アルテラ創世記
はい、みなさん、今日の講義では我々の世界『※アルテラ』の創世記についてお話ししましょう。
(※人間大陸と魔界大陸を含む世界の総称)
さて……この世界・アルテラを生み出したのは母神テーラです。彼女には息子である二柱の兄弟神がおりました。ここで重要なのは、テーラが彼らに統治の役割を与える際、世界を二つに分けたという点です。
一方の大地は魔力に満ちあふれた肥沃な土地……しかし同時に恐ろしい魔獣たちがはびこる危険な領域。
もう一方は魔力こそ乏しいものの、安全で穏やかな土地。
この二つから選ばせた結果、弟神エレツは前者を、兄神ボーデンは後者を選びました。
はい、これこそが《魔界大陸》と《人間大陸》が分かたれた最初の起源なのです。
さて、ここでご注目いただきたいのは弟神エレツの苦闘です。魔界大陸を治めることになった彼は、絶え間なく襲いかかる魔獣たちに立ち向かわねばなりませんでした。力によってそれらをねじ伏せながら、彼は統治を続けます。
やがてエレツは大地に小さき生命――たとえば鼠のような存在を生み出します。ですが、皆さんも想像できるでしょう? それらはすぐに魔獣に食い尽くされてしまいます。しかし、ここで興味深い現象が起こります。無数に生まれる小生命たちは、大地に巡る魔力を糧に、自らを鍛え、知恵を働かせ、やがて魔獣を打ち倒すまでに成長したのです。
さて一方、人間大陸を選んだ兄神ボーデン……魔獣はいないんですが、まあ何もない大地だったんです。水も乏しいし、作物も育たない。これじゃあ発展のしようがないですよね。
そこでボーデン、実はちょっとした“ズル”をするんです。弟エレツの目を盗んで、魔界大陸にあった《種》をこっそり盗み出し、自分の大地に蒔いてしまったんですね。するとその土地から水が湧き、川となり、やがて生命が誕生しました。これが後に人間大陸の礎となっていきます。
それでもボーデンは慢心せず、母神テーラに祈りを捧げ続けました。その姿に心を打たれたテーラは、妹である調和を司る女神・ウーラノスを褒美としてボーデンに嫁がせます。
そして二人の間に姫神フロールが生まれたのです。フロールがこの世に生まれた瞬間、大地に花と命が咲き乱れ、人間の始祖が誕生した――と伝えられています。
ですが、このお話にはちょっと悲しい続きがあります。フロールは小鳥に化けた弟神エレツによって、魔界大陸へと攫われてしまうんです。
エレツに連れ去られたフロールはやがて子を産みます。しかし心は常に故郷を想い、悲しみに沈みながら魔界大陸で一番高い『始まりの山』へ登り、その神殿から人間大陸を眺め続けました。
そんな彼女の姿を見て、エレツは強く後悔します。そして自分とフロールの間に生まれた子――魔人ディアブロに魔界大陸を託すと、自らは山へ向かい、フロールに愛を語り、二人は神殿で寄り添うようになったのです。
ここから魔界大陸はディアブロの統治に移り、やがて小生命体からさらなる進化をした獣人族などの新しい種族も台頭しはじめます。
……さて、兄神ボーデンはどうしたでしょう。大切な娘を奪われた怒りと悲しみは凄まじく、その感情は大地を揺るがしました。火山は噴火し、大地は割れ、地震が人間大陸を襲います。ですが、この災厄が結果として人間大陸をさらに豊かで肥沃な大地へと育んでいったのです。
――こうして兄弟神の対立と悲劇が、大陸そのものの成り立ちに深く刻まれていった、というわけですね。
フロールを奪われた悲しみから大地を揺るがしたボーデンですが、その後、彼はある意味で“力の神”としての側面に目覚めていきます。
人間大陸に魔界大陸から恐ろしい魔獣――ダイドスが流れ着いたんですね。ダイドスは大地を荒らし人々を脅かしましたが、ボーデンはこれを打ち倒し、人間大陸の守護者として大きな力を示したのです。
しかし力を手にした神は、やがて強権的にもなってしまいます。
ボーデンは人間の姫ウィンディーノを攫い、自らの子を成しました。これにより妻であるウーラノス――調和の女神は深く嘆き、ついに天界へ帰ってしまいます。この出来事をきっかけに、人間たちの間にも争いが広がっていったと伝えられています。
力を得たボーデンの心から、フロールを奪われた痛みは消えることはありませんでした。やがて彼は人間大陸そのものと一体化し、自らの子孫がいずれ魔界大陸にいる娘を取り戻す、その未来を静かに見守る存在となったのです。
だから今でも、人間大陸の一部の地域では、大地そのものを“ボーデン”と呼ぶ風習が残っているんですよ。
さて、その頃、魔界大陸の方でも重要な動きがありました。エレツとフロールの間に生まれた魔人ディアブロですね。
彼は魔界大陸を治めながらも、祖母にあたる母神テーラへの祈りを欠かしませんでした。息子の兄弟神に忘れられつつあったテーラにとって、その祈りは大きな慰めとなり、やがてテーラは一筋の涙を流します。
その涙が大地に溜まり、水溜まりとなって――そこから生まれたのが、大妖精ニンフィーアでした。
ディアブロとニンフィーアは結ばれ、エルフの始祖や小人族の始祖が誕生することになります。つまり、また新しい文明の担い手たちが登場したわけです。
あ!そうそう…姫神フロールは“豊穣の女神”として後の時代に信仰されていきます。彼女の生まれた人間大陸の土地はルミナフローラと呼ばれるようになり、その地では今もフロール信仰が強い。
さらに、フロールが籠もった魔界大陸の聖域――『始まりの山』の神殿には、外敵から彼女を守る神獣が眠っているといわれています。神殿の柱には、その神獣が対になって彫られているんですね。考古学的にも面白い部分です。
そして忘れちゃいけないのが、その神殿の石碑に刻まれてる有名な詩です。 テストに出ますから表示しておきますね。
『光の眠る山』
山は遥かにそびえ立ち
雲を抱き、風は舞う
光の神獣眠りに沈み
その瞳は時を超え、愛を見守る
不老の魂、翼に触れれば
白き光に導かれ
黄泉の扉へ誘われる
祈る者は命に寄り添い
大地の安寧となるだろう
祈りなさい我が子たち
描きなさい眠り子たち
すべては御霊に寄り添えば
光は影を包み込む
北の息吹を感じなさい
東の心を見せなさい
西の瞳を捧げれば
清らかな浄化を感じるのみ
……いやぁ、神秘的ですねぇ!この詩には様々な考察がされてますが…それらをここで語ってしまうといくら時間があっても足りないので止めておきます。
――とまあ、こうして見ていくと、兄弟神の選択や争いが、ただの神話にとどまらず、大陸の成り立ちや文化、さらには人間と魔族の関係性にまで影響を及ぼしているのがわかりますね。
……あ、ちょうどいいところでチャイムが鳴りましたね。今日はここまでにしましょうか。
次回は、この神々の物語から発展して、人間や魔族、さらには妖精たちがどうやって国を築いていったのか――その“歴史時代”の幕開けについて見ていきたいと思います。
それではみなさん、お疲れさまでした。また次回お会いしましょう。




