表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/96

■第8話『未来のふたりを、いま抱きしめてる』


朝、ほのかはいつもより早く目覚めた。


まぶたが重い。

けれど、身体のだるさはそれだけじゃない。

目覚めと同時に、胃の奥が波打つような違和感――


そして、数秒後。


バスルームの扉が閉まる音。

吐き気に襲われた彼女は、静かに膝を抱えた。



大学では、瞬が朝一の講義を終え、友人と食堂へ向かっていた。


「お前、最近元気ねーな? 目の下、クマできてんじゃん」


「寝不足かな。夜、いろいろあってさ……」


「いろいろ? ほう、夜に“いろいろ”とな?」


「やめろ。そーいう意味じゃ……って、否定はやめとこ」


「うわっ、マジかよ!?」


そんなくだらないやり取りも、

家に戻った瞬には、すぐ忘れてしまった。


なぜなら――

玄関にいたほのかが、まっすぐな顔で言ったのだ。


「瞬くん……私、病院、行ってきた」


「えっ……体調悪いの!?」


「……ううん、そうじゃなくて……」


彼女は少しだけ笑って、

白い紙袋の中から、母子手帳を取り出した。


「できたの。赤ちゃん。……双子、だって」


時間が止まったようだった。


瞬はその場に立ち尽くし、

言葉を探すように彼女を見つめた。


「……双子? 本当に?」


「うん。男の子と女の子、だって。

……私たち、親になるんだって」


その瞬間、彼は彼女を力強く抱きしめた。


「ありがとう。ありがとう……!

君が俺の奥さんで、本当に良かった……」


ほのかの肩が、ふるふると震えていた。

それは涙でもあったけれど――それ以上に、

“母になる実感”がこみ上げてきた証だった。



その夜、リビング。


ふたりは並んで座りながら、赤ちゃんの名前候補をノートに書き出していた。


「男の子は“陽翔はると”とか?」


「いいね。女の子は“心愛ここあ”……とか」


「ちょっとキラキラしすぎ?」


「じゃあ、“つむぎ”とかどう?」


「それ……いいかも」


テレビの音も、スマホの通知も止まっていた。

いまこの部屋には、“未来のふたり”だけが存在していた。



その後――


ほのかは所属事務所に、妊娠と活動休止を報告した。


「双子……なんですね」


「はい。しばらく、お休みをいただきたいと思います」


「もちろんです。お身体を第一に。

でも正直……羨ましいですよ。あなたのような女優でも、“愛されてる”って感じがします」


彼女は軽く笑って答えた。


「ええ、たしかに。

たぶん私、世界一幸せな“ママ”になります」



その夜、心音からLINEが届いた。


『え、え、ちょっと待って。

義姉様がママになるの⁉︎

てことは――私、おばさん……?

……いや、姪っ子に“義姉様の顔面”が受け継がれるとか、尊すぎて無理。

涙出る。今、泣いてる』


瞬はそのメッセージを見ながら、

吹き出しそうになりつつ、

隣で眠るほのかの手を、そっと握った。


(家族って、不思議だな)


たしかに恋から始まったふたりだけど――

もう今は、

未来を抱きしめて生きている。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