■第5話『優先順位』
夜、大学のサークル仲間から届いたLINE。
「今日の飲み会、来れるよな?」
「教授の悪口大会やるぞw」
「瞬〜お前が来ないと面白くないんだからな〜」
瞬は、メッセージを見ながらしばらく迷っていた。
楽しそうな会話、気の置けない仲間たちの誘い――
だが彼の視線は、スマホから隣の部屋へと移った。
ソファに横たわる妻・ほのかは、今日の撮影で疲れ切り、
双子の寝かしつけの途中に、そのまま眠ってしまっていた。
子どもたちは、まだ完全に眠りについていない。
陽翔は絵本を開いたまま眠気と格闘し、紬は眠れなくて小さく鼻をすすっていた。
瞬は、スマホの返信欄に指を滑らせ、ひと言だけ入力した。
「ごめん、今日は無理そう。家のことがあって」
そしてスマホを伏せ、ゆっくりと立ち上がる。
⸻
子どもたちの部屋。
瞬は、陽翔の絵本をそっと取り上げ、
「じゃあ……今日は、パパが読んであげようか」と声をかける。
「ほんと?」
「うん。ママは今日は“ねむねむ星”に行っちゃったから、パパが代打」
「つむちゃんも聞く!」
3人で一冊の絵本を囲んで、
ゆっくりとページをめくる。
――おやすみ、あかいくつ。
おやすみ、まるいおつきさま。
おやすみ、きみのたいせつなこえ。
読み終える頃には、2人はすっかりまぶたを閉じていた。
(静かだ。まるで、この部屋だけ時間が止まったみたいだ)
瞬はそっと電気を消し、寝室を出る。
⸻
深夜、リビング。
まだ眠っているほのかの毛布を掛け直す。
小さく寝息を立てている彼女の頬に、触れそうで触れない距離。
(大学生って、ほんとはもっと自由だったのかもな)
でも――
(俺はこれで、よかったんだ。
この“優先順位”で、間違ってなかった)
静かな夜の中、瞬はキッチンに立ち、
次の日の朝食の下準備を始めた。
⸻
明け方、目を覚ましたほのかが、キッチンで動いている瞬を見つける。
「……何時まで起きてたの?」
「さっきまで。双子たち寝かしつけて、朝の準備してた」
「昨日は……サークルの飲み会、あったよね?」
「うん。でも、今日は俺が“夜の当番”って決めてたから」
「……ありがとう。
でも、無理しないで。あなたにも、若者としての時間が必要よ」
「ううん。
俺にとっては、今ここにいる時間が“いちばん若くて熱い時間”なんだよ」
そう言って笑う瞬に、ほのかは少し涙ぐんで言った。
「……やっぱり私、世界一幸せな奥さんかもしれない」
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