■第9話『答えの前の迷い』
秋。大学3年の終盤。
授業も減り、ゼミの研究も次第に個人作業へと移行していくなか、
瞬は毎日のように就活関連のイベントに参加しながら、自分の将来に向き合っていた。
企業の人事と面談し、OBの先輩から話を聞く。
そのすべてが、自分がこれまで「守るために」選んできた生活とは異なる空気を持っていた。
(俺、本当に――外の世界に出る準備、できてるのかな)
そんな思いが頭をよぎるたび、
瞬は、子どもたちの寝顔や、ほのかの後ろ姿を思い出していた。
⸻
ある日、家族で食事をした夜。
双子が寝静まり、心音も部屋に戻ったあと。
リビングで並んでソファに座っていた瞬は、
そっと深呼吸して、隣にいるほのかへ口を開いた。
「……俺、就職しようと思う」
ほのかは、驚いた顔をしながらもすぐに微笑んだ。
「そう。……そっか。決めたんだね」
「うん。
子どもたちの未来を考えたとき、“安定”っていう言葉に、正直かなり引っ張られた。
でも、それ以上に――“社会で誰かに必要とされたい”って思ったんだ」
「……私は、あなたがどんな選択をしても応援するよ。
主夫でも、院進でも、就職でも。
でも……今のあなたの顔、すごくいい顔してる」
瞬は、そっと頬を染めた。
⸻
後日、兄・佐伯ヒカルにも報告する。
カフェのテラス席で、軽く笑いながらヒカルは言った。
「へぇ、意外だな。俺はてっきり“在宅主夫”ルートかと」
「正直、最後まで迷ってたよ。でも、外に出てみたくなった」
「……いいじゃねぇか。“稼いで帰る男”ってのもなかなか悪くないぞ」
「兄貴こそ、“光の中”に生きてるのによく言うよ」
「はは、まぁな。でも、お前が“家族を養う顔”になってくのは……ちょっと感慨深いぜ」
缶コーヒーを片手に乾杯する二人。
その瞬間、
“ただの弟”だった少年が、“家族を背負う男”へと変わった気がした。
⸻
その夜、寝かしつけた紬がぽつりと尋ねてきた。
「パパ、おしごとするの?」
「ああ、そうだよ。お外でお仕事して、帰ってきたらいっぱい抱っこする」
「がんばってね、パパ」
その小さな声が、決意の背中をさらに押した。
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