■第3話 『妹と兄、そして義姉――心音の怒りと、光の見守り』
「あのキス……絶対、演技じゃなかったよね……?」
佐伯心音は、控室のソファに深く沈みながら、
頭を抱えるようにしてうなだれていた。
モニター越しに見た、
兄と義姉の“あまりに濃厚なキス”。
それは演技とは思えないほど、甘くて、熱くて――リアルだった。
隣にいた光が静かに苦笑する。
「まあ、瞬も大人になったってことだよ」
「違うっ、そういう問題じゃない!
あんなの、ただの“公然イチャつき”でしょ⁉」
「お前……それ、完全に“嫉妬”入ってるよな?」
「ちが……う、けど……」
心音は唇を噛み、思わず立ち上がる。
⸻
■Scene:撮影終わりの控室にて
瞬が着替えを終え、控室のドアを開けたとき――
そこには腕を組んで立つ妹の姿。
「お疲れ様、兄貴。……で、ちょっといい?」
「え……う、うん……」
心音は無言で兄の胸倉を掴むと、耳元でぼそっと言った。
「義姉様の“あの唇”に、テレビの前で何してんのよ、この変態兄貴」
「っ……ち、ちがっ……演出、演出だから……」
「演出であんなに深くキスする人、他にいないわよ。
こっちが恥ずかしくなったんだから、責任取りなさいよ……っ」
「どう責任取ればいいの……」
「私の前で、二度とあんなキスすんな!」
怒っているのか、照れているのか――
兄としては、判断がつかない。
⸻
■Scene:光との会話
その日の夜、瞬は兄・光と2人だけでバーに寄った。
「……正直、驚いたよ。あんなに堂々と、キスするとはな」
「だって……相手が、ほのかだし。
あそこだけは、ちゃんと“伝えたくて”」
「“演技”じゃなくて、“気持ち”を、ってか?」
「うん。俺、まだ新人だけど――
このドラマで、女優・綾瀬ほのかの隣に立ちたいって、本気で思ってる」
「……あいつも、お前のこと本気で見てる。
なら、いい芝居見せてやれよ。
“夫婦”ってバレなきゃ、どんなキスだって“演技”さ」
瞬は少し照れくさそうに笑った。
⸻
■Scene:夜、ほのかとの帰宅後
家に戻ったほのかが、疲れた様子で瞬にもたれかかる。
「……心音ちゃん、怒ってた?」
「うん。かなり」
「そっか……でも、いいキスだったよ。
スクリーンじゃなくて、心にも残る感じだった」
「じゃあ……家では、もっと甘いやつ、しよっか」
リビングの灯りが落ちる頃――
ふたりの唇は再び重なり、
誰にも見せない、“愛する者”としての熱を交わす。
今夜だけは――カットもカメラもいらない、リアルな恋だった。
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