■第4話『ファンの前で“他人のふり”』
週末。
都内の大型映画館で行われたのは、綾瀬ほのか主演映画のプレミア上映会&舞台挨拶。
映画の世界観を再現した装飾、
客席にはファンの歓声が渦巻き、
ロビーには記念パネルやグッズの展示も並ぶ。
その中の一角。
帽子に眼鏡、マスクという“完全防備”で座っている若い男の姿――
それが、佐伯瞬だった。
隣には、ファッション雑誌から抜け出たような雰囲気の女子・佐伯心音。
「兄貴……マスクでも顔のニヤけ方が分かるよ」
「うるさいな……」
(こうして“ファンとして”観てるのも何度目だろう)
壇上のスポットライトが灯り、
登場した綾瀬ほのかが客席に向かって笑顔を向ける――
その瞬間、瞬は一瞬、息を呑んだ。
(……やっぱり、すごいな。君は)
数百人の視線を集めてもなお、堂々と輝く姿。
まるでスクリーンの中の女神のように、どこか遠い存在に見えてしまう。
心音が囁く。
「ねぇ……お義姉様、あの演技のあと、共演俳優さんと目を合わせて微笑んだよね。
……ちょっと、ドキドキしなかった?」
「……別に」
「顔、真っ赤だけど?」
「……っ」
⸻
舞台挨拶終了後。
出口ロビーで人混みに紛れながらも、
心音が兄をチラッと見る。
「嫉妬、してるでしょ?」
「……してないって言ったら嘘になる」
瞬は、観客として拍手しながらも、
壇上で男性俳優と自然に笑い合うほのかを見ていた自分を思い返していた。
(あれは“演技”だって分かってる。分かってるけど――)
(俺は、君の一番近くにいるはずなのに。
いま、世界で一番遠い場所にいるように思えた)
⸻
その夜、帰宅後。
家では双子がすでに眠り、ほのかは台所で洗い物をしていた。
後ろからそっと抱きしめる。
「……今日はすごく綺麗だった」
「ありがと。……でも、どうしたの?」
「いや……なんか、ちょっとだけ嫉妬したかも。
君の隣に立ってるのが、俺じゃなかったことに」
ほのかは手を止め、
少し驚いたように振り返る。
「……でも私、あのステージでも、ずっと“あなたの妻”だったよ」
「うん……知ってる。
分かってる。分かってるけど……」
瞬の言葉を遮るように、ほのかが静かにキスをした。
「じゃあ、“ちゃんと覚えて”もらおうかな。
このキスが、誰のものか――」
瞬が抱き返す。
今度は、舞台の光の中ではなく、
“二人きりの夜”に包まれて――
言葉より濃く、想いを伝えるキスが交わされた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。




