■第2話『350万人にひと握り――“3000分の2”の奇跡と、知られざる“1番”』
■Scene:抽選確率0.085%の奇跡
日本国内で公式ファンクラブ会員数350万人を超える国民的女優・綾瀬ほのか。
その握手会が、5年ぶりに開催される――
しかも今回の参加者は、たったの3000名。
倍率はおよそ0.085%。
3000 ÷ 3,500,000 = 0.000857… = 0.0857%
選ばれること自体がもはや“奇跡”の領域。
そんな中に、ひっそりと2人の名があった。
佐伯瞬。そして……黒崎課長。
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■Scene:握手会当日、ファンとして並ぶ2人
イベント当日。
都内某所の大型ホールの会場入口には、すでにファンの長い列が形成されていた。
瞬は黒いキャップを深くかぶり、マスクで顔を隠している。
黒崎課長は、白いシャツに赤いバンダナという4年前と同じスタイルに、胸ポケットにはミニサイズのほのかアクスタが輝いていた。
「この緊張感、学生時代の告白よりやばいな……」と課長が呟く。
「僕、毎日顔見てるんですけどね……今日は変な汗が止まらないです」
「おいおい、瞬、お前何者だよ? ……っていうか、会員番号いくつなんだ?」
瞬はおもむろにスマホを開いて、表示されたファンクラブ情報を黒崎に見せた。
《会員番号:000000001》
「は!? ……1番⁉︎ お前、“綾瀬ほのか伝説”かよ……」
「高校のとき……初めて出たアニメ映画のパンフにQRコードが付いてて。速攻で登録しました」
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■Scene:握手の瞬間、重なる視線
会場内は静かに流れる音楽とスタッフの案内の声。
順番に握手が進んでいき、ついに黒崎課長がほのかの前に立った。
「ほ、ほのかさんっ……! あ、あの、京都でもお世話になりまして……! また、また応援してますっ!」
「うふふ、ありがとうございます。白いシャツとバンダナ、覚えてますよ。とても情熱的な声でしたから」
黒崎の目尻が一気に下がる。
「感激っす……」
そしてその後ろにいた瞬が、一歩前に進んだ。
「……こんにちは」
その瞬間、目を丸くするほのか。
「えっ……!? ……どうして……来たの?」
瞬は困ったように笑いながら、ファンクラブの会員証を見せた。
「会員番号、1番なんで……当たっちゃって」
「うそ……本当に……知らなかった……!」
ほのかは思わず小声でつぶやいた。
藤堂マネージャーも瞬に気付き、直立して一礼。
(あ、気付かれた……やっぱりプロだ)
そして握手の最後に、ほのかはそっと瞬の耳元で囁いた。
「……帰ったら、“ご褒美”あげるね。いつもより、濃厚なやつ」
瞬の耳が赤く染まり、スタッフの合図で席を離れた。
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■Scene:藤堂マネージャーからの一言
会場を後にしようとした瞬に、藤堂マネージャーが声をかけた。
「佐伯さん、今日はありがとうございました。……彼女、本当に嬉しそうでしたよ」
「こちらこそ……仕事の合間、ありがとうございます」
「……また、あのCM企画も動き出します。詳細はまたご連絡します」
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■Scene:夜、静かに重なるふたりの時間
その夜――
玄関を開けると、ほのかがすでに帰宅していた。
4人の子供たちはすでに眠りにつき、家には柔らかい静けさが流れていた。
「おかえり、1番さん」
「……知らなかったの?」
「知らなかったよ。まさか、本当に1番の人と結婚してるなんて……私」
ほのかは瞬の胸に顔を埋めると、そっと囁いた。
「来てくれて、ありがとう」
そのまま唇が重なった。
何度も確かめるように、深く、長く、そして甘く。
世界にバレてはいけない“夫婦”のキス。
でもふたりだけは知っている。
これは、何よりも幸せな“証”なのだと。
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