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■第10話『この愛を、世界に紹介したい』


春。

佐伯瞬は大学の卒業式を迎えていた。


式典のあと、スーツ姿で記念撮影をする同級生たちに囲まれながらも、

心の奥では――家族への想いが強くなっていた。


(この4年間、普通の大学生活じゃなかった。

だけど、世界で一番“愛されていた”と思う)


ほのかは、双子たちの育児の合間を縫って、卒業式に駆けつけていた。

人前には出られないため、離れた場所からそっと見守る――

それが、“国民的女優”としての宿命だった。



夜。

都内の巨大シアターにて、ほのかの主演映画の世界公開記念舞台挨拶が行われた。


煌びやかなドレスに身を包み、ライトを浴びて登壇するほのか。

世界中のファン、報道陣、スタッフたちがその一挙手一投足に見入っていた。


司会者が最後にこう問いかける。


「世界中のファンがあなたの私生活に興味津々です。

“家族”について、何かコメントはありますか?」


少しだけ微笑んで――ほのかは答えた。


「私が人生で誰かを愛したとき、

それは“誰か”だからではなく、“その人だから”でした」


「その人と出会って、

その人と笑って、

その人と静かに手を取り合って――」


ほんのわずか、客席の端にいる“帽子姿の一人の男”に視線が向けられた。


瞬だった。


「……だから私が選んだ愛も、人生も、全部“演技じゃない”んです」


拍手が巻き起こる中、

ほのかはそれ以上の説明を加えることなく、

ただ深く一礼した。


(結婚していることは、今はまだ“秘密”のままでいい)

(けれどいつか、この愛を胸を張って“紹介”できる日が来たなら――)



帰宅後の夜。


子どもたちはすでに寝静まり、

卒業証書を抱えて帰ってきた瞬に、ほのかがそっと笑う。


「おかえり。おめでとう」


「……ありがとう。

ステージ、観てたよ。俺に言ってくれたんだろ?」


「ううん。言ってないよ。

でも、“君にだけ”届けばいいって、思ってた」


ほのかは優しく、瞬の胸元に顔をうずめる。


「これで……子どもは、もう十分かな。

私は、あなたがくれた“この家族”を守って生きていく」


瞬はほのかの髪にキスを落とし、静かに誓う。


「君が女優でいる限り、

俺はそのすべてを、“ただのファン”のように支えていくよ」


「それでも――私の隣にいるのは、

世界でたった一人、“あなただけ”だから」



春の夜風に包まれた静かな窓辺。

“秘密の結婚”のまま、世界中の誰にも見せない“最愛”が、そこにあった。


そして、佐伯瞬は翌日から――

新社会人としての第一歩を踏み出す。



■エピローグ:

綾瀬ほのか――国民的女優。

佐伯瞬――新社会人であり、4児の父。


それぞれの人生はこれからも続いていく。

けれど、二人だけの物語は、

“もう一つのステージ”へ――



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


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