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10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ  作者: 桜庭かなめ
特別編5

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前編『球技大会の日』

特別編5




 9月22日、木曜日。

 午前7時。

 いつも通りの時間に目が覚めて、俺はお手洗いに行って用を済ませ、洗面所で顔を洗い、歯を磨く。そして、着替えるために自分の部屋へと戻っていく。ここまではいつもと変わらない平日の朝だ。

 ただ、部屋で寝間着から着替えるのは通っている東京都立調津(ちょうつ)高等学校の制服……ではなく、体操着である。これがいつもと違うところだ。

 なぜ、体操着に着替えるのか。

 今日は高校で球技大会が開催されるからだ。

 校則で登下校時は学校の制服を着るようにと決まっているけど、球技大会である今日は特例で体操着やジャージを着て登下校してもいいことになっている。なので、今日は体操着やジャージ姿で登校しようと決め、このタイミングで体操着を着るのだ。9月も下旬になり、今は涼しいので上はジャージを羽織ることに。

 着替え終わり、俺・麻丘凉我あさおかりょうがはキッチンに行き、両親が作ってくれた朝食を食べる。今日が球技大会なのを知っているからか、今日の朝食はいつもよりもしっかりとしたメニューだ。朝食を完食すると……いつも以上にパワーが付いた気がする。

 朝食を食べ終えて、自分の部屋に戻る。

 スクールバッグの中身を見て、忘れ物がないことを確認した後、俺は隣人であり幼馴染であり、そして恋人の香川愛実(かがわまなみ)の部屋の方にある窓を開ける。

 今日は朝からよく晴れており、日差しが直接当たる。夏の間はとても暑苦しく感じた日差しも、この時期になると心地良さが感じられるようになった。

 愛実の部屋の窓が開いていないけど、窓の向こうに人影が動いているのが見える。おそらく愛実だろう。そんなことを考えていると、愛実の部屋の窓が開いた。そこにはジャージを羽織った愛実の姿が。


「リョウ君、おはよう」

「おはよう、愛実」


 愛実と挨拶し合い、小さく手を振り合った。


「球技大会当日になったな」

「そうだね。体操着やジャージを着たり、ジャージ姿のリョウ君を見たりすると当日になったんだなって実感するよ」

「いつもと違う服装だもんな。あと、体操着で登校していいのは球技大会と体育祭の日くらいだし、特別な日って感じがする」

「そうだねっ」


 愛実はニコッと笑いながらそう言ってくれる。恋人にこうして同意してもらえると嬉しい気持ちになる。

 それから少しの間、愛実と俺は談笑する。こうして登校前に部屋の窓を開けて話すのは昔からの習慣だけど、服装がいつもと違うだけで特別な感じがした。


「もうそろそろあおいちゃんとの待ち合わせの時間だから、お話しするのはこのくらいにしよう」

「ああ、そうしよう。また後でな」

「うんっ」


 俺は窓を閉め、スクールバッグを持って自分の部屋を後にする。

 1階のキッチンに行き、お弁当と水筒をスクールバッグに入れる。


「じゃあ、いってきます、母さん」

「いってらっしゃい、凉我。球技大会頑張ってね」

「ああ、頑張ってくるよ」


 母さんとそんなやり取りをして、俺は家を出る。

 家を出ると、そこには俺と同じく体操着に上はジャージを羽織っている愛実がいた。俺と目が合うと、愛実はニコッと笑いながら手を振ってくる。


「おはよう、リョウ君」

「おはよう、愛実」


 朝の挨拶をすると、愛実は俺におはようのキスをしてきた。

 平日は朝にこうして家の前でおはようのキスをするのが習慣になっている。今のように幼馴染の桐山(きりやま)あおいがまだいないときはもちろんのこと、あおいがいるときにもすることがある。ちなみにあおいがいる前でキスすると、


『今日もお二人はラブラブですね!』


 と言われることが多い。

 これまでにたくさん愛実とキスしてきたけど、愛実の唇は温かくて柔らかくてとてもいい。最近は朝が涼しくなってきたから、愛実の唇の温もりがとても心地良くなってきた。これからは寒い季節になっていくし、愛実の温もりがもっと心地良くなるのだろう。

