■第5話『家族、それぞれの夜――そして、兄が仕掛ける“もうひとつの物語”』
■Scene:夜・佐伯家リビング
瞬がテレビを見ながら、ふとつぶやいた。
「……光兄ちゃん、最近どうしてるんだろ」
すると、ダイニングでお茶を飲んでいたほのかがスマホをちらりと見て、
「今ね、新しいドラマの企画でちょっとバタバタしてるって。さっき、心音ちゃんと一緒に資料読んでたみたい」
「……妹、芸能界に入ってから、どんどん忙しくなってない?」
「うん。けど、どこか楽しそうでもあるよ。……家族って不思議ね」
「義姉と妹、って関係が、まさか“共演者”にもなるなんて」
瞬はそう言って、写真集イベントでもらった心音の手紙を見つめた。
“ファンとして渡させてください”という言葉が、ずっと胸に残っている。
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■Scene:翌日昼・某制作会社 会議室(光の企画会議)
光はモニターに企画書を映しながら、スタッフたちにプレゼンを行っていた。
「――この作品は、“家族愛”と“秘密の共有”を軸にします。
日常に潜む想い、そして表には出せない感情。それらを、ある家族に託して描きたいんです」
「……モデルって、もしかして?」
「ふふ。まぁ、似てるところはあるかもね。僕の“身近な家族”からインスパイアは受けてる」
同席していた心音が、少し顔を赤らめた。
「わたし、その妹役……やってみたいかも」
「言うと思った。けど、それには条件があるよ」
「なに?」
「……本人にも、その“家族の秘密”の意味を背負える覚悟があるかどうかだ」
心音は静かに頷いた。
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■Scene:同日夜・光のマンション
ほのかが訪れた。
「久しぶりに……一緒に脚本、読もうかなと思って」
「嬉しいな。ちょうど話したいことがあったんだ」
光はほのかに、今回のドラマで描こうとしている“家族の姿”について語り始める。
そこには、彼自身の“弟”や“義妹”、そして“ほのか自身”への想いが隠されていた。
「……まさか、あのときの家族旅行のエピソードまで脚本に入れるとは思わなかったけど」
「リアルって、やっぱり強いから。感情って、嘘をつけないし、観てる人にはすぐ伝わる」
「なら、私も演じる覚悟、持たなきゃね」
光は頷いた。
「……大丈夫。君なら、ちゃんと届けられる」
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■Scene:その夜・瞬の部屋
心音から、光との企画会議の内容がメッセージで送られてきた。
「兄ちゃん。次のドラマ、観てくれるよね? 義姉ちゃんと出るの。
“佐伯家”って名前は使わないけど、うちっぽい話になるって(笑)」
瞬はスマホを見ながら、天井を見つめてつぶやく。
「……なんか、家族がどんどんすごいことになってない?」
その横で眠っていたほのかが、小さく笑った。
「ねえ、瞬。私たち、なんだかドラマの中に生きてるみたいだね」
「でも、君の横で過ごすこの時間だけは――」
そう言って、瞬はほのかの髪にそっと手を伸ばし、額にキスを落とした。
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