

二人がみんなの前で空に向かい掲げて見せました

「これは失礼をいたしました」

深々と頭を下げて

「こちらへどうぞ」と二人を祭りの真ん中に案内しました

「皆のもの このお二人はこの国の王女である」

「北の魔女を倒すためにご苦労をなさっておる」

「あたたかい飲み物と食べ物をお持ちしろ」

そう叫ぶと回りには見たことも無いような果物や

飲み物が集まりました。

二人は、ひさしぶりに暖かいところで眠ることができました。

翌朝 旅立つ二人に老猿は

「私たちには北の魔女に勝てる力は有りません」

「だが、お二人を支えることはできます」

「これからこの者をお供に付けますので、お使いください」

そう言われて出てきたのは、精悍な目をした鷹でした

「私は空をどんな鳥よりも早く飛び、遠くを見ることが出来ます」

「どうかお役に立ててください」

二人は鷹を供に、北に向かいまた旅を始めました。

どんどん北に向かい歩いていると、何とも言えない沼に着きました

どこを見ても渡れそうにない沼、でも遠回りをしている時間はありません

「鷹よ、この先を見てきておくれ」

鷹はさっと飛び立ち空に消えて行きました

数分後戻ってきた鷹から、この先に小さな橋があると言うこと

でもそこには魔物が棲んでいると言うことも分かりました。

「行こう」そういって二人は迷わず橋を目指しました

小さな橋は、今にも崩れそうで二人が一緒に渡るのは、無理だと分かりました

「先に行って メイ姫」

マイ姫はそう言って後ろを後ろを守ることにしました

そろりそろりと渡って行くと、沼の底から不気味な泡が湧いてきます

メイ姫は剣を抜き両手で構えました。

沼の底からいきなり黒い魔物が飛び出してきました

「えい」剣で振り払うと翼が切れ、沼に落ちて行きました

そこは底なし沼のようで、二度と浮き上がってきませんでした

渡りきってマイ姫を呼びました

「マイ姫、渡ってきて」

マイ姫はその言葉を聞くと、ゆっくり橋を渡り始めました

何かがいる・・そう感じたとき

沼の草の中から、いきなり魔物が現れました

今までより大きく、弓を引く時間もありません

「マイ姫 危ない」

そう叫んで駆け寄ろうとしたとき、それよりも早く

黒い騎士が現れて、マイ姫を抱えて橋を飛び越えました

後ろから追いつこうとする魔物に、メイ姫の剣が閃光をはなち

魔物は息絶えました。

「ありがとうございます」

「あなたはどなたですか」

その兜の奥を覗いてもただ優しい目が見えるだけでした

そして、何も答えず黒騎士は去って行きました

ただ、どこかでこの人を知っているそんな気持ちがする

それだけを残して行きました。

「さあ、ゆっくり休んでる時間はないわ」

「そうね、行きましょう」

二人の後に、鷹も着いてきました

そしてまた少し離れた所から、黒騎士も二人を見ています。

その頃、北の魔女は二人をどうやってやっつけようか

あれこれ考えていました

「あの魔物もだめだった、あいつも役に立たなかった」

「全くどいつもこいつもダメばかりだ」

魔法の瓶に映る二人の姿を見ながら、ブツブツ呟きながら

歩き回りました。

「そうじゃ・・」何かを思いついたように、またブツブツ言いながら

魔法本を取り出して、何かを作り始めました。



不信感


二人は小さな村にたどり着きました

「ここは、普通みたいだね」

マイ姫が言いました

「うん でも油断は出来ないよ」

メイ姫が答えます

鷹は高い空の上で周りを見ています

「お若いの」

そう声がして二人が振り向くと、白いひげを蓄えたおじいさんが

立っていました

「何か用?」そう聞くと

「お二人はこれからどこへいきなさる?」

「私たちは、北の森を目指しているの」

「おお・・それはそれは・・」

