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第一話 始まりの朝




「おじさん、おばさん、ぼくがやるよ、ぼくがルナ姉を助ける」

「……だから……………」

少年の決意に満ちた言葉に二人は涙を流し、少年を強く抱きしめた。


_______________________


 この世界はマナに満ちている。人々が生活するありとあらゆることにマナが使われている。火を起こす、洗濯をする、食べ物を冷やす、車を走らせるなどマナがなければ人々は何も出来ない。そんなマナが満ちているこの世界では魔術が発達し、魔術を使う魔術師が魔族の脅威からこの世界を守っている。





 分厚いカーテンの隙間から一筋の朝陽の光が部屋に差し込み、大きな白いアンティークベッドで夢見る少女の白く澄んだ顔を照らし、現実世界へと引き戻した。


「う、う〜ん」


 少女は光に照らされた右目をうっすらと開け、暗黒に染められた空間に明るさを迎え入れた。頭の中にかかっていたモヤが少しずつ晴れていく。少女は上半身をゆっくり起こすと、欠伸をしながら両腕を上に伸ばしてストレッチをした。


「ふわぁ〜っ」


 目尻に一粒の涙を溜めながら、足にかかっていた上布団を捲りベッドから出た。分厚いカーテンを両手で左右に広げ部屋いっぱいに朝陽を迎えいれた。少女は開けたカーテンの先にある窓を開けベランダに出る。着ているフリル付きの寝巻きがそよ風でゆらゆらとたなびく。朝陽を全身で浴び、両腕を上に伸ばし両足も伸ばし大きくストレッチした。


「うう〜ん、気持ちいい〜」


 雲一つない晴れた空を満足そうに眺める少女ーーールナマリア・アルド・ラインハルトは、


「今日から三年生、良い年になるといいな」


 ベランダの手すりを掴みながら、胸にこだまするワクワクを高鳴らせていた。ベランダから部屋に入ると、扉をノックする音が聞こえた。


「ルナマリア王女様、起床時間でございます」


 メイドのトーラがルナマリアを起こしにやってきた。ルナマリアは扉越しに、


「おはよう、トーラ、もう起きているわ」


と、返事をする。


「おはようございます、かしこまりました、朝食の準備が出来てございます」


「わかったわ、支度が済んだら行くわね」


 フリルの付いた寝巻きを脱ぎ、真っ白い下着になりながら扉向こうにいるトーラに返事をした。ルナマリアは昨夜メイドが用意した着替えが置いてあるテーブルまで歩き、白いニーハイソックスを手に取ると、テーブル横のアンティークなイスに座り、細くて長い綺麗な足にソックスを通す。


 ニーハイソックスを履き終えるとルナマリアは立ち上がり、次は真っ白いシャツに手をかけた。


 シャツを手に取ったとき、部屋の外の階段をドタバタと駆け上がる足音が聞こえ、次第にルナマリアの部屋に近づいてくるのがわかった。次の瞬間、ノックも無しに勢いよく開く扉。


「ルナ姉、おはよー、今日からピカピカの新一年生、神名修吾が迎えにきたよ、学院行こ〜!」


 ルナマリアの部屋にズカズカと入る幼馴染の少年、神名修吾は元気いっぱいに大声でルナマリアに挨拶すると下着姿でワイシャツを手に取ったまま、修吾を見て固まっているルナマリアと目が合った。


「あ………」


 修吾の額から変な汗が噴き出してきた。入ってはいけないときに部屋に入ってしまったと認識した。


 ルナマリアは左手に持っていたシャツを拡げて上下の真っ白い下着を隠すと、反対の右手を横に伸ばした。ルナマリアの額の血管がピキピキと音を立てながら、盛り上がっていく。横に伸ばした右手を中心に小さな光の粒子(マナ)がいくつも現れ収束し握り拳大の光の球に変化した。次第にルナマリアの上半身の周りを無数の光の球が覆い尽くした。


「アンタ、部屋に入るときはノックしなさいって言ってるでしょう!」


 横に伸ばしていた右手を上に移動させながら叫ぶルナマリア。


「ちょ、ちょっと待って、ルナ姉それは洒落にならないから………ルナお姉様?」


 両手を前に出して後退りしながら、やめるように説得する修吾。


「一旦落ち着こう?話せばわかる、ね、ね?」


修吾は後退りしゴンッと入って来た扉に背をぶつけ閉め、自ら退路を断った。


「問答無用!」


ルナマリアの右手が上から前に移動した。それと同時にルナマリアの周囲に現れていた無数の光の球が修吾の顔目掛けて襲い掛かる。


「ちょっ、やっ…め…」


「ぎゃああああああああぁぁぁぁ」


修吾の断末魔とともにルナマリアの部屋の窓や扉の隙間から目を覆い隠したくなるくらい眩しい閃光が内から外に向かって放たれた。



「なぁ、セバスよ」

「いかがなさいましたか?、国王陛下」


 屋敷の一階の食堂でアンティーク調の長いダイニングテーブルと同じ作りのイスに腰掛け、朝のコーヒーを飲みながらやや後ろ隣に立っている執事長のセバスチャンに話しかけたのは、ラインハルト王国現国王ルーベルク・アルド・ラインハルト。


「今日も良い日になりそうだな」

「さようでございますね、国王陛下」


 ルーベルクは二階から聞こえる修吾の悲鳴を聞くと、嬉しそうに熱いコーヒーを啜った。


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