第1話
「リミット解除」
(オーバードライブ)
その瞬間、視界に映る全てがスローモーションと化す。そして、力強く踏み抜かれた地面は、その衝撃で激しく隆起する。
「ハアァァァッ!!」
魔力を用いて、限界まで強化した腕で剣を振りぬく。
すさまじい衝撃音が響き渡り、レオンが高速で駆け抜けた場所には無数の魔物が死体の山を築いていた
「ふぅ……ゔッ」
一息ついた瞬間、体が裂けるような激痛が走る。目は充血し、その端々からは血が滴る。さらに筋肉が切れ、内部で出血した四肢は赤黒く変色する。
「あぁぁぁぁぁッ」
際限なく続く痛みにレオンは苦しみ、耐えきれずうめき声をあげる。そんなレオンに二人の男女が焦った様子で駆け寄ってくる
「レオンッ!また無茶しやがって。おい、ユーテァア回復の魔術を」
「はいッ!おいでませ『聖杖』。かの者に癒しの光を〈癒しの光樹〉」
ユーティアが詠唱すると、彼女を中心に光の粒子が広がる。それらは徐々に形を成していく。数秒後には光り輝く大樹となっていた。
そして、大樹となったその木に茂る数百の葉々がレオンへ集まり、損傷部分へ溶け込んでいく。光の木の葉が溶け込んだ箇所は徐々に傷は塞がった
・・・・・・・・・・・
「何度言ったらわかるのだ!お前は天啓を持たないただの一般人だ。それを……このままじゃお前は遠くない未来ッ「いいんだ!それで」ッ!?」
レオンはローランの言葉に被せ、その先の言葉を言わせんと強い口調で遮る。ふらつく足をローランの肩を借り、なんとか立ち上がる
「ローランの言う通りです。これ以上はあなたの身が持ちません」
「そんなことはない!ユーティア君の天啓『聖杖』と回復魔術があれば何度だって立ち上がれる。だからいいじゃないか」
「いいえ、駄目です。」
レオンは、『まだやれる』と吠えるがそれをユーティアは問答無用でピシャリと否定する
「私の力をもってしても戦うたびにこのレベルの傷を完全に治癒させることはできません。表面的には治癒しましたがあなたの神経系はすでに……」
「………」
「あなたが使う魔術『オーバードライブ』でしたか?あれは本来人が無意識的に嵌めている枷を、魔力を用いることで無理やり外し、その能力を引き出している。そして、その反動であれだけの傷を負っています。いわゆる諸刃の剣……肉体と魔力回路への負荷は計り知れません。これを続ければいずれあなたは魔術を扱いうどころか、体を動かすことはできなくなります。その前兆はすでに出ているのではないですか?」
「なにッ!?おい、どうなのだ!レオン」
ユーティアの言葉にローランはレオンの両肩に手を置き鬼気迫る様相で訪ねてくる。その視線にレオンは俯く。実際ユーティアが言っていることはあっており、そのことにレオンも薄々気付いていた
「…よくわかった。レオンよ。お前は、今日をもってこのパーティーより追放だ」
「―ッ⁉」
“追放”
その言葉を聞いた瞬間、レオンはローランの手を振り払い、逆にローランの胸倉をつかむ。
「ま、待ってくれよ。それはないだろ。ユーティアの言っているような症状なんて出てないし、まだまだ戦える。君たちの役に立てる!」
「駄目だ、帰ったら荷物をまとめるのだ。町へ帰るための費用は出してやる。これまでありがとう……」
レオンの言葉を。想いを両断し、告げる
「…クソッ!なんで、なんでぇぇぇッ!」
崩れ落ちるように地面へ膝をつき両腕を地面へたたきつける。レオンの声は虚しくダンジョンに響くだけだった