「何か知ってるの?」

「知ってるも何も・・まあ話はここじゃなくて 家でゆっくり」

そう言われて案内されるままに、老人の後を着いて家まで行きました

「暖かい夕飯をどうぞ」そういって差し出されたのは

久しぶりに見る、暖かそうなスープと見るからに美味しそうなお肉でした

「食べて良いのかしら」

隣を見れば、マイ姫はもう食べています。

「あ~お腹いっぱい」二人は満足したら眠くなってきました

「さあ今日はゆっくりとおやすみなさい」

部屋の隅にあるベッドで、眠りにつきました

「さあ・・お前の本当の気持ちを思い出すが良い・・」

不思議な声がして、マイ姫は目が覚めました

隣を見ればメイ姫はすやすやと眠っています

「なに?だれ?」

声のする方へ歩いて行くと、部屋の外に出ました

そこには昼間のおじいさんが立っていて、手招きをしています

「お前の本当の気持ちを言うのじゃ」

「私の本当の気持ち?」

「そうじゃ、お前はいつも姉の陰になっているだろう」

「それは・・・」

マイ姫が口ごもると

「お前は姉の陰で両親に甘えることも無く、育ってきたのだろう」

「・・」

マイ姫は何も言えなくなりました

「父に甘えようとしても、いつも姉が父の膝にいて傍で見ているだけだった」

老人の声は、マイ姫の心に突き刺さります

「やめて!」マイ姫は叫びました

「そうよ、私はいつもお父様に甘えたくてずっと我慢してきた」

「それもかなわぬうちに、父は死んでしまったのじゃろう」

心に突き刺さる言葉は、闇をえぐりやがてマイ姫は思うようになったのです

「そうよ私はお姉様が憎い」

「私の幸せをじゃましたのは、お姉様よ」

思わず口にしていました。

人の心は弱いものです、そこに付け入られたのです

そして、マイ姫はメイ姫の寝ているベッドに近づき、短剣を抜きました

闇の中でろうそくの灯りに光る刃は、憎しみを含んでいました。

大きく振りかざし、今にもメイ姫に振り下ろそうとしたとき

窓の外から鞭がひゅんと音をたて、短剣を奪って行きました

そのあと、黒騎士が入ってきました

手には短剣を持っています

「何をするの」

マイ姫は言いました、でも黒騎士は何も答えず、ただじっと見つめています

その力で、マイ姫はふと我に返りました

「私は何をしていたの?」

自分のしたことが分かりません

「だれ?何をしているの?」

メイ姫が目を覚ましました

「マイ姫その短剣はなに?」

「わからないの・・気がついたらここに」

「そう、明日も早いから早く寝てね」

メイ姫はそういうとまたベッドに潜り込みました

「いったいあれはどうしたんだろう」

マイ姫は訳がわかりません

それに黒騎士がなぜここにいたのかも分かりません

「ヒッヒッヒッヒ それで良いのじゃ 悩むのじゃ」

「今日は邪魔が入ったが、そのうち憎み合うようにしてやる」

北の魔女の笑い声が闇の中に、響きました。

暗い空の下、黒騎士は空を見上げて立っていました

そよそよと草の葉が揺れています

兜の奥の方にわずかに見える目には、涙があふれているように見えます

じっと空を見つめ、遠くに思いを馳せるかのように

ただただじっと立っています。

夜はゆっくりとふけていきました。




何日か進み やっと北の魔女の住む城の見えるとこまでたどり着きました

見るからにおどろおどろしい城の周りには、誰も寄せ付けない湖がありました

「さて、どこから行けば良いものか・・」

困った二人は、鷹に探索を言いつけました

「鷹よ、様子を見てきておくれ」

そう言いうと鷹は空高く舞い上がり、城に向かって飛んで行きました

二人は、鷹の後をついて歩きます

しばらく進むと、木が覆ってしまった道がありました

トンネルのように二人が進む道を覆っています

