■特別編:赤面のゲスト出演と、推し談義の社長室
■Scene:ドラマ撮影・控室にて(光とほのか)
光主演の新ドラマ『風に咲く約束』――
その撮影スタジオの控室。
ゲスト出演で訪れていたほのかは、撮影終わりの光に、こっそりと問いかけた。
「ねえ、光さん……この間の話の続きなんだけど。私の“他に”どこが好きだったの?」
光はスーツを脱ぎながらも、口元をニヤつかせた。
「え? 他にもあるよ、山ほど」
「えっ、山ほど……?」
「たとえば、ほのかさんの“間の取り方”。セリフとセリフの間に生まれる“沈黙”を、あれだけ味方にできる女優って、ほんとに稀少だよ」
「え……」
ほのかは頬が赤くなりかける。
「あと、“歩き方”も。普通の女優は演出が付かない限り意識しない。でも、ほのかさんはどんな役でも、“その人物の靴音”まで演じてる。あのこだわり、俺はちゃんと気づいてた」
「……あ、ありがとう、ございます」
ほのかの顔はじわじわと赤く染まり、笑うこともできず、ただ黙って聞き続けるしかなかった。
「まだある。雑誌のインタビューで“家族が欲しい”って答えたとき、俺は心から“叶ってほしい”って思った。あれは役じゃなくて、本人の願いに聞こえたからさ」
「光さん……そろそろ……」
「でね、“耳に残る声”って言ったけど、実際は“記憶に残る静寂”を作れる声なんだよ。静かに語っているだけなのに、観客の呼吸まで変える……」
「もうやめてえぇぇぇ……!」
ほのかは顔を手で覆い、とうとう限界に達した。
照れすぎて“女優”としての耐性も崩壊寸前だった。
(光兄さん……ちょっとだけ“やばいファン”寄り……)
⸻
■Scene:会社・昼の休憩中(瞬と黒崎課長)
一方その頃、瞬は会社のデスクで昼食を取っていた。
そこへひょっこり現れたのが、我らが黒崎課長。
「なぁ、瞬。会員番号……いくつだったんだ?」
「え? えぇ……まず課長の番号から、聞かせてくださいよ」
「……1000番ちょうど。10年前の深夜に滑り込みで登録した」
「1000って、かなり早いじゃないですか」
「で? お前は?」
「……“1番”です」
「ッハ!?」
箸を落とす黒崎課長。
「高校のとき……初めて出たアニメ映画のパンフにQRコードが付いてて。速攻で登録しました」
「え、えぐ……俺、負けた……」
⸻
■Scene:午後・社長室にて(社長の隠れ推しバレ)
午後2時、瞬は月例の報告のために社長室を訪れた。
「佐伯くん、少し待ってて」
――と社長が開いていたのは、まさかの綾瀬ほのか写真集。
「……あの、それ……」
「君の奥さんだよね?」
「は、はい……」
「実は私も、ファンクラブ会員なんだ。20000番だけどな」
社長は小さな声でそう言って、眼鏡を持ち上げた。
そこへ黒崎課長がやってきて、社長と瞬と3人――
なぜか“ほのかファンの茶会”が始まってしまった。
「ほのかさんの舞台での立ち姿……あれは品がある」
「CMの微笑み、企業としては“理想の広告塔”です」
「子どもとの写真がほしいねぇ。あ、非公開か」
「そりゃそうでしょ!」
「1番の君が一番語れるんだから、語ってくれよ」
――気づけば、定時。
⸻
■Scene:夜・自宅リビング
仕事を終え、玄関で。
「ただいま」
「おかえりなさい」
ふたりは、自然にキスを交わした。
それは日々の挨拶というよりも、“今日も大好き”の合図。
その夜――
「光兄さんがさ、今日また“どこが好きか”語りまくってたよ……」
「うわぁ……やめてぇ……」
「社長と課長も、写真集広げて盛り上がってたし」
「なんでそんなに推されてるの私!?」
笑い合いながら、寝室で交わすもうひとつのキス。
それは“役”でも“演出”でもない、夫婦の物語の続きを綴る、濃厚で優しいキスだった。
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