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第3話『カラオケ-後編-』

 あおいと愛実と一緒に、カラオケでの楽しい時間を過ごしていく。そんな中、


「午後6時までまだまだ時間がありますし、ここで一度ゲームをしませんか?」


 あおいがそんな提案をしてきた。どんなゲームを考えているのか、あおいは面白がった表情を見せる。


「ゲーム?」

「どんなゲームかな? やっぱり歌うこと?」


 俺と愛実が問いかけると、あおいは口角を上げてしっかりと頷く。


「このカラオケには採点機能がついています。ですから、同じ曲を歌って点数勝負をしませんか?」

「点数勝負か。カラオケならではだな」

「そうだね。点数勝負は何度もやったことあるよ」

「そうですか。それで、一番点数が低かった人は罰ゲームです」


 そう言って、ニヤリと笑みを浮かべるあおい。

 罰ゲームありか。だから、さっき……あおいは面白がった表情を見せたのかな。再会してからは全然ないけど、小さい頃は俺に小さないたずらをすることがたまにあった。


「罰ゲームか。そういうのがあった方が勝負も盛り上がるか」

「そうだね。内容次第では罰ゲームありでやってもいいよ」

「愛実と同じだ」

「ありがとうございます。罰ゲームでよくやっていたのは、最下位の人がみんなの飲み物を取りに行くとか。最下位の人にいくつかのドリンクを混ぜたものを飲ませるとか。テンポMAXで歌ってもらうとか。あとは、下位を2、3人決めてフードメニューを奢ってもらうこともしましたね」

「なるほどな」


 カラオケボックスでの罰ゲームだ。歌うことや飲食系絡みの内容になるか。


「ドリンク系だと気軽に罰ゲームができそうだね」

「そうだな。3人だと、みんなのドリンクを持ってくるのは罰ゲームって感じもしないし。オリジナルブレンドのドリンクを飲ませるっていうのが一番良さそうだ」

「どんな味になるか分からないしね」

「では、最下位の人は他の2人が作ったオリジナルドリンクを飲んでもらうことにしましょうか。点数が同じで最下位が2人になったら、じゃんけんで決めるということで」

「それでいいぞ」

「分かったよ」


 あおいと愛実の作るオリジナルドリンクか。愛実がいれば飲めそうなドリンクになりそう。だけど、さっきのニヤリとしたあおいの笑顔を見ると……とんでもないドリンクを飲まされそうな気がする。……ま、負けたくねぇ。急に緊張感出てきたぞ。

 3人とも知っている曲でないと勝負ができない。なので、クリスのオープニングテーマにもなった女性歌手の曲になった。

 じゃんけんで順番を決め、俺、愛実、あおいの順番で歌うことに。

 罰ゲームがかかっているので、みんなガチで歌っていく。その結果、


「……言い出しっぺが負けるのは二次元にしかないと思っていました」


 あおいが最下位となった。言い出しっぺなのもあってか、あおいは結構ガックリしている。はあっ……と深いため息をついている。ゲームしようとか、罰ゲームありとか言っていたときの楽しげな笑顔はどこへ行ったのか。

 ちなみに順位は、1位は愛実で95点、2位は俺で88点、3位はあおいで86点だった。

 愛実は今までのカラオケでも歌ったことがあるので、最下位にはならない可能性が高いだろうと思っていた。実際に、2番目に歌った愛実は俺よりも高い95点を出した。

 最後に歌ったあおいも結構上手で、罰ゲームも覚悟していた。ただ、最後に歌うプレッシャーなのか、ところどころで音程が外れたため、俺よりも低い86点にとどまった。


「まあ……そういうときもあるさ、あおい」

「そ、そうだよ。それに、歌う順番が違っていたらどうなっていたか分からないし」

「……そうですね。さあ、私にオリジナルドリンクを作ってきてください」


 はい……とあおいは元気なく空になった自分のグラスを愛実に渡した。

 俺は愛実と一緒に部屋を出て、ドリンクコーナーへと向かう。

 ドリンクサーバーで、様々なジャンルの飲み物が提供できるようになっている。さあ、この中から何のドリンクを混ぜようか。


「何にしようか、リョウ君」

「いっぱいあるから迷うなぁ。色々入れ過ぎると変な飲み物になるだけだから、2、3種類くらいがちょうどいいかもしれない」

「そうだね。系統が一緒のものだと普通に美味しくなりそうだから……ジュースとお茶みたいに別系統のものにしようか」

「それがいいな。じゃあ……オレンジジュースと緑茶にするか」

「それいいね。オレンジティーはあるけど、オレンジ味の緑茶はないし。緑茶を入れるなら、コーラも入れるといいかも。緑茶に炭酸もないから」


 そう言い、愛実はグラスにオレンジジュース、緑茶、コーラをそれぞれ同じくらい入れていく。ドリンクのボタンを押す愛実はちょっと楽しそうで。

 愛実がグラスに入っているストローで混ぜていくと……淀んだ黄緑色の液体ができた。


「罰ゲームのドリンクらしいビジュアルだな」

「そうだね。それぞれのドリンクの味は分かるけど、この液体の味は分からないね」

「そうだな」


 緑茶の苦味と、オレンジジュースの酸味、コーラの甘味がどんなハーモニーを生み出すのか。そんなドリンクを飲んだあおいはどんな反応を示すのか。楽しみだけど、何だか申し訳ない気持ちも。

