■第1話 『運命のキャスティング ――スクリーンの中で、再び“恋人”に』
春の終わり。
新たなドラマ企画が制作発表された。
主演は――国民的女優・綾瀬ほのか。
そして驚くべきことに、その相手役に抜擢されたのは、
まだ芸能界では無名の“新人俳優”――佐伯瞬だった。
もちろん、キャスティングされた背景には「オーディション形式」という建前があった。
だがその裏には、佐伯光のひと声があった。
「演技指導も必要だが……彼は、あの役に“本物”を宿せる」
「だから――あえて“弟”を推す」
プロデューサーも、監督も一瞬驚いたが、
ほのかの「……私も、その方がいいと思います」という言葉で、決定は下された。
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■Scene:リハーサル室にて
「よろしくお願いします」
深く頭を下げる瞬の声に、スタッフたちは好意的に受け入れる。
ただ、当然ながら――誰も彼が「ほのかの夫」だとは知らない。
ドラマの設定は、「かつての恋人同士が再会し、再び惹かれていく純愛劇」。
ほのかと瞬は、台本の読み合わせ中も“自然すぎる空気感”で、スタッフ陣を驚かせた。
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■Scene:控室にて
休憩中、瞬がふと口にした。
「……ほのかさん。こうして一緒に芝居するの、初めてだけど……変な感じしないね」
「そう? 私はちょっとドキドキしてるよ。だって、あなたが“私の恋人役”なんだもの」
「……夫なんだけどね、本当は」
ほのかはくすっと笑ったあと、そっと手を握る。
「今日だけは、恋人役。だから……仕事中に“甘えないで”ね?」
「はい、了解……“恋人役”さん」
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■Scene:制作発表記者会見
数日後。ドラマの制作発表が行われた。
記者:「綾瀬さん、今回の佐伯瞬さんとの共演、どう思われましたか?」
ほのか:「……彼とは、以前から“信頼できる存在”でした。
彼が光さんの弟であり、心音ちゃんのお兄さんであることも、私はよく知っています」
記者:「あっ……そうなんですね!?」
ほのかは、それ以上語らず、にっこり微笑んだだけだった。
記者たちはざわついたが、そこに「夫」というワードは出てこなかった。
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■Scene:夜、自宅の寝室で
撮影初日を終えた夜。
リビングで並んで夕食を終えた後、
2人はいつものようにベッドの上で静かに並んでいた。
「今日の記者会見……ヒヤヒヤした?」
「うん。でも、うまくかわしてた。
“信頼してる存在”って……あれ、ずるい」
「なにが?」
「だって、夫としては……ちょっと照れるじゃん」
そんな瞬の言葉に、ほのかは身体を寄せてきた。
「じゃあ……“夫”として、今日の私にご褒美ちょうだい?」
唇が触れ合った瞬間――
それは、仕事も現実も越えた、
ただの夫婦としての、愛のキスだった。
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