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■第9話『家族で歩く初めての旅路 ― 富山と金沢、秘密の微笑みと海鮮の記憶』



■Scene:出発前夜の約束


瞬は会社の社長に電話を入れた。

「社長、実は――家族旅行に行こうと思ってまして。これまでまともに休みも取れなかったので、有給を活用して4泊5日の旅行を計画しています」

社長は少し驚きながらも笑って応えた。

「バレないように、だな。…分かった。黒崎課長にも伝えておこう」


その後、黒崎課長にも同じ内容を報告すると、彼も苦笑しながら「また写真撮られるなよ…頼むぞ、瞬」と念を押された。


■Scene:東京駅から富山へ


新幹線の朝、東京駅。

変装したほのかと、マスク姿の瞬。4人の子供たちも手を繋ぎながら歩く。

6人の家族はスターバックスに入り、静かにテーブルへ座った。


瞬は飲み物を注文し、子供たちの分もテーブルへ運ぶ。

女子高生二人組が視線を送っていたが「似てるけど…違うよね」とすぐに去っていった。


構内では女子大生のひとりがほのかに目を留めたが、スマホを取り出すのを躊躇い、そっと視線を逸らした。


■Scene:富山・家族と歩く風景


富山に到着した家族は、有名な観光地を巡る。

立山黒部アルペンルートの雪の壁にはしゃぐ子供たち。

瞬は「いいな…子供の頃こんな所来たことなかったな」と呟いた。


夜はビジネスホテルに泊まった。フロントの記帳は瞬が行う。

ほのかの名前は伏せ、家族旅行であると控えめに記す。


■Scene:金沢・鼓門と市場と、少しの緊張


翌朝、北陸新幹線で金沢へ。


金沢駅で鼓門をバックに記念写真。近江町市場では「山さん寿司」の行列に並び、のどぐろの握りと豪華海鮮丼を堪能する。

歩いている最中、すれ違った女子大生二人が振り返る素振りを見せるが、「まさか…本人じゃないよね」とそのまま通り過ぎた。


■Scene:菓舗Kazu Nakashimaでの小さな奇跡


ひがし茶屋街の人気店「Kazu Nakashima」で、ついに店員の一人に変装を見破られる。

「…あの、もしかして…」


ほのかは苦笑いしながら変装を外し、「プライベートなので、SNSには載せないでいただけますか?」と頭を下げた。


その店員は快く了承し、記念に暖簾の前で写真を一枚。

「応援してます、ずっと」と囁いた。


■Scene:金沢の宿での交流


金沢の旅館でも瞬が記帳。若女将にだけほのかの正体が伝わった。

「他の方には…」という願いに、若女将は笑顔で頷いた。


夕飯時、個室で若女将が膳を運びながら、和やかに会話を交わす。

「ご家族でこうして過ごせるって素敵ですね」と語ったその言葉に、ほのかは少しだけ目を潤ませた。



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