 あと、さっき窓越しで会話したときと同様に、体操着とジャージ姿だからおはようのキスに特別感がある。それに、愛実とキスして、今日の球技大会を頑張れそうな気がする。

 少しして愛実の方から唇を離す。すると、目の前にはニッコリとした笑顔で俺を見つめる愛実がいて。物凄く可愛い。


「今日もおはようのキス良かったです」

「ああ、良かった。今日の球技大会を頑張れそうだ」

「私も頑張れそうだよ」


 えへへっ、と声に出して笑う愛実。本当に可愛いよ。

 それから程なくして、


「お母さん、いってきます!」

「いってらっしゃーい。球技大会頑張ってね」

「はいっ、頑張ります!」


 桐山家の方から、あおいとあおいの母親の麻美(あさみ)さんの声が聞こえてきた。

 桐山家の方を見ると……愛実と俺と同じく、体操着姿にジャージを羽織ったあおいが家から出てきた姿が見えた。あおいは俺達を見つけると、持ち前の明るい笑顔になってこちらにやってくる。


「おはようございます、凉我君、愛実ちゃん!」

「おはよう、あおい」

「おはよう、あおいちゃん。あおいちゃんも体操着にジャージを羽織る形なんだね」

「ええ。体操着姿で登校していいですし、今は朝で涼しいですからね」

「そっか。私も同じ感じ」

「俺もだ。じゃあ、学校に行くか」


 俺達は学校に向かって歩き始める。その際、愛実と俺は手を繋いで。


「今日は一日中よく晴れるそうですし、絶好の球技大会日和ですね!」

「そうだな。俺が出るドッジボールは校庭でやるし。晴れて良かったよ」


 そう、俺は男子ドッジボールに出場する。普段一緒にいることが多い友人の道本翔太(どうもとしょうた)鈴木力弥(すずきりきや)と一緒に。

 また、愛実とあおいは女子バスケットボールに出場する。俺達と一緒にいることが多い友人の海老名理沙(えびなりさ)さんも。

 ちなみに、球技大会はドッジボール、バスケットボール、卓球の3種目がある。どの種目に出場するかは今月の上旬のロングホームルームで決めた。


「晴れて良かったよね。バスケは体育館でやるけど、それでも晴れていると気分がいいし」

「愛実ちゃんの言うこと分かります。……調津高校の球技大会がどんな感じか楽しみです!」


 あおいはワクワクとした様子でそう言う。あおいは今年の春、2年生になるタイミングで調津高校に転入してきたからな。それにより、調津高校の球技大会に参加するのは今日が初めて。だから、あおいは楽しみにしているのだろう。それに、あおいは体を動かすのが好きで、1学期に開催された体育祭も楽しんでいたからな。


「あおいならきっと楽しめると思うぞ」

「そうだね、リョウ君。それに、理沙ちゃんや私と一緒にバスケに出場するし」

「そうですね! 愛実ちゃんや理沙ちゃん達と一緒にバスケをするのが楽しみですし、凉我君達が出る男子ドッジボールとかクラスの応援をするのも楽しみです!」


 あおいは明るい笑顔でそう言った。あおいならバスケも応援も楽しめそうな気がするよ。


「あと、今週は今日で終わりですし、明日から3連休なので凄く気分がいいですっ!」


 依然として、あおいは明るい笑顔でそう言う。明日は金曜日だけど、秋分の日で祝日となり、学校が休みになるのだ。よって、今週末は3連休になる。


「あおいの言うこと分かるよ」

「私もだよ。今日は授業ないし、明日から3連休だから嬉しいよね」


 俺と愛実はそう言うと、あおいはニコッと笑って「はいっ」と返事した。

 それからも球技大会のことについて話しながら、3人で調津高校に向かって歩いていく。

 調津高校に近づくと、周りにはうちの高校の体操着姿やジャージ姿の生徒が多い。いつもは制服姿なので、こういうところからも今日はいつもと違うのだと実感する。

 調津高校に到着して、俺達のクラスである2年2組の教室がある教室A棟に入る。昇降口で外用のシューズから上履きに履き替え、階段で教室がある4階まで上がる。

 教室後方の扉から、2年2組の教室に入る。


「おっ、麻丘達来たな! おはよう!」

「おはよう、みんな」

「みんなおはよう!」


 いつも通り、教室後方の窓の近くに鈴木と道本と海老名さんがおり、俺達に向かって笑顔で朝の挨拶をしてくれた。ちなみに、鈴木は体操着姿、道本は下はジャージのスラックスで上は体操着、海老名さんは俺達と同じく体操着姿で上の方はジャージを羽織っている。