二人は顔を見合わせて、どちらともなくうなずき、進み始めました

「マイ姫、いる?」

メイ姫の声がこだまします

「マイ姫?」

何にも返事がありません

後ろを見ても、だれもいません

「はぐれてしまったのか」

不安になりながらも止まることは出来ません

同じ頃

「メイ姫、メイ姫 どこにいるの?」

マイ姫が読んでいます、でも同じように返事はありません

泣き出しそうな不安に駆られて、周りを見ます

あたりには深い霧が出てきて、回りがよく見えません

すると、向こうの方で霧に映る影が見えました

「メイ姫」

確かにメイ姫のように見えました

でも影はすっと消えてしまいました。

不安な気持ちはどんどん大きくなりしまいに、言っては行けない言葉が

「だからこんな所に来たくなかった・・」

そう呟いてしまいました。

すると、霧がすっと明るくなり、そこには自分と同じ姿が映っています

「だれ?」

「私はあなたの心、あなたの本当の心を映し出しているのよ」

影はゆれながら

「さあ、あなたの本当の心を私に打ちあけなさい」

手招きするように、マイ姫の心に語りかけます

「私は・・私は・・・」

マイ姫は苦しみました

「さあ・・」

影は促すようにマイ姫の前や後ろに回り話しかけます

「お姉様ばかり、お父様にかわいがられて・・」

「そう? かわいそうなマイ姫」

「私だって、甘えたいのに、いつもお姉様に先をこされて

 やっと甘えられると思ったときには、ミイ姫が病気になって・・」

「お父様はあなたを嫌いだったの?」

「お父様が愛していたのは、メイ姫なのよ」

「あなたはメイ姫が憎いの?」

「そうよ、私はメイ姫が嫌いよ!」

そう叫んだとき、目の前に現れたのはメイ姫でした

「さあ、憎いメイ姫を倒すのです」

影はそう言うと消えて行きました

「マイ姫」

メイ姫はマイ姫を探していました

「どこに行ったのだろう?」

思いはどんどん不安になります

「こんなことだったら連れてこなければ良かった」

そんな気持ちが強くなります

「マイ姫ーーー!」

大きな声で呼んだ時に、向こうの方で動くものを見つけました

「マイ姫」

走って駆けつけたところで見たものは、怪しげな影でした

「メイ姫」

「お前はなにものだ」

「私はあなたの心 あなたの本当の気持ちを映します 

 あなたが思っていることが、私の姿・・」

「何を言うか」

メイ姫は言い返しました

「あなたは、マイ姫がかわいいの?」

影は問いかけます

「そ、それは」

メイ姫は言い返せません

「妹だからと、お父様からいわれたのよね」

「・・・」

「我慢する毎日もあったのよね」

「・・・」

「あなたは本当は、妹が邪魔だったのよね」

「やめて!!もう聞きたくない」

「あなたの本当の気持ちを言いなさい」

「そうよ、私はいつまでもお父様に甘えたかったのよ

 でも妹が生まれて、お父様は妹ばかり可愛がって、私はずっと我慢した」

「かわいそうなメイ姫」

いつの間にか、優しい顔のメイ姫の顔は、厳しく憎しみのこもった顔に

なってしまいました。


そんな二人を北の魔女は、氷の鏡で見ていました

「はっはっっはーー、そうじゃそうじゃ、憎しみあうがよいわ」

二人は、北の魔女の魔法にかかってしまったのです

憎しみを互いに持った二人は、霧の中を歩きました

やがて、道が一つになるところで、二人は出会いました

「メイ姫、よくも私の邪魔をしたね」

「マイ姫こそ、なぜ生まれたの」

憎しみの言葉を互いに放ち、剣と矢を構えました

ギリギリ・・矢をひく音が響きます

マイ姫が矢を放つと同時に、メイ姫は飛び剣をマイ姫に振り下ろしました

その瞬間、黒騎士が二人の間に入りました。

矢のあたる音、剣が裂く音が響き、そのあとに黒騎士が倒れていきました

「黒騎士!

