■第2話 『台本にない熱――そして、監督の驚愕』
ドラマ撮影が本格的に始まった初週。
リハーサルを経て、いよいよ――“本番”の日が来た。
第3話のクライマックス。
かつて別れた恋人たちが、長いすれ違いの末に、再び気持ちを通わせる。
そして、静かに、唇を重ねる。
それが、脚本に書かれた“キスシーン”だった。
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■Scene:撮影現場、クライマックスシーン
「カメラ、回します――本番、よーい……アクション!」
スタジオの空気が張り詰める。
瞬とほのかは、見つめ合う距離に立ち――互いに言葉を失う役柄を演じる。
「……好きだった、ずっと」
「私も……バカみたいに、忘れられなかった……」
そして、唇が触れた――その瞬間。
予定よりも数秒――いや、体感で言えば、ずっと長い。
そのキスは静かで、深くて、甘くて、熱い。
監督が「カット」と言いかけて、声を飲み込んだ。
音声スタッフはマイクを握りしめ、
照明スタッフは手を止めたまま。
その場にいた誰もが――息を呑んでいた。
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■Scene:モニター裏、見守る2人
モニター越しにそのシーンを見ていたのは、
佐伯光と、妹の佐伯心音。
光:「……やるな、弟」
心音:「ちょ、ちょっと!なにあれ……っ!
あれ、“演技”のキスじゃないよね⁉」
光:「まあ、リアリティを追求してるんだろ。
……いや、あれは追求しすぎだ」
心音:「なんで義姉様と、あんな濃厚な……っ!
この変態兄貴……!」
心音は思わず握っていた台本を折り曲げた。
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■Scene:カット後の控室
「……ごめん。つい、熱が入りすぎた」
「ううん、私も……ちょっと、止まれなかった」
控室に戻った瞬とほのか。
周囲からは驚きと賞賛の声が聞こえる。
「あのキス……本物にしか見えなかった」
「新人とは思えない……あの目線、あの手の添え方」
「綾瀬さんも、あんな表情……見たことないかも」
瞬はふと、不安になる。
「やばかったかな、俺たち。バレない?」
「平気。だって、私たちは――“恋人役”なんだから」
そう言って、ほのかは指で唇をなぞった。
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■Scene:ネットニュースがざわつく
《綾瀬ほのか、新人俳優と本気のキス!?》
《ドラマ現場での“本物感”が話題に》
《照明も音声も沈黙するほどの熱演――“噂”再燃か?》
SNSはわずかに騒ぎ始めた。
だが、誰も真相にはたどり着かない。
なぜなら――“夫”だなんて、誰も思っていないから。
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■Scene:夜、寝室で
「今日はすごかったね……俺、ちょっと震えてた」
「ふふ……でも、本番であなたが私の唇を奪うのって、なんか新鮮だった」
「じゃあ……次は、夫として――奪っていい?」
そう言って、ほのかの腰を抱き寄せる。
2人の唇が再び触れる。
今度はカメラも、照明もない――
本物の夫婦としての、
誰にも見せない、濃厚で甘いキスだった。
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