 部屋に戻ると、中では無表情でソファーにもたれかかっているあおいの姿があった。これから訳の分からないドリンクを飲まされるんだから、こうなるのも無理もないか。あとは最下位になったショックもあるのかもしれない。さっきの言葉からして、これまでは点数勝負を企画しても負けてこなかったのかも。


「ただいま、あおいちゃん」

「ただいま」

「……あっ、おかえりなさい。……うわあっ、不安を誘う見た目のドリンクになりましたね……」


 そう言い、あおいは愛実が持っている特製ドリンクの入ったグラスを凝視している。今、どんなドリンクが入っているのか推理しているのだろう。

 俺と愛実は、それまでと同じ場所に腰を下ろす。


「はいっ、リョウ君と一緒に作った特製ドリンクだよ」


 いつもの優しい笑顔でそう言い、愛実はあおいに特製ドリンクが入ったグラスをあおいに手渡した。


「み、緑系統の色をしているのにシュワシュワしてます。何が入っているんでしょう……」


 独り言のように言うと、あおいは不安そうな表情でグラスを今一度見つめたり、鼻を当てて匂いを嗅いだりしている。


「とりあえず、一口だけ飲んでみてくれ」

「あおいちゃんの嫌な味だったら、一口だけでもかまわないよ」

「わ、分かりました」

「あおいちゃん、どうぞ召し上がれ」

「い、いただきます」


 あおいはストローを咥えて、ちゅーっと特製ドリンクを飲んでいく。

 特製ドリンクが口の中に入ったのだろうか。あおいは「んっ」と低い声を漏らし、眉根を寄せる。さあ、どんな味だろうか。


「……最初に炭酸を感じて、次にオレンジらしき酸味を感じました。その後に甘味と渋みがやってきて。今は口の中に緑茶の風味がありますね。オレンジジュースと緑茶と……コーラですかねぇ。ちょっと黒みがかった見た目ですし」

「正解だよ、あおいちゃん」

「その3つを混ぜたんだ」

「……そうですか」


 どんなドリンクを混ぜたのか言い当てられたからか、あおいはちょっと嬉しそう。


「それぞれは美味しくて好きですけど、混ぜると微妙な味わいですね。緑茶の風味があるのに炭酸を感じるのも不思議な感覚でした。飲めなくはないですけど、個人的には美味しくないです」

「ふふっ、そっか」

「まあ、罰ゲームのドリンクとしてはちょうどいい出来になったんじゃないか。美味しくはないけど、捨てなくてもいい程度で」

「量もグラス3分の1程度ですからね。このくらいなら飲めるかと」


 あおいはそう言うと、俺達が作った特製ドリンクをゴクゴクと飲んでいく。微妙な味わいと言うだけあってか、飲んでいる間はずっと笑みは消えていた。罰ゲームらしい様子だ。

 ほぼ休みなく飲み、あおいは特製ドリンクを全て飲みきった。

 本人曰く微妙な味のドリンクを全部飲んだので、俺はあおいに称賛の拍手を送った。そんな俺を見てか、愛実もあおいに拍手。


「よく飲んだな。もちろん、罰ゲームはこれでOKだぞ」

「お疲れ様、あおいちゃん。私が言っていいのか分からないけど……頑張ったね」

「……全部飲んでやりましたよ」


 あおいは俺と愛実に向かってサムズアップする。よくやった。


「ただ、今でも口の中に特製ドリンクの味が残っているので、新しいドリンクを取りに行ってきます……」


 あおいは力のない声でそう言うと、自分のグラスを持って部屋を出ていく。口直しのために新しいドリンクを飲みたくなるよな。


「飲みきれるドリンクになってて良かった」

「そうだね。あのドリンクに何が入っているのかを当てて凄かったな」

「そうだな。俺だったらきっとできないと思う」


 あおいの舌の凄さを実感した罰ゲームだったな。

 それから2、3分ほどであおいが部屋に戻ってきた。ドリンクコーナーで何か飲んだのか、あおいの顔は普段に近い明るさを取り戻していた。ちなみに、今はあおいのグラスにはりんごジュースが入っている。


「りんごジュースを飲んだら元気が出ました! さあ、また歌っていきましょう!」


 その言葉が本当であると示すように、あおいは元気な声でそう言った。りんごジュースは小さい頃からあおいが好きだったな。好きなジュースを飲んで復活して良かった。

 それから、フリータイムの時間が終わる午後6時直前まで、俺達3人は歌いまくった。

 また、その中であおいが、


「負けで終わってしまうのは嫌です。リベンジしたいですっ!」


 と言ってきたので、再び点数対決することに。

 前回最下位だったあおいが選んだ曲で勝負したのだが……今度は俺が最下位になってしまった。リベンジを果たしたあおいは滅茶苦茶喜んでいて。

 また、罰ゲームとして、あおい&愛実特製の、烏龍茶とジンジャーエールと野菜ジュースを混ぜた何とも微妙な味わいの特製ドリンクをグラス半分ほど飲まされた。ちなみに、2人に教えてもらうまで、何を混ぜたのか分からなかった。

 あおいとは久しぶりで、この3人で行く初めてのカラオケはとても楽しい時間になった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 緑色なのに炭酸……みてみたい(笑)。 [一言] 更新ありがとうございます。 涼我君は美女二人侍らせてカラオケしてんだから、2回とも罰ドリンク飲んでください。 続きを楽しみにしておりま…
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