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■第4話 『心音、秘密に気づく』


春休みのある日、佐伯瞬は久しぶりに実家に帰省していた。

といっても、ひとりではない。


「……誰かに見られないかな」

マスクと帽子に大きめのサングラスという、まるで変装芸能人そのままの姿で、彼の隣には**“妻”――綾瀬ほのか**がいた。


「この時間帯なら、妹も出かけてるし大丈夫。父さんも夜勤で家にいないはず」


こっそり裏口から入ると、瞬の実家は変わらず静かだった。

こぢんまりとしたリビング、祖母から譲り受けた和箪笥、壁に貼られた家族写真――

どこにでもある、普通の家庭。そこに“国民的女優”が立っているのは、どうにも現実味がなかった。


「うわ、なんか落ち着く。こういう家で育ちたかったなぁ」

そう言って、すっぴんのまま、ほのかはリビングの座布団にぺたんと座る。


「お風呂、借りてもいい?」


「うん、タオルは俺の部屋の引き出しに入ってるから」


そうして、ほのかが風呂へ入り、瞬が寝室でバスタオルを探していた、そのとき。


「あれ? 兄貴、今日帰ってきてたんだ」


ドアが開き、制服姿の少女――**妹・佐伯心音(ここね/16)**が、予定外の帰宅を果たした。


「あっ、ちょ、まっ、心音!?」


「なに慌てて――えっ」

彼女の視線が、ベッドの上に落ちていたスマホ画面に吸い寄せられる。


そこには、バスタオル姿で、髪をアップにしたすっぴんの綾瀬ほのかが自撮りで微笑んでいる写真があった。


心音の時間が止まる。


そして、次の瞬間。


「……え? え? えぇぇぇぇぇぇぇえええええ!?」



数分後。

リビングには濡れ髪のほのかがバスローブ姿で現れ、

その場にいた心音は、椅子から崩れ落ちそうになっていた。


「うそ……ほんとに本人……え、推し……ここにいるの……?」


「初めまして、えっと、義姉です。たぶん」

ほのかは、にっこりと笑った。


心音は、その笑顔を真正面から見た途端、バッと立ち上がると、自分の部屋へと走っていった。


――そして5分後、両手いっぱいにグッズを抱えて戻ってくる。


「これ……全部、私が中学の頃から集めてたんです……!!」

瞬の目の前に並べられたのは、

•直筆サイン入り写真集(抽選で当てた)

•推しカラー(桜ピンク)のタオルとペンライト

•限定の等身大ポスター(未開封)

•公式ファンクラブ限定アクセサリー

•そして、兄には絶対に見せられなかった**“綾瀬ほのか専用棚”**の一部始終


「兄貴に知られたら絶対“オタク”とか言われると思って……隠してたのに……!

まさか……まさか……“その推しと兄が結婚してた”とか、どういう神様の気まぐれ……!」


心音は泣き笑いのまま、バンッとポスターを床に置き、

次の瞬間、ほのかに向かって――


「お義姉様っ……!!」


全力で抱きついた。



「私、ずっと応援してたんですっ……!

インスタもストーリーも、YouTubeのオフ動画も、全部チェックしてて……!

まさか、兄が……兄がっ……!」


ほのかは戸惑いながらも、心音の背中を優しく抱き返した。


「ありがとう……そんなふうに言ってもらえて、本当に嬉しい」

その声に、心音は涙目で笑い、こう言った。


「兄貴の嫁が“推し”とか、もう一生マウント取れるんで……

今日から私、全力でこの結婚を応援しますっ……!」


瞬は唖然としたまま、二人のやりとりを眺めていた。


「……俺の立場、どこ?」


「空気」

「背景」

「脇役」

女性二人から同時にそう返され、瞬は思わずソファに沈み込んだ。



こうして――

佐伯心音は、兄の秘密を知った“最初の身内”となった。


しかしこのあと、

彼女の純粋すぎる推し愛が思わぬ暴走を引き起こすことになる。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


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