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■第4話『全国放送、知られざるCMの裏側で――』


■Scene:静かに届いた、全国ネットの衝撃


日曜の朝。

リビングでテレビをつけた瞬、ふと手を止める。


「……ん?」


画面に映ったのは、先日撮影されたばかりのCM。

まさか、もう放送が始まっていたとは思わず、瞬は目を見開く。


スーツ姿の自分。

その隣に微笑む、国民的女優――綾瀬ほのか。


画面の中では自然に演じていたのに、改めて見るととんでもない光景に見える。

テレビのリモコンを握ったまま、瞬はしばし固まっていた。


そこへリビングに現れたのは、ツインテールの心音。


「えっ!?これ、兄貴……と、ほのかお義姉様……!?」


「あ……うん。流れた、みたい……全国放送で」


心音はスマホを手に取り、秒でSNSをチェック。

案の定、XやInstagramでは「綾瀬ほのかのCM」についてトレンド入りしていた。



■Scene:会社が、ざわつく


翌朝の出社。

瞬が会社に入ると、いつもと空気が違った。


「おはようございます……」

「……あっ、瞬くん!! 昨日テレビ見たよ! すごいじゃん!」


「綾瀬ほのかさんと共演って……マジで!?どういう関係なの!?」

「ってか、彼女を起用できた我が社って、何者……!?」


次から次へと飛んでくる社員たちの声。

廊下ですれ違うだけでざわつかれ、エレベーターでは小声の会話が止まない。


ただ、瞬自身は表情一つ崩さず、落ち着いた声で応じる。


「僕はただの社員ですよ。彼女は企業の広告モデルとして契約してるだけですから」


表向きの立場を貫くのが、暗黙のルールだった。



■Scene:一本の電話


昼休み。

社長室から、瞬に内線がかかってきた。


「……社長から? ええ、すぐ伺います」


――数分後、重厚なドアをノックする瞬。


「失礼します」


中にいたのは社長と、CMプロジェクトの担当役員。


「瞬くん、昨日の放送……見たかね?」


「はい、思った以上に反響が大きくて驚いています」


社長は苦笑しながら、手元の資料を見せた。

全国からの問い合わせ、提携希望、株主からの評価の声――すべてが好意的だった。


「実はさ、彼女――綾瀬ほのかさんに、直接御礼を言いたいと思ってね。少し、電話を代わってくれないか?」


「……かしこまりました」


瞬は一礼し、スマホを取り出す。

LINE通話を選び、ほのかにかける。


「もしもし、俺。社長がね……直接、ありがとうって言いたいって」


「うん、分かった。代わるね」


スマホを社長に渡すと、彼は丁寧に話し始めた。


「綾瀬さん、この度は本当にありがとうございました。おかげで会社の知名度が一気に上がりましてね……」


「いえ、とんでもないです。皆さんが良い現場を作ってくださったおかげですから」


電話の声越しにも、穏やかで礼儀正しいほのかの対応が伝わってきた。


「実はね……来月、社内で祝賀会を予定してまして。よろしければ、綾瀬さんにもご出席いただけませんか?」


「……ありがたいお誘いですが、私があまりにも関係を近づけすぎると……主人の立場に影響が出るかと」


「なるほど……それでは、こちらからは“距離感”をしっかり守ります。どうぞご検討ください」


通話を終え、スマホを瞬に返す社長。


「――ほんと、良い奥さんだな。改めて、君のことが羨ましいよ」


瞬は少し照れながらも、背筋を伸ばした。


「ありがとうございます。ですが、あくまでも僕は“ただの社員”ですから」



■Scene:静かな帰宅


その夜。

ほのかは帰宅後、何も言わずにリビングに座っていた。


「……祝賀会、招待されたよ」


「うん、聞いた」


「どうする?」


「……行かない。あなたが“普通”でいられるようにしたいから」


その言葉に、瞬はほのかの隣に座り、そっと手を握った。


「……ありがとう」


ふたりは言葉少なに、手の温もりだけで想いを伝え合った。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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