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■第4話『妹として、ファンとして――義姉の隣に立った日』


■Scene:都内某書店・朝8時前


その日は、冬の名残がまだ残る澄んだ空気の朝だった。


佐伯心音はフード付きのコートを深くかぶり、人波の中に紛れるように列に並んでいた。


――限定100人だけ。

綾瀬ほのか、最新写真集『彼女は微笑む。』発売記念イベント。


「ファンでいられる時間って、今しかないんだもん…」

心音は静かに、自分の胸にそう呟いた。


列に並ぶファンたちの中には、まだ高校生くらいの女の子や、大学生のような男子もいた。


「ねぇねぇ、あの人……なんか見たことある気がする」

「えっ……うそ、あれって……佐伯心音ちゃんじゃない?」


小さな声がざわつき始めた、そのとき――


店内の奥から聞こえた、柔らかくも驚きに満ちた声。


「……えっ!? し、心音ちゃんっ!?」


イベント会場の中央、サイン台の前にいたほのかが、マイク越しに叫ぶ。


「うそ……まさか……ほんとに……並んでくれてたの?」


ファン全体が驚きに包まれた。


そして、スタッフの耳打ちを受けたほのかはニッコリと笑い、


「せっかくだから、サプライズゲストとして……今日の握手会、一緒に立ってもらいます!」


会場がどよめいた。



■Scene:握手会ブース・午前10時


「えっと……お兄ちゃん(瞬)の分と、光お兄ちゃんの分も買っておくね!」


心音の前に並んでいた女子高生が、嬉しそうに言ってきた。


「あのドラマの“妹ちゃん”だよね? なんかすごく自然だったし、本当に妹みたいだった」


「……本当の妹、だからね……(小声)」


そう呟きながら、心音はほのかの隣に立ち、ファン一人ひとりに丁寧に頭を下げた。


「義姉としては秘密。でも、ファンとしては本気――それが今の、わたし」



■Scene:その夜・佐伯光のマンション


「ただいまー! ……って、光お兄ちゃんいる?」


「あ、心音。おかえり。何だよ急に――」


「はいっ! これ! 義姉ちゃんのサイン入り写真集。しかも、今日のイベントの限定カバー版!」


「……マジで? え、俺の分?」


「うん、ちゃんと2冊もらったよ。兄ちゃんの推し活、義妹がサポートします」


光は苦笑しながらも、写真集を受け取って嬉しそうにページをめくる。


「……綾瀬ほのかって、こういうとき、本当にファンサすごいんだよな」


「わかってるよ。だからファンも辞められないんだもん」


「……ってか、心音……サイン2冊もらったって、義姉ちゃん知ってるの?」


「うん、ちゃんと“家族割”ってことで許してもらった!」



■Scene:その夜・佐伯瞬の家


「お兄ちゃん、いるー?」


リビングから現れた瞬は、仕事帰りで少し疲れた表情をしていた。


「心音? どうした、こんな夜遅くに……って、その袋……」


「ふふ。じゃーん、義姉ちゃんの写真集! 今日限定100部のイベントの!」


「うわ……ありがとう。え、もしかして並んだの?」


「もちろん、ガチで。ほのかさんにバレたけど」


袋の中には封筒に入った写真集があり、中には心音の手書きメッセージカードも添えられていた。


「お兄ちゃんへ

今日だけは“ファンとして”渡させてください。

義妹より、推しの妻を尊敬してるファンの一人として。」


瞬はそのカードを読みながら、思わず笑ってしまう。


「……ありがとう、心音」



■Scene:深夜・ほのかのスマホにて


光からの電話が入る。


『……今日は本当にありがとう。俺の分まで、ちゃんと心音が伝えてくれたみたいで。』


「ううん、こちらこそ。久しぶりに“ファンと接する私”を、妹に見せられて良かった」


『でもさ……“妹”にしか見えなかったよ、今日の心音』


「……そうね。でも、ほんとの妹になっちゃったのよ」


『それが、最高だよ。じゃ、また今度、お礼ちゃんとするわ』


「うん、楽しみにしてる」



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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