被害者と加害者
未來王の親友、
冥界の魔王・ディス。
未來王に問いかける。
「ねえ? トレジャン……、
どうして人間は同じ過ちを繰り返すの?
どうしてこんなに愚かなの?」
未來王、
ネオ・トレジャン・ヴェルセント・マイタレイヤ。
返答する。
『ハハ、確かに……。
懲りない生命体ですよね』
「だってね?
天誅だとか、
前世の罰とか、因縁だとか……?
そんなこと、まだ言ってるのよ?」
『面白いですよね?
仮にその定説が正しいとしても、
根本的な問題がありますね。
なぜ先祖の過ちの代償……、
支払うのが子孫?
なぜ覚えのない過去世の罪……、
反省猛省をさせられる?
挙げ句に、高額な代償金を支払わされる……。
それも得体のしれない第三者団体を通じて、です」
「ホントよね!
真っ当に生きている人間が損をする……、
嫌な世の中よね?
搾取されて、思考さえも奪われて、
それで人生終わりなんて……、ねえ?」
『少なくとも、
先祖の因縁とやらで罰を当てることはありません。
死没後、劇甚処罰を喰らうのは当事者です』
「ンフフ……、
悪人……、アタシがただじゃ置かないわ?
あらゆる事件の首謀者、戦争の主犯たち、
影響力のある危険思想家、
善を装った悪……、とかね?」
『残念なことに人間は……、
被害者にも加害者にもなり得ます。
善人であるつもりが悪人だった。
被害者のつもりが加害者だった。
自我と審判が異なる……、
それは往々にして珍しくないですね。
最悪なのは……、
なぜ己が罰せられたのか?
それさえ理解できない人間が居ることです』
「ホント!
ムカつくわよね?」
『諸悪や罪人に対して、憎む心があるのは当然です。
しかしながら、
行き過ぎた正義、過剰な矯正、
それらは心を荒ませます。
それは被害者が加害者に転じた瞬間でもあります。
憎んでいた罪人と『同類』になったのです』
「その場合は仕方ないわね?
どうせ転生の確率はゼロに等しいわ!
無限の時間を使って処罰するしかないわよね?」
『ディス……、
それでも一縷の可能性があれば、
掬いたいのです……』
「ンフフ……、
りょ~かいっ!
ほかならぬトレジャンのためですもの……」




