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■第5話『交差する選択』


研修先のオフィスで、上司が声をかける。


「来週、いよいよ配属希望の提出日だ。

うちの会社では、“第一志望”がほぼ確定になることが多い。

よく考えて、書いてくれ」


その言葉に、瞬の背筋が少しだけ伸びた。


第一志望――

それは、未来をほぼ決定づける「人生の地図」。


瞬の頭の中には、複数の選択肢が浮かんでいた。


・総合職として都市部勤務、昇進の道は早いが転勤の可能性あり

・営業企画職、在宅も可能だが競争率が高く配属枠が少ない

・地域密着型部門、給与は少し下がるが勤務地は固定で育児に向いている


(どの道を選んでも、きっと“後悔”はある)

(でも、どの道を選んでも、“誰かを守る”と決めた時点で、逃げられない)



帰宅後、夜。


ほのかは台本の整理をしながら、静かに尋ねた。


「配属希望、もう決めた?」


瞬は黙って首を横に振った。


「まだ、迷ってる。

“自分に向いてるか”じゃなくて、“家族にとって最適か”を基準にしようとしてて……」


ほのかは手を止め、瞬の隣に座る。


「瞬、私がね――一番に望んでるのは、

“あなたが納得して選んだ未来”なの。

あなたが笑ってないと、子どもたちも不安になるから」


「……でも、ほのかは? 女優の仕事、地方に行くこともあるし……」


「そのときは、そのとき。私が合わせるよ。

家族って、どちらかが100%我慢する関係じゃないでしょ?」


彼女の言葉は、瞬の胸の奥をやさしく刺した。


(支えられてるのは、いつだって……俺の方だ)



後日。

瞬は、研修オフィスの会議室で、静かに“第一希望”の欄に記入する。


「地域密着型マーケティング部門」


勤務地は都内近郊、在宅可。

育児と両立しやすいが、昇進は遅くなるとされるポジション。


それでも――

「自分にとっての“正解”は、今ここにある」


その手は、震えていなかった。



帰宅して、玄関を開けると。


「パパー!」


双子が走って抱きついてきた。

続いて、エプロン姿のほのかが優しく迎えてくれた。


「おかえり。今日は……もう、決めたの?」


「うん。やっと、答えが出たよ」


彼は、家族の笑顔を見て思った。


(この未来に、後悔はない)



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