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プロローグ『試験勉強』

第4章




 5月10日、火曜日。

 ゴールデンウィークが明けてから数日ほどが経った。

 立夏が過ぎ、今は初夏と呼ばれる時期だ。そのため、晴れていると結構暑く感じる日が多くなってきた。雨が降らなければ夏日になるのが当たり前に。晴れて真夏日目前となる日もあった。あと3週間で夏になるのも納得だ。ただ、この時期から暑いと、夏本番の晴れた日にはどこまで暑くなるのか不安になってしまう。

 また、中学以降はゴールデンウィークが明けると恒例になっている学校行事がある。


 中間試験だ。


 2年生になってから初めての定期試験が、来週の火曜日から金曜日まで実施される。

 俺の通っている調津高校では校則により、試験1日目の1週間前から定期試験が終わるまで、部活動は原則禁止となる。つまり、今日から禁止となるのだ。このことで、学校は試験ムードになっていく。それもあってか、


「麻丘! 香川! 桐山! そろそろ中間試験だな! 今年も一緒に勉強しようぜ!」


 放課後になってすぐに、鈴木が俺達に試験対策の勉強会を提案してきた。そんな鈴木の両隣には道本と海老名さんの姿が。

 中学の頃から、定期試験前になると愛実と道本と海老名さんと一緒に勉強会をすることが多かった。高校で出会った鈴木とも、1年のときは一緒に勉強して。だから、2年になってからも、試験前には一緒に勉強会をする流れになると思っていた。


「勉強会ですか! いいですね! 私も京都に住んでいた頃は試験前には友達と勉強しました! みんなで一緒に試験対策の勉強をしましょう!」


 あおいは勉強会を開くことに大賛成。それもあり、今回の中間試験でもみんなで試験対策の勉強をする運びとなった。

 今日の勉強会の会場は俺の家。ちなみに、鈴木以外は徒歩圏内に住んでいるので、勉強会の会場は鈴木以外の家になることがほとんどだ。

 俺の部屋にあるローテーブルとクッションだけではスペースや個数が足りないため、納戸から折りたたみ式のローテーブル、リビングからクッションを持ってくる。

 1年の頃、勉強会で座る場所は俺から時計回りに鈴木、道本、海老名さん、愛実が定番だった。俺の隣には愛実がいて、正面には鈴木がいる。なので、5人はこれまでと同じ場所に座ることに。そのため、あおいには俺の左斜め前、海老名さんと向かい合う位置に座ってもらうことになった。

 あと、みんなの気分転換になるようにと、ガムシロップ入りのアイスコーヒーを人数分用意した。


「それじゃ、今年度初の試験前の勉強会をやるか。ちなみに、俺達は試験前の平日の放課後の勉強会では、まずはその日の授業で出た課題をやるんだ。あおいは去年まではどうだった?」

「私もそのような形でやっていましたね。みんなと一緒なら、分からないところを教え合えますし。提出が翌日の授業という課題もありましたから。それに、試験範囲の内容になっていることが多いですから、試験勉強にもなりますし」

「一石二鳥になるよな」


 あおいも同じような流れで、友達と一緒に勉強をしていたか。それなら、あおいもやりやすいだろう。安心した。


「よし。じゃあ、今回もまずは課題をやっていこう」


 俺がそう言うと、あおいと鈴木は「おー!」と元気よく返事した。2人は苦手科目があるけど、やる気になっているのはいいことだ。

 こうして、2年生最初の定期試験の勉強会を始める。

 さっき話したように、まずは今日の授業で出た課題を取り組み始める。苦手意識を持っているメンバーが多い数学Ⅱと数学Bから。

 どちらの科目も、今日の授業の内容を含めた復習プリント。中間試験の範囲だから、試験勉強の一環になる。この課題をやって、内容をちゃんと身に付けよう。


「涼我君、数Bの問3を教えていただけますか?」

「麻丘! オレは問2でつまずいてる! 教えてくれ!」

「私も問4で。2人の後でいいから教えてくれるかな、リョウ君」


 あおいと愛実、鈴木が結構な質問を受け、彼らの分からないことについて解説していく。3人は数Bが苦手だもんな。道本と海老名さんは平均程度にはできるので、簡単な問題については2人が解説することも。

 みんな俺の解説を理解しようと努力する姿勢が見えるし、こうして誰かに教えることで、自分の理解度が深まる。だから、分からない問題を教えることは全く苦に思わない。むしろ、この経験があるから、これまで定期試験ではいい点数を取れているんじゃないかと思っている。

 俺は自分のプリントを進めつつも、あおいや愛実、鈴木からの質問に答えていった。


「……で、これが答えになるんだ」

「おおっ、なるほどな! 分かったぜ!」

「今の解き方を覚えておこうな」

「おう! よしっ! これでオレも数学Ⅱも終わったぜ!」

「お疲れ様。じゃあ、みんな数Ⅱと数Bのプリントが終わったから、一旦休憩しようか」


 俺がそう提案すると、全員が賛成してくれた。よって、休憩することに。

 帰る途中で立ち寄ったドラッグストアで購入したチョコレートマシュマロを食べる。課題をした後だから、甘いマシュマロがとても美味しく感じる。コーヒーとの相性とも良くて最高だ。

