■第9話『1万人の前で誓う――君がいたから、ここまで来られた』
■Scene: 舞台袖で繋がれた手――本番直前、誰にも見せない素顔
イベント会場の舞台裏――大型モニターに映し出されるのは、照明が交錯し、期待と緊張が混じり合う観客席。
控え室から出てきたほのかは、白いドレスに身を包み、緊張を隠しきれないように口元を指でなぞった。
その隣に立つのは、黒のスーツに身を包んだ佐伯瞬。
「大丈夫。ほのかさんは、どこに立っても一番綺麗だから」
瞬がそう囁いた。ふっと笑ったほのかは、指先で彼の手をきゅっと握り返す。
「私、今日だけは“妻”じゃなくて、“女優”でいるから。あなたも、“夫”じゃなくて、ちゃんと“社員”でいてね?」
「……わかってる。でも、ずっと見てる。世界で一番、応援してる」
2人の指先が離れることはなかった。
それは、嘘のない絆が、確かにそこにあるという証だった。
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■Scene: 幕が開いた――1万人の視線と500人の沈黙
ステージに照明が灯る。会場全体が一斉にざわめき、拍手が湧き上がる。
中央には綾瀬ほのか。そして、彼女の隣には“社内企画の責任者”という肩書きで佐伯瞬が並ぶ。
社員たちの間では、
「え、あれって…?」
「いつもは控えめなのに、まさか…」
そんな小さな噂がざわめきとして流れる。
そして、大スクリーンに映し出されるのは――
「このCMは、“家族のつながり”をテーマにしています」
瞬のナレーションとともに、映像が始まった。
ほのかが子どもと笑い合い、食卓を囲む映像。
日常のささやかな幸せと、温かいまなざし。
「誰かが支えてくれている。だから、前に進める。」
そんなナレーションが観客の胸に沁みていく。
上映が終わると、1万人の会場はしんと静まり返った。
そして――割れんばかりの拍手。
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■Scene: “嘘のない言葉”が、空気を変えた瞬間
司会者が振ると、ほのかは穏やかな笑顔でマイクを取った。
「このCMのお話を頂いたとき、私はひとつだけお願いをしました。
“誰かの心に残るものにしたい”と。
それが、ほんの少しでも叶っていたら嬉しいです」
そして、彼女は隣に立つ瞬に視線を送る。
「このCMの制作に関わったすべての方に、心から感謝しています。
特に……今、隣に立ってくれている社員の方にも。
どんなに難しい状況でも、静かに支えてくれる人がいてくれたからこそ、私はここにいられます」
会場には沈黙。そして、深い感動が、静かに満ちていった。
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■Scene: 藤堂マネージャーと、ひとつの視線
舞台袖。藤堂マネージャーが、瞬の後ろ姿を見つめていた。
「ほんとに……見違えたわね。あの子」
そう呟いた彼の隣には、会社の副社長と黒崎課長も立っていた。
「信じて送り出してよかった。なあ、黒崎君?」
「は、はいっ……ええ、もう、まさか……ここまでとは……」
視線の先――観客の拍手を受けながら立つ瞬とほのかの姿。
そこには、“役割”を全うする者たちの、確かな誇りがあった。
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