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■第5話『600万のボーナスと、家族の誇り』


■Scene:新年度と、封筒の中の驚き


春の陽気が漂う4月のある日。

新年度初日の出社日。瞬は会社のエントランスをくぐると、ロビーでざわつく新入社員たちの姿を目にした。


「今年の新入社員、多くない……?」

「え、聞いてないの?三百人だってさ、応募すごかったらしいよ。ほら、例のCM効果!」


そんな声を背中に聞きながら、瞬はエレベーターに乗り込んだ。

自分の妻が出演したCMが、会社の躍進を後押しした実感が、じわりと胸に広がる。


昼前、総務部から封筒が手渡された。


「真面目に頑張ってくれてたからな。開けてみ?」


デスクに戻って封を開けると、目に飛び込んできたのは――

【特別賞与:600万円】


「……!」


思わず息をのんだ瞬。

思い返せば、この一年は怒涛だった。

CMの裏で調整や立ち回りを行いながら、通常業務にも手を抜かず、家庭でも子育てと仕事の両立に奮闘していた。


「最高年度優秀社員」――その文字が、ボーナス明細の欄に光っていた。



■Scene:家族と、伝えたい言葉


夜。リビングではいつものように、子どもたちが宿題を広げ、ほのかが隣で「漢字ドリル見せて」と微笑んでいた。


瞬はキッチンから水を飲みながら、封筒をポケットに入れたまま彼女を見つめる。


「……ほのか。今日、会社で賞与が出た」


「えっ?もう?珍しいね、早いね」


「それが、思った以上に……出た」


「どのくらい?」


「……600」


「……600?円?いや、まさか……」


瞬は封筒を出し、無言で彼女に差し出した。

中を見たほのかの目が、一瞬で見開かれた。


「……600万円!?え、ちょっと待って、それって……」


「最高優秀社員だってさ。CMの件も含めてらしい。新入社員も300人以上増えて、社長から『奥様によろしく』って」


ほのかは目を潤ませながら、そっと瞬の手を握った。


「……あなたが、ちゃんと頑張ってたからだよ。私じゃない。あなたの力だよ」


「いや、お前の存在があったからだ」


そう言って、瞬は彼女の手にそっとキスを落とした。

子どもたちには見えないように、静かに。



■Scene:もう一つの“誇り”


数日後。瞬は出社前、スマホを見ながらネクタイを締めていた。


「ねぇ瞬」


「ん?」


「……その600万円、何に使いたい?」


「……前から言ってた、家族での旅行。そろそろ本当に行こうか」


「うんっ!」


後ろから彼に抱きついたほのかが、嬉しそうに笑った。


「でも、こっそり行かないと。誰にもバレずに、家族の時間を楽しもうね」


「任せて。俺、極秘のプロだから」


冗談めかして言う瞬に、ほのかが声を殺して笑う。


家族でしか共有できない“秘密”。

それは、どんな勲章よりも、瞬にとって誇らしいものだった。



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