■第3話『CMと再会と、ふたたび舞台へ――推しと夫の狭間で』
■Scene:企画会議室・午後
瞬が勤務するマーケティング企業。
今日は来期の大型イベントCMの方向性を詰める大事な会議だった。
「次のターゲットは女性層とファミリー層をどう同時に惹きつけるかですね」
「前回のCM、大反響でしたからな……社長からも“再起用できるか”と話が出てます」
黒崎課長が目を光らせながら口を開く。
「……ほのかさんを、もう一度?」
企画書の上に載った名前――“綾瀬ほのか”
その文字を、瞬は無言で見つめた。
「うちの会社の顔として、これ以上の人はいないと思うんだが……佐伯、お前、聞いてみてくれないか?」
「……はい」
あくまで“社員として”。
“夫として”ではなく、“営業担当”として。
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■Scene:その夜・自宅リビング
「また出るの? CMに」
瞬がぽつりと聞いた。
「うん。マネージャーからも、前回と同じ会社なら、全然OKって」
「今度は何するの?」
「家族向け製品のイベント。CM撮影とPR登壇と、記者会見があるって」
「記者会見……」
瞬の喉が詰まる。
表に出るということは、リスクもまた、表に立つということだ。
「大丈夫。ちゃんと“プロとして”やるから」
「……夫として、すこし、複雑なんだよね」
「それは私も。だって、あなたが“ファン代表”みたいな顔して見てくるんだもん」
「それは……そうだけど」
「……じゃあ、こうする?」
ほのかは唇を寄せ、そっと瞬に囁いた。
「“CMの中では、仕事として”。でも、夜の寝室では――“あなたの奥さん”として、ちゃんと伝えるから」
その言葉に、瞬の中に灯る安堵。
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■Scene:CM撮影・当日
スタジオには、大型モニター、プロ用カメラ、照明がずらりと並び、
現場の緊張感が張りつめていた。
「本日もよろしくお願いします!」
ほのかが明るく挨拶すると、スタッフから一斉に拍手。
そこへ、現れたのは――
「うちの妹も、よろしくお願いしますね」
佐伯心音。
すでに芸能界デビューしていた彼女は、今回のCMで“ほのかの妹役”として出演することに。
「わっ……! 本当に来てくれたんだ」
「もちろん。“お義姉ちゃん”と一緒にCMに出れるんだから、光栄よ」
心音がほのかにそっとウインクを送った。
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■Scene:スタッフ控室にて・撮影合間
一方、瞬は会議の報告と資料確認のため社内から送られてきたメールに対応していた。
そこへ、黒崎課長からメッセージが。
【俺、今日の現場、見学できないのが残念すぎる。せめてサインもらっておいて】
【あと、新しい写真集出るなら、会社の販促費で買っても問題ない?】
「課長……やっぱり本気で推してるな」
苦笑しながらも、瞬はスマホをしまった。
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■Scene:夕方・自宅
その夜、撮影を終えたほのかと心音が帰宅すると、
子どもたちは玄関まで走ってきた。
「ママー! おかえり!」
「おかえりーお義姉ちゃん!」
「ただいま、みんな〜」
その笑顔に迎えられ、ほのかはふと――
“表の顔”と“家庭の顔”のバランスを、ちゃんと保てているか、静かに考えていた。
そして夜、瞬と布団に入りながら。
「CM、よかったよ」
「ちゃんと“演技してた”? “愛してる”って言ったけど、あれはあくまでセリフだから」
「うん……わかってる。けど……」
「なに?」
「“プライベートではもっと愛してる”って、言って」
ほのかは一瞬、恥ずかしそうに瞬の顔を見て、
照れながらそっとキスをした。
「……もっと、愛してるよ。お仕事モードよりも、ずっとずっと」
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