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■第1話『現実に戻る朝と、握手会の当選報告』


■Scene:日常への帰還、忙しさの現実


楽しかった家族旅行から帰ってきた翌週、瞬は再び日常へと戻っていた。


午前8時半、デスクに腰掛け、書類の山を前にコーヒーを一口。

旅行の余韻を噛み締める暇もなく、次々とかかってくる取引先からの電話。

「はい、佐伯です。納期については調整可能かと――」


メールも数十通溜まっており、社内チャットには報告確認が山ほど並んでいた。


(ああ……現実ってやつだな)

ふと、机の横に置いた金沢の金箔キーホルダーに視線を落とし、口元が緩む。



■Scene:休憩室にて、静かなるファン同士の交信


昼休憩、瞬が休憩室で缶コーヒーを片手にひと息ついていると、黒崎課長がすっと近づいてきた。


「おい、瞬……お前、もしかして握手会、当たったのか?」


「え、はい? ……って、課長も?」


黒崎課長は少し顔を赤らめながら、声を潜めて続けた。


「俺な、実は……ファンクラブ会員だ。綾瀬ほのかさんの。4年前からずっとな。今度の握手会……当選したんだよ」


「……僕も、実は当たりました」


「えっ!? マジか!」


まさかの“社内ファンクラブ会員同士”の偶然に、互いに思わず笑いが漏れる。


「しかも限定3000人だぞ? 数百万人の中から……まさに奇跡だよ」

黒崎課長は、懐から名刺サイズのアクリルスタンドをちらっと見せた。


「それ、今も持ち歩いてるんですか?」


「当然だろ。京都の舞台挨拶で買ったやつだぞ。白シャツに赤いバンダナで行ったあの日から、ずっと俺は……推し続けてる!」


瞬はうっすら汗をかきながら、苦笑いを浮かべた。

(ああ……バレないようにしなきゃ)



■Scene:帰宅後の報告、日常の中にある“非日常”


その夜、自宅。

子供たちが寝静まったあと、瞬はリビングでほのかと並んで座っていた。


「明後日の握手会、行ってくるよ。……課長も当たってた」


「ふふっ……課長さん、あの京都のときの……赤バンダナの方?」


「うん、今でも大切に持ってるって」


「嬉しいなぁ……覚えてるよ。あのとき、すごく大きな声で“最高でした!”って叫んでくれてたもん」


ほのかは優しく笑いながら、瞬の肩に頭をもたれかけた。


「……じゃあ、あなたも、ちゃんと“ファン”として来てね」


「何か話したほうがいい?」


「ふふ、いいの。話すことがなくても、また耳元で囁いてあげる。……家に帰ったら、唇に“ご褒美”も忘れずにね」


頬を赤く染める瞬に、ほのかはイタズラっぽく微笑んだ。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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