第4話
あれから一週間が経過した。時折ローランたちのことを思い出してはもっとああしていればという後悔が渦巻いていたが、それもほとんど感じなくなってきた。今はそんなことより、最近増えてきた害獣及び魔物の農作物被害の対策で頭はいっぱいだった。
「じゃあ、コハク。畑は任せたよ。俺は周辺の見回り行ってくるから」
「わかった。パパ様の代わりにわたしがここを守る」
フンスッと意気込みピンと張った耳をピョコピョコさせる
(かわいい……)
そんな光景に心癒されながらコハクの頭を撫でる。すると、尻尾がこれでもかと動く。
「ハッ!?」
気が付けばかなり時間が経っていた。
・・・・・・・・・
森に入るとレオンは奇妙な気配を感じた。
(これは……ダンジョン?)
「いや、まさかな。ここは普通の森だ。それが急にダンジョンに変質するなんてありえない」
不意に感じたその違和感に、レオンは勘違いだと言い聞かせるように首を横に振る。そして、再び森の散策を開始する
しばらく探索していると数匹のゴブリンが群がっているのが確認できた。気配を殺し、出来るだけ近づく。木々にうまく身を潜める。
「「「ギギギッ!?」」」
約5m程近づいたところで、こちらに気づいたようで戦闘態勢を取ろうとするがすでにそこはレオンの射程範囲である
「リミット限定解除」
(オーバードライブ:脚ッ!)
これが新しくレオンが生み出した技。全身のリミットを解除し、人外の力を発揮するリミット解除とは違い、リミットを解除する部位を指定し、そこのみに魔力を流す。これは元来のオーバードライブより魔力の出力は落ちるがそれ以上に体にかかる負担の重さが段違いに軽くなる。
(とはいっても、これが使えるのは各部位ごとに1日5度までだ。それ以上は体が持たない。今はかろうじて筋肉痛程度で収まっているがそれもいつまでか……)
「ッ!?」
その時だった。かすかではあるが村の鐘が激しく鳴り響く音が聞こえたのだ
(この音の鳴り方……しくったッ)
「チッ!」
自分のどうしようもない馬鹿さに舌打ちをし、魔力を纏うだけの簡単な身体強化魔法を身に纏い急いで村のほうへと駆け出す。
「コハクッ……ムーバ婆さん。無事でいてくれよ」
・・・・・・・・・・・・
「あ、あぁ……あぁぁ。あぁぁぁぁぁぁッ!」
走って、走って、走って。その先にあったのは首だけとなり虚ろな目となったコハクと手足をつぶされ薄汚い小鬼に食われているムー婆さんだった。その横で群がるのはオークだ。
一瞬だ。一瞬オークが群がっているその中心に何があるのかを見てしまう。
コハクの胴体だ。
そして、それをあろうことか自慰に使っていやがる
それを理解した瞬間レオンの心にピシリッとガラスにひびが入る音がした。そして、
「リミット完全開放ォォォォォッ!!」
今まで控えてきた全てがどす黒くなって出てくるかのようにソレは溢れ出す。
「クソがぁッ!クソがッ、クソがッ、クソがァァァァァッ!!!」
己が持つありったけの魔力を怒りのまま放出し、荒れ狂ったソレは周囲の空間さえ歪め始める。自己流の強化魔法「オーバードライブ」をしようした状態で、なんの変哲もない鉄製の剣に触れた瞬間、魔物が肉片になる程の魔力を流し込んだ。
そして、レオンは鬼と化す。
「ウガァァァアッ!!」
空へ向けて放たれた咆哮は空間を震撼させる。魔物は己の欲望のまま人から奪い、襲い、犯す。そして、それを邪魔するものは殺す。そこに理性などなく。猛獣そのものだ。だからこそ
「「「―――ッ!!」」」
聞き取れないほどの数の魔物どもがレオンが放った咆哮に反応する。




