表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/96

■第7話『初めての家庭教師』


大学の進路相談会で紹介された、近所の中学生の家庭教師アルバイト。

理系科目を中心に週2回。

瞬は、「育児との両立」に配慮してもらえる環境を整えたうえで、引き受けることにした。


生徒は中学3年生、澤村小春。

成績は平均以上だが、受験のプレッシャーで集中力が落ちているらしく、

「優しくて話しやすい男の先生を希望」とのことで、瞬に声がかかったのだった。



「じゃあ、この因数分解やってみようか」

「……うーん、たすきがけって苦手なんだよなぁ」


「図にしてみると、分かりやすいよ。

このXとYの関係って、まるで“夫婦のバランス”みたいなもんなんだよね」


「ふ、夫婦!?」

「冗談、冗談」


小春は笑いながら、ノートに数式を書き込んだ。


(教えるって、思ったより楽しいかもな)



1時間ほど経った頃、小春がふと鉛筆を止めて、瞬を見上げた。


「ねぇ先生ってさ、好きな人とかいるの?」


「えっ」


突然の質問に、瞬は鉛筆を持つ手がピクリと止まった。


「だって、なんか優しいし、ちょっとカッコいいし。

彼女とか……もしかして、結婚とかしてる?」


(うわ、どう答える……?)


――その瞬間、胸の中でふと浮かんだのは、

寝顔の子どもたちと、仕事帰りに笑って手を振るほのかの姿だった。


(……俺には“世界一大事な人”が、ちゃんといる)


だが、それをこの場所で明かすわけにはいかない。

秘密の夫婦、そして親――それは、家族で守ってきた“約束”だ。


瞬は柔らかく微笑んで、こう答えた。


「そうだね……“大切な人”は、いるよ。

でも、それを今ここで話すのはちょっと恥ずかしいかな」


小春は「えー! 気になる!」と笑って肩をすくめた。


「でもなんか……いいな。

“誰かのことを大切にしてる”人って、ちょっと素敵だと思う」


その一言に、瞬の心の奥が静かにあたたまった。


(ああ、こうやって……“教える側”になったからこそ、

“教えられること”もあるんだな)



帰り道。

空を見上げると、星が滲む春の夜空。


家に帰れば、双子の絵が冷蔵庫に貼ってあった。

「パパとママと、おひさま!」という可愛い字で。


その前で、ほのかがエプロン姿のまま、にこりと微笑んだ。


「おかえり、先生」


「……ただいま、生徒より人生教えられた気分だよ」


「ふふ、パパも“まだまだ学び中”だもんね」


二人で笑って、食卓についた夜。


瞬はそっとつぶやいた。


「――この場所を守るためなら、どんな道でも、進んでいけそうだ」



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