 苦手科目の課題を終わらせたからか、あおいと愛実、鈴木は高い頻度でマシュマロに手を伸ばしている。分からない問題について考えて、俺や道本、海老名さんの解説を聞いて理解しようと頑張っていたもんな。


「いやぁ、麻丘達に分からないところを教えてもらっているから、今回の中間試験も何とかなりそうな気がしてきたぜ!」

「ははっ、そうか。そう言ってくれて嬉しいよ」


 鈴木は理系科目を中心にかなり苦手な科目があるけど、試験前に頑張って勉強しているのもあり、これまで一度も赤点を取らずに済むことができている。結構ギリギリだけどな。


「嬉しいな、麻丘。あと、鈴木には須藤さんっていう彼女もいるもんな」

「おう! 休みの日には美里に教えてもらうこともあるぜ!」


 そう言い、白い歯を見せてニッコリと笑う鈴木。

 鈴木の彼女の須藤さんは別の高校に通っている。その高校はかなりの高偏差値の女子校。鈴木曰く須藤さんは結構頭が良く、俺と同じくらいに分かりやすく勉強を教えてくれるらしい。


「鈴木君の言うこと分かりますね。私も数学には不安がありますが、涼我君達に教えてもらったので何とかなりそうだと思えます。赤点は取らずに済みそうだって」

「あおいは赤点を取るかもしれないと思うほどに不安に思っているのか? まあ、数Bとかは普段、課題をしているときにも俺に分からないって訊いてくるけど」

「数Bは特に難しいと感じることが多いですね。ただ、赤点を考えるのは不安よりも、バイトが主な理由です」

「そうなのか」

「実は……中間試験で赤点を取らなければ、バイトをしていいと両親と約束していまして。それまではお小遣いを渡すから、調津高校での勉強を頑張りなさいと」

「なるほどな」


 学生の本分は勉強だ。その勉強がある程度できていなければ、バイトをする許可は出せないのだろう。中間試験は、娘が新しい高校での勉強についていけているかどうかを判断するいい材料になる。赤点を取らなければ最低限はできていると言えるから、赤点なしを条件としたのだと思う。


「そういえば、あおいに陸上部のマネージャーの話をしたとき、中間試験が明けたらバイトをしたいと思っているって言っていたわね」

「ええ。両親との約束があったんです」


 そういえば、連休明けに海老名さんからマネージャーをしないかって誘われたとき、海老名さんがあおいについて今と同じようなことを言っていたっけ。


「私はてっきり、中間試験が終わった頃には調津高校の学校生活にも慣れているからかなって思っていたよ」

「それもありますね。高1のバイトも、学校生活に慣れて、高校で初めての定期試験で赤点を取らなかったので、6月の頭から始めたんです。ところで、涼我君はいつからサリーズのバイトを始めましたか?」

「高1の4月から始めたよ。趣味で使うお金を稼ぎたいって言ったら『バイトも勉強も頑張りなさい』って許可してくれた。ただ、もし定期試験の点数や成績が悪かったら、シフト減らしてとかバイト辞めてって言われたかもな」


 幸いにも、高校入学してからずっと定期試験の点数や成績は高水準をキープできている。赤点も取らずに済んでいる。

 ただ、バイトを始めた直後は体力的にちょっとキツいときがあったな。授業中も眠かったし、家での勉強も授業で出た課題をこなすので精一杯だったから。少し経てば、バイトにも慣れて、勉強との両立もできて、漫画やアニメなど趣味を謳歌できるようになった。


「そうだったんですね。ただ、涼我君は私の分からないことを分かりやすく教えてくれますし、愛実ちゃん達からも成績がいいと聞いていますし。凄いです」

「ありがとう。早い時期にバイトと両立できたし、試験前はシフトを減らせるように調整してもらえるからな。それに、普段からあおい達に教えるのもいい勉強になってる。国語や英語では教えてもらうこともあるし。みんなのおかげで、いい点数や成績を取れているんだよ」


 ありがとう、と再びお礼を言う。

 俺からお礼を言われるのが予想外だったのだろうか。愛実と海老名さんは一瞬、目を見開いた。ただ、そんな2人も含めて、みんな俺に優しい笑顔を向けてくれる。

 みんなの笑顔を見ると自然と頬が緩んでいく。そんな中で飲むコーヒーは格別に美味しい。

 自分の勉強はしっかりとしていく中で、あおいや愛実達の力になれればと思う。特にバイトができるかどうかがかかっているあおいには。


「よしっ! 残りの課題もみんなで片付けようぜ!」


 鈴木が元気良くそう言うのをきっかけに、俺達は勉強会を再開するのであった。

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