【特別編】 『兄が演じた“偽りの夫婦”――けれど私の唇が応えるのは、あなたの本物だけ』
――カメラの前で交わされたキスと、
カメラのない場所で交わされる愛。
どちらが本当か、もう知っている。
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あるドラマの撮影現場。
主演の夫婦役は――綾瀬ほのかと、佐伯光。
脚本には、明確に**“夫婦のキスシーン”**が描かれていた。
リハーサル中、光がほのかに近づき、こっそり小声で囁いた。
「……なあ、キスシーンの件、どうする? 本気でいくか?」
「それとも、“演技としての線”を、明確に引くか?」
ほのかは少しだけ微笑み、視線を外す。
「演技は演技。でも……観る人が“リアル”だと思えるように、私は演じるわ」
光は深く頷き、しかしどこか複雑な笑みを浮かべる。
「ま、瞬のやつが見たら嫉妬で胃を壊すだろうな」
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撮影終了後、夜。
その話を知った瞬は、家で子どもたちを寝かせたあと、どこか不機嫌な様子だった。
「キスシーン、見たよ」
「……うん。ちゃんと“仕事”として演じたよ」
「……でも、正直、胸がざわついた」
ほのかは瞬のそばに座り、そっと指先で彼の手をなぞる。
「じゃあ、“本物のキス”……欲しい?」
瞬が何かを言いかける前に、ほのかが立ち上がり、
「お風呂、入ろう?」と誘った。
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■Scene:風呂場にて
蒸気の立ち込める浴室。
湯船の中、向かい合って座る二人。
ほのかが、濡れた髪を手でまとめながら呟いた。
「光さんとのキス、ただの演技だった。
でも……あなたといるこの時間は、全部、本物」
瞬は彼女の腰に手を回し、
「……わかってる。でも、独占欲ってやつは、どうしようもなくてさ」
そう言って、そっと唇を重ねた。
湯気の中、
肌と肌が重なり、
熱と呼吸と鼓動が、ゆっくりと、しかし確実に溶け合っていく。
抱き合いながらの、深くて甘い、現実のキス――
演技ではない、ふたりの愛の証が静かに交わされていった。
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■Scene:ベッドルームにて
子どもたちが寝静まった夜更け。
風呂上がりの濡れた髪のまま、
バスローブ姿のほのかがベッドに横たわる。
瞬がそっと隣に滑り込み、言った。
「どんな役を演じても――
お前が最後に帰る場所が“ここ”である限り、俺は大丈夫だよ」
ほのかは、少しだけ恥ずかしそうに笑い、瞬の胸に顔を埋めた。
「帰る場所じゃないよ。“ここ”が、私の全部」
「だから、お願い――
演技なんかじゃない、
“あなたのキス”で、私の全部を溶かして」
瞬は優しく、けれど力強く――
もう一度、彼女の唇に長く、深く、熱く重なる。
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ベッドの中で交わされたのは、
誰の目にも触れない、誰にも真似できない、
“二人だけの真実”だった。
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■Special Epilogue:
カメラの前では“夫婦”を演じた光とほのか。
けれど、カメラのない場所で交わされた“唇の約束”は、
世界にひとつだけの本物。
そして、光が翌日のSNSで冗談めかして更新した一言――
「結局、あの二人には勝てない。俺は“名演技”だったけど、
弟は“本物の愛”で、毎晩キスしてるらしいから」
ファンの間では大反響となったが――
その真実を知る者は、誰一人として語らなかった。
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