二人は同時に叫びました

倒れた黒騎士のもとに駆け寄った二人は、黒騎士を抱き上げました

「どうして?」

「私たちは何をしていたの?」

互いに口にすると

「あなたたちは北の魔女に操られていたのよ」

心の中に響く声がしました

「だれ?

「黒騎士?」

「そうよ、私はあなたたちをずっと見てきた。いつかこんなひがくるかも

 しれないって、それを止めるために・・・だからこれでいいの」

「黒騎士 死んじゃうの?」

「いいえ私は死なないわ」

二人が、黒騎士のマスクを取ると、そこには誰もいません

「これは、いったい」

二人は声を合わせて驚きました

「これから、二人にはもっともっと大きな試練が襲いかかります

 でも、二人が信じ合うことでそれを乗り越えることが出来るのです」

黒騎士の言葉は、二人の心に響きます

「メイ姫」

「マイ姫」

二人は顔を見合わせ、泣きながら今日の出来事を悔やみました。

「あなた達の持っている 剣と弓にはまだあなた達が知らない力があるの

 それはあなた達の心が一つになったときに、初めて現れるの

 それと、この鞭はその力をもっと強くしてくれます」

心には黒騎士の言葉が響きます

「わかったわ、きっと力を合わせて北の魔女を倒すわ」

二人はそう誓いました。

黒騎士はやがて何も語らなくなりました。

「マイ姫 今まであなたが思ってたことに気づかずにごめんね」

「いいえ、私こそ」

二人はこれまでのことを思い切り話し合いました

本当は寂しかったこと、子供であるが故に感じる寂しさと嫉妬を

心のままに話しました。

「ごめんね」

「ごめんね」

二人の心が一つになった瞬間でした。

すると、二人の持っていた剣と弓が、まばゆく光り始めました

「え?なに?」

まばゆい光の輪はどんどん大きくなり、二人を包みました

二人の心にも不思議と勇気が湧いてきます

「これが、本当の力?」

二人は顔を見合わせました。

「さあ 行くよ」

「行こう」

二人は北の魔女の城に向かい歩き始めました。


その一部始終を魔法の鏡で見ていた魔女は

「ええい いったいどうしてくれようか」

悩んでいました

不思議な力を持った二人に勝てる手段を考えています。

「こうなったら、私が直接手を下してやる」

北の魔女は城へと続く橋へと二人を導きました。





  決戦のとき


二人が進むと、城の入り口にたどり着きました

「メイ姫 油断しないで」

「分かってる」

二人は、剣と弓を構えて進みました

城の奥へと進むと、白く光るものが見えました

「北の魔女?」

「気をつけて」

近づけば、これまで感じたことのない、大きな力を感じます

恐怖で逃げ出したくなるような大きな力に、二人の足も震えます。

二人はそれでも前へと進みました。

突然、光の中から黒い固まりが二人を襲います

「えい」

メイ姫は落ち着いて剣を振り下ろします

今度は別の方から、また別の方から飛んできます

「きりがないわね」

二人は力を合わせようと、互いに目を見合わせました。

心が一つになるように、光の方を見つめて剣と弓を構えました

「いいマイ姫」

「うん」

大きな緑の光の輪となった二人の力を、思い切り白い光にぶつけました

四方八方に飛び散った光が、やがて小さくなって人の影が見えます

「けっこうやるじゃないかえ」

北の魔女がついに姿を現しました

「よくここまできたもんだ、でもここでおしまいだよ」

「そんなことはないわ、私たちの力であなたを倒してみせる」

「ほーほっほっほ 面白いことをいうじゃないか」

「やれるものならやってみなさい」

魔女はそう言うと、手のひらから白い光をだして、二人に襲いかかります

「そんなものは通用しないわ」

メイ姫は剣を振りかざし、魔女に飛びかかりました

マイ姫は弓を構えて、隙を待っています。

城の階段を魔女は上って行きます

二人はそれを追います。

