■第1話 『CMに、あなたと“私”を――』
■Scene:事務所応接室・夕方
午後6時を回った頃、綾瀬ほのかは事務所の一室で、社長と静かに向き合っていた。
そこに並ぶのは、撮影台本ではなく、一枚の資料。
「……夫の会社が、来期のCMを作るそうで。
“家族”がテーマで、私に出演のオファーが来ています。正式な依頼ではないですが……受けられる可能性は、あるでしょうか?」
社長は顎に手を添えてしばらく考えた後、表情を崩した。
「君の旦那さん、佐伯くんだったよね。あの子なら、何があっても君を守るだろう。
OKだ。……ただし、スタッフの顔ぶれや企画内容は事前に確認させてもらうよ」
「はいっ、ありがとうございます!」
頭を下げるほのかの瞳に、静かだが強い決意が宿っていた。
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■Scene:夜・自宅マンション リビング
その夜。
子どもたちが寝静まったあと、ソファで脚を抱えて待っていた佐伯瞬の元に、ほのかが帰ってきた。
「……ただいま」
「おかえり。遅かったね、ドラマ撮影?」
「うん。でも、今日ちょっと嬉しい報告があるの」
ほのかはカバンを置いて、瞬の隣にちょこんと座ると、スッと手を取った。
「CM、OKもらえたよ。社長から正式に」
瞬は驚いたように目を丸くし――
「ほんとに? ……ありがとう。無理させたらいけないと思ってたけど……」
「無理じゃないよ。むしろ……“あなたと一緒に家族を描ける”って思ったら、なんだか楽しみになってきたの」
瞬は思わず、彼女の手をぎゅっと握った。
「ありがとう。俺も、すごく嬉しい」
「……じゃあ、一緒にやろうか。今度は、“仕事”でも、夫婦で」
ふたりの間に、言葉では語れない静かな絆が流れる。
そのあと、軽くキスを交わし――
ほのかは「今日は早く寝ようか」と言って笑った。
⸻
■Scene:深夜・寝室の扉の前
子どもたちの寝息が聞こえる隣の部屋を確認した後、
瞬はふと寝室の扉を見つめた。
これから、夫婦として、家族として、
仕事で共演するという新しい扉が開こうとしている――
扉の向こうで待つほのかに、静かに「おやすみ」と声をかけた。
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