表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「顔が好み」で勇者にしてあげたのに、裏切られたのでラスボスになります  作者: さらん
第二章『神に見捨てられた国』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/64

第四十七話:深淵(しんえん)の罠と、完全なる檻(おり)


王国の東部国境を守る要塞都市エスティア。

そこは既に、地獄の釜の底と化していた。


「ひるむな! 撃て! 撃てェ!」


守備隊長の絶叫が響く。城壁の上から矢と魔法の雨が降り注ぐが、眼下を埋め尽くす魔王軍の進撃は止まらない。


転移門から現れた数千の軍勢。その先頭に立つのは、骸骨スケルトンの騎士や、腐肉を纏ったゾンビたち――不死者の軍団だった。

何度倒しても、不気味な紫色の光を浴びて蘇る。


「駄目だ……! 敵の再生速度が異常だ!」

「門が破られるぞ!!」


城門が巨大なトロールの棍棒で粉砕されそうになった、その瞬間。


ドォォォォォン!!

上空から飛来した「何か」が、トロールの頭上に着弾した。

爆風と共にトロールが消し飛び、周囲の不死者たちが一掃される。

土煙の中から現れたのは、白銀の剣を携えた、一人の青年。


「……勇者様!」

「ミナト様が来てくれたぞ!!」


兵士たちの歓声が上がる。

ミナトは、油断なく周囲を見渡した。


(再生する魔物……。通常の魔族じゃない)


『鑑定(真)』で敵を見る。ステータスに異常な数値。

(女神の『神聖力』で強化されているのか。……厄介だな)

だが、やるしかない。

ミナトは剣を掲げた。


「『聖域サンクチュアリ』!」


広範囲に展開された聖なる光が、不死者たちを包み込む。女神の力を悪用して強化された彼らには、純粋な勇者の光が劇薬となる。


ジュワアアアッ!

不死者たちが浄化され、塵となって消えていく。


「……フォッフォッフォ。流石は元・勇者。派手な登場ですな」


戦場に、不気味に響く老人の声。

ミナトが視線を上げると、魔物の軍勢の遥か後方、空中に浮遊する影があった。

黒いローブを纏い、巨大な杖を持った老魔導師。

四天王『深淵のロキ』。


「お前が指揮官か」


ミナトは、即座に地面を蹴った。


(魔法タイプか。距離を取らせたら面倒だ。速攻で沈める!)

スキル『身体能力超強化』全開。

音速を超え、一瞬でロキの懐へと肉薄する。


「消えろ!」


白銀の剣が、ロキの首を刎ねようと閃く。

だが、ロキは動じなかった。

枯れ木のような指で、懐から「ある物」を取り出し、ニヤリと笑っただけだった。


「……お待ちしておりましたよ」

「貴方が、自らこの『処刑台』に飛び込んでくるのを」


ロキの手にある、禍々しい紫色の水晶が輝いた。


「――『神縛りのギフト・プリズン』、展開」


カッ!!!!

閃光。

ミナトの視界が紫色に染まる。


「ぐ……っ!?」


ミナトの体から、力が抜けた。

空中にいたはずの彼の体が、重力に引かれて墜落する。


ドサッ!

地面に叩きつけられる痛み。受け身すら取れなかった。


「は……あ……?」


ミナトは、震える手で地面を掴んだ。


(力が……入らない)

(魔力が、練れない)

(あの時の……『神縛り』か!?)

ミナトは、必死に顔を上げ、周囲を確認した。

紫色の光のドームが、ミナトを中心とした半径数百メートルを完全に覆っている。

そして、ミナトは探した。

あの時、騎士団長が使った「試作品」にあった、物理的な「隙間」を。


「……無駄ですぞ」


ロキが、重力を無視して、ゆっくりと降りてくる。


「貴方が探しているのは、結界の『ほころび』でしょう? 残念ながら、これは女神様が直々に調整された【完成品】」

「設置型の松明たいまつなどという原始的なものではない。この空間そのものを断絶する、完全なる檻です」


ロキは、杖の石突きで、ミナトの頭をコツンと小突いた。


「ぐぅ……!」

「おやおや、痛そうですな。……今の貴方は、スキルも、ステータス補正もない、ただの脆弱な人間。私の杖の一撃でも、骨が折れるかもしれませんな」


ミナトは、歯を食いしばって立ち上がろうとする。

だが、鉛のように重い体は言うことを聞かない。


(……罠だ)

(東、西、南。三箇所同時侵攻に見せて、俺が一番戦力の高い『東』に来ることを見越して……)

(ここにだけ、この『結界』を配置していたのか!)


「さて」


ロキは、嗜虐しぎゃく的な笑みを浮かべた。


「女神様からのオーダーは、『なぶり殺し』ですが……。ただ殺すのでは芸がない」


ロキが杖を掲げる。

彼が飲み込んだ『神の雫』の力が発動する。女神の神聖力と、ロキの深淵魔法が融合し、どす黒く輝く無数の「魔弾」が空中に生成された。


「貴方が無様に踊り狂う様を、王都の人間どもに見せてやりましょう」

「『希望』が『絶望』に変わる瞬間こそ、最高のエンターテインメントですからな!」

「――撃て(ファイア)」


ドシュシュシュシュッ!!!

無数の魔弾が、無力化されたミナトに降り注ぐ。


「が、あ……っ!!!」


防御スキルもない。回避もできない。

生身の体に、魔法の弾丸が次々と突き刺さる。

血飛沫ちしぶきが舞い、ミナトの悲鳴が戦場に響き渡った。


完全なる罠。

完全なる檻。

英雄の帰還からわずか数十分後。ミナトは、東の荒野で、絶体絶命の窮地に立たされていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