城の一番上まで上ったときに、ついに魔女を追いつめました

「くそ よくもよくも」

魔女は怪しげな呪文を唱えると羽が生えて飛び立とうとしています。

「このまま逃がしてはだめよ」

マイ姫が叫ぶと、メイ姫は黒騎士から受け取った鞭を取り出し

飛び立つ瞬間の魔女の足へ絡めました。

「ええい なにをする」

魔女はもがいてもなかなか外れません

「マイ姫 今よ」

マイ姫は弓を引き、狙いを定めて矢を放つと矢は

魔女の心臓に突き刺さりました。

「ぐええ  」

何とも言えない叫びを残して魔女は、深い闇の中に落ちて行きました

「やった?」

「うん 手応えあったわ」

魔女の落ちて行った闇を見ていたら、白い光激しく光りました。

「魔女の最後ね」

二人は確信しました。

そしてその場に座り込み、互いの顔を見て泣きました。

やっとここまで来た、北の魔女を倒すことが出来た。

二人はこれまでの辛さと喜びを噛み締めていました。

空を見上げると、少しずつ空も明るくなって行きます

氷の城も、解け始めました。

「ここにはいられないわ」

「そうね 帰りましょう」

二人は城を後にしました。


北の魔女が倒れたことは、誰も話さなくても分かりました

帰る道の途中は、来たときよりも大地は緑で花が咲いていました。

空は青く、人々の顔も明るくなっています。

二人は、王国へと馬を走らせました。

国に帰ると、国民が待っていました

「バンザイ バンザイ」

あちこちで二人を祝福する声が上がります。

「お母様 ただ今戻りました」

王妃が休む部屋へと入って、北の魔女との戦いの話をしました。

王妃はただにこやかに笑って、二人をやさしく抱き寄せました。

「よく頑張りましたね」

そして、二人はミイ姫のもとへと急ぎます

「ミイ姫」

「帰ってきたよ」

二人はそおっと、ミイ姫の寝顔を覗き込みました。


「お父様、北の魔女を倒しました」

国王の墓の前には、3姉妹と王妃の姿が有りました

「これからもこの国を守って行きます」

「どうかお力をお貸しください」

みんなで手を合わせて祈りました。






   現実の世界へ


「二人とも いつまで寝てるの」

お母さんの声にメグちゃんは目が覚めました。

いつのまにかすっかり眠っていたようです

「まあちゃん起きて」

妹を起こしました。

夢を見ていたようです、不思議な夢でした。

「あのねお母さん 変な夢見たよ」

まなちゃんが話しています。

お母さんは笑って聞いています。

同じ夢見たんだ・・めぐちゃんは思いました

そして、みきちゃんの方を振り返り顔を見ました

相変わらず、指をくわえて眠っています。

夢では魔法が溶けて元気になったけど、現実の世界は変わりません

「ああ、やっぱり夢だったんだ」

じっと見ていると、ぱちっと目が開き、めぐちゃんはびっくりしました

すると、今まで通じなかったみきちゃんの心が、はっきりと分かったのです

「ありがとう」

そう言っているように感じました。

めぐちゃんの目には涙が流れてきました。

「ごめんね、ずっと守ってあげるから」


「さあ ごはんにしますよ」

お母さんの呼ぶ声がします

「今日おとうさんは遅いの?」

「きっと遅くなると思うよ どうして?」

「ううん ちょっとね、 夢の話をしたいの・・」

「そう? なにか楽しい夢をみたの?」

「内緒だよ」

外は日も暮れて、月が出てきました。

「綺麗な月だな」

お父さんが家に向かっています。

家には明るい笑い声が響いていました。



そのあと お父さんはこの話を聞きました。

夜、子供達が寝た後にお母さんと話しています

「優しい子に育っていてくれて良かった」

二人はにこやかに笑いました。

月の夜は静かに更けて行きました。




おしまい





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