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■第7話『祝賀会の前触れと、“綾瀬ほのかの正体”を狙う週刊誌』


■Scene:朝の通勤路、社屋近くの異変


小雨の降る平日の朝。

瞬は傘を差しながら会社へ向かっていたが、ふと視線の先に見覚えのない黒いワゴンが停まっていることに気づく。


「……あれ、あんなとこに、車なんてあったっけ?」


助手席にはカメラを構える男。もう一人はスマートフォンで何かを撮影していた。

瞬の足が止まりかけたそのとき、背後から声をかけられる。


「佐伯くん、どうしたの?雨宿り?」

黒崎課長だった。


「いえ……なんか気になって」

「ま、気にするなよ。最近この辺、CM効果で話題らしいし、ほら、ほのかさんのアレで」


黒崎課長は何気なく笑っているが、瞬の中では警鐘が鳴っていた。

――もしかして、狙われてる? いや、まだ証拠はない。



■Scene:自宅のリビング、静かな対話


夜。

子供たちを寝かしつけた後、ほのかと瞬はダイニングテーブルを挟んで、夕食の片付けをしながら会話していた。


「……ねえ、外に記者っぽいの、いたよ」

「やっぱり。マネージャーからも連絡来た。“撮られてる可能性があるから注意して”って」


ほのかはスマホをいじりながら、平然とした表情で言った。


「私、来週のイベント出るけど……距離、取る?」

「……うん。会場じゃ、他人ってことにしよう」


一瞬の沈黙。


「それって、つらくない?」

「……つらいよ。でも、ほのかが女優を続けたいっていうなら、俺が耐えるよ」


ほのかの手が瞬の手の上にそっと重なる。


「……ありがとう。私ね、何があっても、あなたと子供たちだけは守りたいの」



■Scene:社内、祝賀会前の空気とささやかれる噂


数日後、CM効果で会社には想定を超える反響が続いていた。


「社長、祝賀会ってほんとにやるんですか?」

「やる。彼女が来るなら、もう社史に残る日になるだろうな……!」


一部の社員たちはどこか浮足立っていた。

それもそのはず――『あの綾瀬ほのかが来社する』という事実が、内々に知れ渡り始めていたからだ。


そんな中、社員たちの間ではこんな噂が交わされていた。


「ねえねえ、あの“綾瀬ほのか”ってさ、なんでうちのCM出てくれたんだろ?」

「まさか社員に親戚とか……?」

「でも噂じゃ、社内に“彼氏がいる”って話もあってさ……!」


瞬はコピー室の隅で、その声を聞いていた。

――知られてはいけない。でも、隠し通すのも限界かもしれない。



■Scene:祝賀会の招待状と、揺れる覚悟


その夜。

ほのかは正式に、祝賀会の“特別ゲスト”として会社から招待を受ける。


「……ほのか、出る?」

「うん。私はあなたの会社に少しでも恩返ししたい。だから、行く」


「記者が来るかも」

「いいの。それでも行く」


強い意志を湛えた瞳で、ほのかは静かに微笑んだ。



■Scene:SNSの炎と、その向こう側


翌日。

“某企業にあの女優が!?” “祝賀会に綾瀬ほのか出席決定か!?”

SNSはにわかに騒がしくなりはじめていた。


瞬のスマホにも、心音や光からメッセージが届く。


《心音:お義姉ちゃん、大丈夫?》

《光:おまえ、気を張れよ。家族バレたら、終わりだぞ》


その夜。

瞬はほのかの隣で、ぽつりと呟いた。


「……家族であること、いつか言える日が来るのかな」

「来るよ。今じゃないだけ。私は信じてる」


瞬は頷き、ほのかの肩をそっと抱き寄せた。

目を閉じ、思った。


――今、守るべきものは名誉でも夢でもなく、

たった一つの、かけがえのない“日常”だ。



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