■第6話『瞬の選択――“会社員”と“家族の物語”の狭間で』
■Scene:朝・瞬の勤務先 社内執務室
「佐伯くん、ちょっと会議室まで来てくれるかな?」
直属の上司・黒崎課長に呼ばれた瞬は、急ぎ資料をまとめて席を立つ。
小会議室に入ると、既に社長も待っていた。
「実はな……うちのCM効果が思った以上に好評でな。今度、全国展開のプロジェクトで“顔”として再起用したいという声が挙がっている」
「え……でも、前回は一度限りの協力だったはずでは」
「まぁ、あくまで“ほのかさん”にではなく、“君”に対してのオファーなんだよ」
瞬は戸惑う。
「俺に……ですか?」
「うん。前回のCMでのナチュラルさと、ほのかさんとの空気感が“作られたものじゃない”って、取引先が気付いたらしい」
課長も言葉を添える。
「つまり……君自身が評価されたってことだ。どうだ? 本気で、芸能活動もやってみるか?」
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■Scene:昼休み・社内カフェテリア
社員たちのざわめきが、ひときわ大きくなっていた。
「あの佐伯さんってさ、ほのかさんとCM出てた人だよね?」「なんかプロっぽいっていうか……素がすごいよね」
そんな声を背中に感じながら、瞬は一人、黙って席に座っていた。
自分が“普通じゃない位置”にいることに、初めて本格的に向き合った。
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■Scene:夜・佐伯家リビング
食卓には、ほのかの作ったクリームシチューとパンが並んでいた。
「今日、会社でちょっと……またCM関連の話があってさ」
「また? どこから?」
「今度は……俺に、って。君じゃなくて、俺にオファーが来たって言うんだ」
ほのかは少し驚いたように瞬を見る。
「それって……瞬が“表に出る覚悟”を問われてるってこと、だよね?」
瞬はスプーンを止めた。
「……まだ迷ってる。でも、少しずつ、自分にも何かできるのかもしれないって思えてきた」
ほのかは、静かに微笑んだ。
「私が“君のファン”だったように、君にも“応援したいって思う人”が増えるかもしれないね」
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■Scene:その夜・寝室
ベッドに並んで横になりながら、ほのかがぽつりと言う。
「……どんな形でもいい。私、瞬が自分の人生を“選んでいく姿”を見たい」
「ありがとう。……でも、君が隣にいてくれるなら、俺、どんな道でも進める気がする」
そして2人は、静かに唇を重ねた。
そのキスは“新しい決意”の始まりを告げる、穏やかで深いものだった。
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