■第10話『世界で一番しあわせな秘密』
「それにしても、まさか兄貴までSNSで火消しに走るとは……」
スマホを片手に、瞬は苦笑していた。
画面には、兄・佐伯ヒカルの公式アカウントによる最新の投稿が載っている。
【お騒がせしました】
本日、ある知人のご家族に頼まれて病院へ行っただけです。
相手は芸能人でもなく、プライベートな事情のため詳細は控えます。
これ以上の憶測で関係者を困らせないよう、どうかご配慮を。
淡々とした文章ながら、兄らしい冷静さと気遣いがにじむ一文だった。
「……ヒカルさん、やっぱり優しいよね」
ベッドの上でほのかが呟いた。
「うん。たまに怖いけど、実はすごく人思いで、真っ直ぐな人なんだ」
「どこか、あなたに似てるね」
「え、俺そんなかっこいいか?」
「ううん、“かっこよくなっていく途中”って感じ」
ほのかはふわりと笑った。
その笑顔が――今にも泣きそうな不安を吹き飛ばしてくれる。
⸻
深夜。
陣痛の間隔が短くなり、ついに出産の準備が始まる。
看護師に付き添われて分娩室へと移動するそのとき、
ほのかは瞬の手をぎゅっと握った。
「……怖いよ。
でも、君の顔を見てると、ちょっとだけ、強くなれる気がする」
瞬も同じように手を握り返す。
「俺も、ただ見てるしかできないけど……
それでも、ずっと君の“そば”にいる。
――だって、君は俺の奥さんだから」
「うん……ありがとう」
そして扉が閉まり――
⸻
午前3時21分。
最初の産声が、病室の静寂を破るように響いた。
「おめでとうございます。
男の子です――元気ですよ」
瞬が涙を浮かべながら、その小さな命を見つめる。
3分後。
再び、産声。
「続いて、女の子です。双子ともに、無事です!」
⸻
朝。
新生児室のガラス越しに並ぶ、ふたつの小さな命。
ほのかは病室のベッドから、静かに窓の向こうを見つめていた。
「……まだ信じられない。
あの中に、私たちの“こども”がいるんだって」
「うん。
きっと君に似て、綺麗で、優しくなる」
「そしてあなたに似て、まっすぐで、泣き虫になるかもね」
ふたりは笑い合い――
その手は、すでに“家族”として、つながっていた。
⸻
その日の夜。
家族だけの小さな部屋で、
ふたりは双子に名前をつけた。
「男の子は……“陽翔”。
太陽みたいに、まっすぐで優しい子になってほしい」
「女の子は……“紬”。
いろんな想いを織りあげて、生きていけるように」
泣き声が重なる中で、
ふたりの“家族の歴史”が始まった。
⸻
しばらくして、心音からまたメッセージが届く。
『お義姉様、双子出産おめでとうございます!
陽翔くんに紬ちゃん……どちらも最高に推せる名前です!!!
兄は変態だけど、お姉様が奥さんでよかった……
ていうか私もう“叔母さん”か……推しの義妹でもあり叔母……混乱(幸せ)』
瞬は吹き出して、
そして、隣で眠るほのかと、
その腕の中にいる小さな命に、そっとキスを落とした。
「……これが、“世界で一番しあわせな秘密”なんだろうな
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