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神様、ご褒美をください。大切にします。

「すみません。薬草踏みつけてるんでどいて貰えます?」

「あ、はい。すみません。横にどけばいいですかね?」


 これが、エリーと交わした最初の会話な事は今も後悔している。


 ---


 僕『レオナルド・イワノワ』がいるこの世界『パンドラボックス』には神のお告げがある。


『頑張った生き物にはご褒美を与える』


 と。

 神殿の巫女が伝える神のお告げは絶対で嘘がない。

 この不思議なお告げもちゃんとしていた。


『頑張った生き物』というのは何なのかはまだ解明されていない謎だけれど。


 結果を見れば神がマメにお告げを守ってくれているのが分かる。


 例えば、素晴らしい武器や防具を毎日せっせと作り続けていたドワーフ族の女性。ある日起きたら目の前に希少金属が山ほど積まれて、好みの異世界人が横に立っていたらしい。

 また、積極的に地方の村や街をまわって魔物を狩続ける冒険者。ある日、目の前にタイプの異世界人が居たそうだ。


 ……このような話はいくらでもある。

 そこそこの異世界人がこの世界にご褒美としてやってきている。

 ありがたい事だ。


 神のお告げには続きがあり、


『落としたご褒美は大事に使うように。そうすれば豊かになり、潤い、さらなる幸福に導かれる』


 と。

 だから、デーモティアス王国では異世界人を保護して逃さない法律が作られている。


 また、今まできた異世界人から聞いて、文化や好み、異世界人の国の種類による対応の違い等を対策している。

 何故か、身分が高い者や冒険者、技術者、専門職についているものなどはご褒美を貰う可能性が高い。

(もちろん、それ以外でもご褒美が降ってくるものはいないわけではない)


 そこで、上記の者たちは異世界人を迎える講習も受けたりしている。

 もちろんこの僕も異世界人を迎える講習は受けている。


 ふふふ、何を隠そう。

 この僕は個人医院を開設している。

 レオナルド・イワノワ、治癒士25歳、独身の花のエルフだ。

 寿命が800年あるエルフにしてはとても若い。


 しかし、僕はある夢があって、エルフの里を15歳くらいで出てきた。

 もちろん、さっきから話している『頑張った生き物にはご褒美を与える』の『ご褒美』目当てだ。

 神からのご褒美が欲しい。


 僕はエルフの中でも欲望まみれのエルフだった。

 治癒の才能があるのはだいぶ小さい頃には分かっていた。治癒の魔法を生かしてご褒美を手に入れたい。

 僕はそんな欲望でいっぱいだった。

 この世界『パンドラボックス』の女性は悪くはない。

 悪くはないけれど、なんかガツガツしている人が多くて怖い。

 ……欲望まみれな僕が言うなって話だけれど


 好みの異世界人をお嫁さんに貰って富と名誉をこの手に掴みたい。

 その為には『頑張った生き物』にならないといけない。


『頑張った生き物』とは何か。僕はこう考えた。


「こちらがポーション。こちらが体内の寄生虫の殺虫剤です。お大事に」

「えーと、こっちがダイナモ伯爵様への特別製ハイポーションと眼精疲労の回復薬ベリーベリー」

「こっちが腕生え薬」

「あっ、薬草が切れる! 取りに行かないと」


 ……以上が、ここ最近の僕の台詞だ。

 お分かりだろうか。


 エルフの里から出て、大都市リリスの近くの「ドレイン町」で個人医院をしている。

 助手も置かないで、僕一人で医院を回している。


 もちろん、掃除業者や備品補充の商人、会計の顧問、社会保険士などは雇っているけれど。医療事務は魔道具を動かしている。


 基本、エルフの強靭な肉体に任せてあり得ないぐらい仕事をしていた。


 とりあえず、人のまねをしてみたのだ。

 武器や防具をひたすら作っていたら、ある日ご褒美を授かったというドワーフ族の女性を。


 でも、25歳になってもご褒美は授からなかった。

 もう10年以上も医院の仕事をしていると、僕はもう半分やけになって仕事をし続けていた。

 もう引けない。


 そんなやばい毎日を送っていたある日の事だった。


「薬草薬草薬草……」


 切れてしまった薬草を探しに近くの草原に行った時の事だった。

 ふと、探している薬草を踏みつけている小柄な人間が居た。

 アナライズをしなくても分かる妙なバッドステータスが付与されている。


「すみません。薬草踏みつけてるんでどいて貰えます?」

「あ、はい。すみません。横にどけばいいですかね?」


 つっけんどんになってしまった言葉に丁寧な言葉が返ってきた。

 大方、空間転移の迷子だろう。


 薬草を集めてその場を離れても妙に気になって戻ると、まだそこに人間は立っていた。

 なんと、珍しいバッドステータスはさっきから短時間で数が増えていた。


 しかも、この人!

 放っておくと、何をとは言わないが漏らしてしまう!


 ……そこからは怒涛の展開だった。

 その人間は僕への『ご褒美』の人間だったのだから。


 講習通りに、逃げられないように大胆にフレンドリーに優しく異世界人を連れ帰った。


 この世界に早くなじむように薬を飲ませる。

 落ち着いて観察すると大人しい優しい顔つきをした黒髪黒目の人間だという事が分かった。

 『ご褒美』らしく、様々な珍しい病気やウイルスや菌をその体に抱えていた。


 もう僕は『ご褒美』としてこの世界に堕ちてきた人間『エリー』が大好きだった。

 だって僕の為の女の子なのだ。

 好きにならないわけがない。

 優しくて控えめな性格とか、僕の作ったものを美味しそうに食べてくれるのとかありえないぐらい好きになっていた。


 講習通りに事を進めれば、役所がエリーをこの国に縛り付ける契約書を作ってくれた。


 契約書には『サタン』と神の名が書かれている。

 神の名前は異世界人には分からない文字で書いてある。

 別の異世界人が、早い段階で神の名を知った所暴れて逃げそうになった事があるからだそうだ。


『神の名においてデーモティアス王国の王国民はいつまでも____をこの国で大切にし幸せにする努力をする』


 エリーをいつまでもこの国に縛り付ける呪いがかかっている契約書だ。

 僕はその書類が役所の奥深くに保存されてようやく安心できた。


 エリーは契約書にサインした瞬間からデーモティアス王国から出られないし、デーモティアス王国民以外と接する事はできなくなった。(契約者本人の意識が国から出ること、王国民以外と接する事を避けるように変わった)

 また、契約書にあったように『いつまでも』大切にされる為に、寿命が伸びている。

『ご褒美』を逃さない為のやむを得ない処置だ。


 もちろん、こちらもエリーを幸せにする努力をするように呪いがかかっている。

『ご褒美』に呪いをかけたのだから、それは当然の報いだ。


 今日もエリーは様々な富と愛を撒き散らしながら生きている。


「エリー、幸せ?」

「どうしたの? それよく聞くね。幸せだよ、レオ」

読んでくださってありがとうございました。

異世界転移で誰も彼もが幸せで良しでした。

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