■第8話『祝賀会と、一人ひとりへのありがとう』
■Scene:両親の家、四人の子どもを預ける朝
土曜日の朝。
スーツに身を包んだ瞬は、ほのかと一緒に双子と小学生の2人を連れて、両親の家へ向かっていた。
「おじいちゃん!」「おばあちゃん!」
陽翔と紬が元気よく駆け出すと、奏と蒼も後に続いた。
「急にごめんなさい、今日だけお願いできますか?」
ほのかが深く頭を下げると、瞬の母はにこやかに頷いた。
「なに言ってるの、可愛い孫たちなんだから。……でも、行く先が“祝賀会”ってのがねえ、気が気じゃないけど」
瞬の父も一言、冗談めかして口を開く。
「一応、車で送り迎えしようか?記者対策だ」
「……そこは、万全にしてあるから大丈夫」
軽く頷いて、二人は子どもたちに手を振った。
「じゃあ、行ってくるね」
「いってらっしゃい!」×4
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■Scene:祝賀会会場、開幕前の静寂と熱気
都内のホテルの一室。
華やかなシャンデリアの下、社内スタッフたちが緊張と興奮の面持ちで集まり始めていた。
「やばい、本当に綾瀬ほのかさん来るんだよな……」
「写真、撮れるのかな」「サイン、お願いしたら失礼かな……」
黒崎課長も落ち着かない様子で、瞬の隣でネクタイを締め直していた。
「佐伯……なんつーかさ、マジで……羨ましいぞ……」
「え?」
「いや、何でもない。仕事仕事」
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■Scene:ほのかの入場、会場が一変する
パーティーが始まって間もなく。
スラリとしたドレス姿の女性が、エントランスから現れる。
「――綾瀬、ほのかさんです!」
司会者の声に会場が沸き、カメラのシャッター音と拍手が重なった。
瞬は目を伏せ、黒崎課長たちと少し距離を取って立っていた。
“夫”としてではなく、“社員”として。
ほのかは壇上に上がると、穏やかにマイクを取った。
「皆さん、今日はありがとうございます。……たくさんの方がこのCMを愛してくれたこと、本当に嬉しく思っています」
その声と言葉に、社員の誰もが息を呑んでいた。
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■Scene:個別の対応と、ささやかな交流
パーティーの中盤。
ほのかは一人ひとりの社員に丁寧に頭を下げ、握手を交わし、希望があればサインにも応じていた。
「ほのかさん、本当に応援してます!」
「このサイン、一生の宝にします!」
「まさか本人に会える日が来るなんて……!」
瞬はその光景を遠くから見守っていたが、黒崎課長がそっと近づいてきて、ぽつりと漏らす。
「……なあ、佐伯」
「はい」
「ほのかさんが奥さんって、ほんと……最高だな。……あ、言っちゃだめだよな、ごめんごめん」
苦笑しながら肩をすくめた黒崎に、瞬も小さく笑った。
「……内緒でお願いします」
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■Scene:別室での会話、社長と家族たちの交差
会の終盤。
社長が別室に現れ、ほのかに丁寧に頭を下げた。
「おかげで……夢のような反響でした。全国から、問い合わせが鳴り止まなくて」
「恐縮です。でも、会社の皆さんが素敵だったからです」
そこへ、光と心音も静かに現れる。
社長は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに気付き、笑顔で頭を下げた。
「お二人がご家族だと……この間、撮影のときに気付きました。ほんとうに素敵なご縁ですね」
「……お義姉ちゃん、本当に頑張ってたよ」
「……俺の弟も、負けてませんよ」
それぞれの想いが交差する中、場はあたたかく和やかに――
だが、秘密はまだ“守られている”。
⸻
■Scene:帰り道、夜のタクシーで
祝賀会を終えて、タクシーで帰路についた2人。
「おつかれさま」
「……ありがとう。すっごく緊張した」
「綺麗だったよ、今日のほのか」
「……ほんと?照れる……」
しばしの沈黙のあと、ほのかがぽつりと口を開いた。
「……やっぱり、少し怖かったよ。どこまで秘密にできるか、自信なくなるときがある」
「でも、俺は信じてる。大丈夫、家族は守るから」
その言葉に、ほのかはそっと寄り添い、静かに囁いた。
「……ありがとう。あなたが“夫”で、本当に良かった」
タクシーの中、ふたりの手は優しく重なった。
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