第16話
次に向かったのはその環境故に特定の人間以外の者の立ち入ることが禁じられた場所。発見されているだけで十二か所存在している。そのうちの一つ。死の雪原『スノー』そこに一歩でも踏み入れば魔力すら凍結させる絶対零度すら下回る凍てつく空気が全身を襲い、常人なら十秒もしないうちに氷像と化してしまう。
しかし、そんなことはレオンには毛ほども問題にはならない。『オーバードライブ:魔纏』は、マグマが噴き出す超高温火山地帯だろうが生物が生きられたい絶対零度の雪山だろうが膨大な超高密度の魔力によって守られているレオンには全く害になりえない
レオンは、右手を天に掲げ、あの日……誰とも知れない声の主から託された天啓。『天空支配』を、自身を中心に半径1㎞内に発動させる。するとその瞬間先ほどまで吹き荒れていた吹雪はピタリと収まり、灰色の雲だけが上空を漂っていた
「じゃあ、行きますかッ!」
そういうと空中を踏みつけ、天へと駆け上ってゆく
(空中歩行。己が支配する空間に力場を発生させ、足場とすることで空中を自由自在に移動可能とする。ちょっとした技だが、めちゃくちゃ便利だ。)
そうこうしているうちにレオンは推定標高9000m以上あるスノーの山頂へと到着する。そして………
「『魔力探知」発動」
レオンの魔力は禁足地帯『スノー』を徐々に包んでいく
(おぉ、いるいる。A級が318体、S級も40体ほど。それ以下の魔物は……まぁ、ここでは生きられないか)
「とりあえずA級の魔物を200まで減らすか………」
ちなみにレオンはこの場にいる318体のA級の魔物を討伐することが可能だ。しかし、それをしないのには一つ理由がある。それは『突出した一体の特異点の出現』を防ぐためである。魔物の世界にもヒエラルキーがあり、ソレを壊す、あるいは壊れてしまうと必ずこのイレギュラーが出現する。そして、コイツが現れることによって発生する大災害。それこそが魔物行進だ。
レオンは魔力探知を維持し続ける。そして、
「さぁ、朝日よ、昇れ『陽の出』」
その瞬間、黒々と空を覆いつくしていた雲が消え、眩い光を放つ太陽が顔を出す。
「墜ちろ『炎天』」
レオンの掛け声とともに太陽からいくつもの日の光柱がスノーへと落ちる。
「—————ッ!!!」
いくつもの断末魔がスノー中に響き渡る
(こんなもんだろ)
レオンは流れ作業のように殺した魔物の死骸を回収し。ブレスレットへ収納する。しかし、レオンはその手を止める
『これを成したのはあなたですね』
静かに、それでいて神秘的と言えるまでの声音でレオンに語りかけるのは一匹のドラゴン。つい先ほど戦った古竜と同等のサイズ。
静かに、それでいて神秘的と言えるまでの声音でレオンに語りかける一匹のドラゴン。つい先ほど戦った古竜と同等のサイズ。しかし、レオンの眼前に突如として現れたこのドラゴンが内包する力は一線を画している
「ハハ……今日は厄日か何かか?」
レオンはもはや乾いた声で笑うことしかできなかった
「それで、古から生きる伝説の氷竜が俺に何の用だ?」
いつでも戦闘を出来るように全身に魔纏を発動させる。しかし、氷竜はそんなレオンを前にゆっくりと語りだす。
『これはつい数日前のことです……私がいつものように狩りを終え、自身の巣へ帰り、寝ているとふと声が聞こえたのです』
「……声?」
『はい。それは、気まぐれ屋で普段は声も掛けてこないくせに極々稀に突然私へ語り掛けてくる男……』
(幾億年を生きる古の竜すらもが稀にと思うほど………それに、氷竜のこの口調。間違いなくコイツより上。つまり、魔王か?)
「それで?その声の主はなんといったんだ?」
『彼は多くは語りたがらないので、短く一言。託せと………そして、私は気づきました。時は満ちたのだと』
そういうと氷竜は崩れ始めた
「ッ!?」
『あなたはいずれこの世界を統べる王となる。ですが、それはまだ先の話。どうか私の子をお願いします。』
そういうと氷竜は完全に消え去り、そこには直径五メートル強の大きな大きな魔石と彼女を象徴するかのような立派な角。そして……
「またこれか……」
一つの卵が残っていた




