■第8話 『瞬の決意と、記者への宣戦布告』
週刊誌《TOUCH!》の報道は、止まらなかった。
《国民的女優・綾瀬ほのか、熱愛発覚か!?》
《相手は年下男子・学生ファンとの“マンション通い愛”!?》
《地元密会、実家訪問も――極秘交際の全貌》
ネットニュースが出た瞬間から、SNSは大荒れだった。
熱愛相手として浮上した“謎の青年”の身元を特定しようと、匿名掲示板や探偵まがいのアカウントが動き始める。
“佐伯瞬”という名前が出るのも、時間の問題だった。
⸻
ある夜、瞬は意を決して、ある場所に向かっていた。
小さなカフェ。
指定された席には、週刊誌の若手記者・川本が待っていた。
「……来てくれたんですね。素直に驚きましたよ、佐伯さん」
記者は笑みを浮かべるが、目は一切笑っていない。
「結婚……してるんですよね?」
瞬は、テーブルの上で拳を握った。
「してません」
静かに、しかしはっきりと答える。
「え?」
「彼女を助けたのは事実です。
でも、それ以上の関係じゃない。
俺は、ずっと“ファン”として、彼女を応援してきた。
それだけです。彼女は芸能人として、正しく振る舞っています」
記者があからさまに眉をひそめた。
「でも、写真には明らかに“親密すぎる距離”が映ってる。
あなたの実家前にも現れてますよね?
どう説明する気です?」
瞬は一瞬、呼吸を整える。
「命を助けたお礼に、家まで挨拶に来てくれただけです。
……俺の家族が、彼女のファンで。興奮して……つい、ご飯を出しちゃっただけです」
「……あなた、それを本気で言ってるのか?」
「はい。俺は、彼女に迷惑をかけたくないんです。
たとえどんな関係だったとしても、芸能人としてのキャリアを台無しにするような見出しには、させたくない」
その言葉に、記者の手が止まった。
「――あなた、彼女のことが本当に好きなんですね」
「はい。ずっと“ファン”として、好きでした。
……今も変わらず、ただのファンです。彼女を応援しています。それ以上は、ありません」
川本はしばらく黙り込んでいたが、やがて席を立った。
「……わかりました。
彼女のイメージを下げる記事には、しません。
でも、世間は見ています。
ほんの小さなほころびが、全部バレるんですよ。……くれぐれも、気をつけてください」
⸻
記者が去ったあと、瞬はしばらく席に座ったまま、コーヒーを見つめていた。
誰に責められなくても、自分が“嘘”をついたことだけは、胸に重くのしかかっていた。
それでも――守りたかった。
「ほのかさんの未来を、俺のせいで壊すわけにはいかない」
そう心に誓った。
⸻
その夜、マンションに戻ると、ほのかが待っていた。
ニュースを見て、何があったのか察していたのだろう。
「……行ったの?」
「うん」
「なんて、言ったの?」
瞬はしばらく口を開かなかった。
そして、小さく微笑んだ。
「“ファンです”って」
ほのかの目が潤んだ。
「――ありがとう」
「でも、そんなの、悲しい」
「いいんだ。嘘ついてでも、君を守れたなら、それでいい」
「……私、ほんとはもう限界かも」
「誰にも言えなくて、手も繋げなくて、キスもできなくて……
でも、瞬くんの言葉で、また頑張ろうって思えた」
そう言って、彼女はそっと瞬に抱きついた。
「好きだよ。……私、君に会えてよかった」
「俺も。……誰がなんと言っても、ずっと好きだから」
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