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全てを捧げた男は神の如き力を手にし、世界を統べる  作者: 神奈月 瑠奈
第2章

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第18話

十分後。刻印は塔全体へと広がり、昼と見紛うほど光を放つ。そして、次の瞬間


「うわっ!」

魔力の補給に伴い重心を預けていた壁が突然なくなり、レオンは前のめりに倒れ込む


「いたた……ケホッケホッ」


なんだ……埃がッ


倒れた衝撃なのかそれとも外気が流れ込んだことによって舞い上がったのか。レオンの周辺に巻き上がった大量の埃によって涙と風邪。そして、鼻水が大量に出る


周囲を見渡すと埃まみれ蜘蛛のだらけ……エルフの建築物だからと言ってやはり清掃は必須という事か


レオンは急いで手ぬぐいを取り出し、口と鼻を覆う。目は魔力の膜で覆い、埃が入らぬようにする。塔は外から見たものより数倍広く上階へは螺旋状の階段を発見する。


二階へ上がる。大量の蔵書が保管された書庫を発見する


三階へ上がる。闘技場のようなフィールドがあった。試しに地面を強めに殴ってみるがかすり傷一つついていなかった。それどころか殴った拳に強烈な痛みが走る


「イッ!」


手を擦りながらさらに階段上り4階へ。そこは食堂だったのだろう。いくつものテーブルとソレに付随するように椅子が置かれている。奥を見ると恐らくキッチンだろう物が置かれていた。見たこともない様式に少し戸惑いを見せるがそもそも自分は料理などできないことを思い出し、さらに階段を上る


五階。ここが最後の階層らしい。螺旋状の階段はこれ以上上にはなく、ここで途切れている。


「ここは……談話室?」


ソファーにテーブル。暖炉など、見るからに高級と感じさせるような家具たちがそれぞれ配置されている。しかし、その家主はどこを探しても見当たらない


「捨てられた塔……いや、それにしては家具がそのまま。荒らされた形跡もない………どういうことだ?」


どこか気味が悪くなり、早々と一階へ降りる。しかし、その道中。一枚の絵を見つける。何かの模様が掘られた額縁に入ったその絵に少し興味が湧き、のぞき込んで観察する。その瞬間全身の血の気が一気に引き、背筋が凍るのが分かる


「こ、これは……俺?」


そう、ソレはあの時。四人の魔将の一人ベルゼブブとタイムループ前のレオンが対峙している時の状況だった。信じられず食い入るようにその絵を見る。しかし、どれだけ見ようともその細部に至るまでレオンの脳裏に深く刻まれたその時の状況と何一つ変わらないのだ


「こ、これは……過去を?いや、実際には未来の話か?いやいやいや……それでもおかしい。俺から過去は幾度となく改変してきた。つまり、未来は変わらない。そういう事なのか?」


レオンの頭の中ではどんどん最悪な考えが浮かび上がる。一度始まるとその考えは加速していく。


「ハァハァハァッ………カヒュ。ッげほっげほ!」


呼吸はどんどん浅く早く。平衡感覚すら麻痺し始め、立ってることも危うくなる。


これは駄目だ。マイナス思考になるな


心の中で鼓舞するが、それ以上の量のマイナスな思考によって過呼吸となる。


「ま、まずいッ………」


人は魔力を用いて魔術を行使する。つまり、魔力が無ければ魔術を放つことはできない。どころか天啓の行使すらできなくなってしまう。しかし、そんな魔力と同じくらい必要不可欠なものがある。それは精神力だ。どれだけ魔力があって、どれだけ魔術の行使が上手く、早くてもいざという時平静を保てなければ魔力は暴走し、術者へ牙を剥く。だから国家は魔術師の育成及びその管理に躍起になっているのだ。


そして、問題はもう一つ。これが当てはまるのはこの世でレオンくらいのものだが…………


その問題というのは、魔術行使時のみに限った話ではないという事だ。魔力が無限に生成され続けるレオンは無意識的に四六時中溢れ出る魔力を体内で練り続けている。もし、こんな時に精神が揺らげば周辺一帯が荒れ地と化す


「ウググ………ウッ!」


そして、今一瞬の精神の揺らぎが生じる。その一瞬の間に体内で魔力の暴走が始まる。荒れ狂う魔力を必死にコントロールしようとレオンは試みる。しかし、それも虚しくどんどんレオンの中で荒れ狂う魔力がその出口を求めさらに激化する。


意識に反し、暴走する魔力はついに天啓へ作用を及ぼし始める


星すら見えていた夜空には雲が集まり始め、瞬く間に塔の上空を中心に徐々にその量を増やしていく。雨、風、雷、雪……様々な気象が全く同じ場所で発生し始める。集約する雲はやがて塔を中心に二キロメートル圏内を覆いつくして行く



——助けて……パパ様


「ッ⁉」


——ごめんなさい。守れなかった……パパ様の大切な畑を、おばあちゃんを


「これは……」


朦朧とする意識がはっきりする。そして、全身にもう忘れかけていた怒りが。全身を燃やすような激しい怒りがこみ上げる


「あの、子……の、声だッ」


あの時……俺がもっとッ、もっと早くに駆けつけていたのならッ!


「こんなッ……こんな体たらくで終わるなッ」


暴走する魔力の量を減らせ。体外へ!


体の内側から暴走する魔力の放出。荒れ狂う魔力は稚拙だが指向性を持ちレオンの体外へと放出される。あの時に……コハクと一緒に見たあの時の雲のように


魔力を雲に変換しろ。天啓を通してッ


不安も、怒りも、後悔もッぜんぶ……全部この瞬間の力に変えろ!こんなところで終わるな!


「ゔおおおぉぉぉぉッ‼」


レオンが発する声、目鼻から吹き出る血液。汗………その全てから超高密度の魔力が含まれている。そして、ソレはこの塔へすべて吸収されてゆく


変換した雲は周囲の雲と同化し、力を持つ。


雲によって覆いかぶさった土地はそこを境に亀裂が走り、地鳴りを起こす。それは数キロ離れたファーストテイルにまで影響を及ぼす。かろうじて崩れはしないものの家具が倒れ、整備された道は亀裂が走り、断層が生じる


「キャアァァァッ!」


「なんだ⁉何が起こっているんだ!」


「地震だ!みんな!建物から避難しろ」


「怖いよぉ。ママぁ」


混乱で悲鳴を上げる者。状況が分からず右往左往するもの。いち早く察知し、避難誘導するもの……人込みに飲まれ泣きわめく子供……まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。


しかし、その地鳴りは十数秒後にはピタリと止みいつもの静けさとなる。この変わりように街の住人は更なる混乱と不安に飲み込まれることになったのだった

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