■第10話『そして、未来へ』
三月。
キャンパスの桜が、静かにほころび始めていた。
大学3年のすべての単位を取り終えた瞬は、
春から始まる「内定先企業のインターンシップ」に向けて、準備を進めていた。
パソコンに向かいながら、隣で寝転ぶ陽翔と紬の声に時折目を細める。
一方で、妻・ほのかは新ドラマの撮影で、連日現場と家を行き来していた。
互いに忙しい。けれど、互いを想い合う日々。
それが、彼ら夫婦の“ふつう”になっていた。
⸻
ある週末、家族で久しぶりの外出。
都内の広い公園でピクニックを楽しみながら、
心音がぽつりと口にした。
「来年、兄貴って……もう4年生なんだね」
「うん。最終学年だよ。早いもんだな」
「就職も決まってて、双子もいて……それってもう、完全に“大人”じゃん」
「……そうかな」
瞬は、缶のお茶を開けながら少し考える。
「たしかに、いろんな責任を背負うようになったけど……
でもやっぱり、俺はまだ“学んでる途中”なんだよ。
父親としても、夫としても、社会人としても、全部“初心者マーク”だ」
「……それでも、十分すごいと思う。
私、お義姉様も、兄貴も、ほんと尊敬してる」
そう言って笑った心音の表情は、以前より少し“大人びて”見えた。
⸻
帰宅後の夜。
瞬は、ほのかと子どもたちを寝かせたあと、
静かなリビングで一冊のノートを開いた。
それは、大学1年の頃に書き始めた“日記”だった。
そこには――
入学初日、初めて出会ったゼミの記憶。
ほのかとの“交際0日婚”のあの衝撃の日。
誰にも言えない秘密を抱えた日々。
すべてが、今の自分を作ってきた軌跡だった。
(大学4年……いよいよ、学生最後の年)
ページの余白に、こう記す。
「きっとまだ、俺は“途中”だけど。
でも、この道でよかったと、心から思ってる」
⸻
画面越しのテレビには、ほのかの最新ドラマの予告編が流れていた。
その傍らで、双子が夢の中で寝息を立てている。
“誰にも知られていないけど、たしかに存在している幸せ”
瞬は、それを見つめながら、静かに微笑んだ。
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