「3人ともおはよう」

「おはよう、理沙ちゃん、道本君、鈴木君」

「おはようございます、理沙ちゃん、道本君、鈴木君!」


 俺達も朝の挨拶をして、自分の席に荷物を置きに行く。ちなみに、俺の席は窓側最後尾で、愛実は俺の右隣、あおいは愛実の一つ前の席である。

 自分の席に向かう中で教室の中を見渡すと……今日が球技大会で、明日から3連休だからか明るい様子のクラスメイトが多いな。

 荷物を自分の席に置いて、道本達のところに向かった。


「球技大会当日になったな! 今年は道本だけじゃなくて、麻丘とも一緒にドッジボールができるから楽しみだぜ!」


 鈴木はとっても明るい笑顔でそう言ってくれた。

 去年、俺は鈴木と道本とは別のクラスだった。3人ともドッジボールだったけど、対戦することもなかったし。だから、一緒にドッジボールができるのが楽しみなのだろう。


「俺も麻丘とも一緒にドッジボールができるのが楽しみだ」


 道本は爽やかな笑顔で言う。道本も同じ気持ちか。


「俺も楽しみだよ。鈴木と道本と一緒にドッジボールするの」

「そうか! ……今年も勝ちてえな! できれば、去年のベスト8以上に行きたいぜ!」


 大きな声でそう言う鈴木。やる気に満ちているな。


「気合い入ってるな、鈴木。まあ、去年は鈴木が活躍してたし行けそうな気がする。それに、今年は麻丘もいるからな」

「俺がいて良かったと思ってもらえるように頑張るよ。去年のクラスでは初戦敗退だったから、まずは1勝したいな」


 高校の球技大会では勝利したことが一度もないから、勝利の喜びを味わってみたい。それができるように頑張ろう。あとは、愛実という恋人ができてから初めての球技大会なので、愛実にかっこいいところを見せられるようにも頑張りたい。

 そういえば、去年は初戦敗退だったから、愛実や海老名さんが出場した女子バスケとか、他クラスだけど道本や鈴木が出場した男子ドッジボールとかを応援することの方が多かったな。


「頑張ろうな、道本、麻丘!」

「おう、頑張ろう」

「頑張ろうな」


 勝利できるように、鈴木や道本達と一緒に頑張りたい。


「私もまずは1勝したいですね。以前通っていた京都中央(きょうとちゅうおう)高校の球技大会でバスケに出場したのですが、初戦は勝利できましたし。調津高校の球技大会でも勝利したいです!」

「ふふっ、そっか。……私も1勝はしたいな。去年もバスケだったけど、初戦で負けちゃったし。ね、理沙ちゃん」

「そうね、愛実。今年は1勝はしたいわね」

「一緒に勝利を目指して頑張りましょうね! そして、楽しみましょうね!」

「そうだね、あおいちゃん!」

「頑張って、楽しみましょう!」


 あおい、愛実、海老名さんも勝利を目指してやる気になっている様子。あおいは転校、愛実と海老名さんは去年は初戦敗退だったから、調津高校での球技大会で勝利したことはない。俺も勝利未経験者だから、3人が1勝したいと考える気持ちはよく分かる。


「3人とも頑張って。試合の時間さえ大丈夫なら、バスケの応援に行くから」

「ありがとう、リョウ君。私も男子ドッジボールを応援するからね」

「勝利できるように応援しますね!」

「あたしも応援するわ」

「オレも女バスが勝てるように応援するぜ!」

「俺も応援するよ」


 今年の球技大会では一つでも多くの試合に出て、女子バスケで一つでも多くの試合で応援できたら何よりだ。


「やあやあやあ、みんなおはよう。トーナメント表を持ってきたよ。うちのクラスについては赤いマジックで印を付けてあるからね」


 担任の佐藤樹理(さとうじゅり)先生が教室に入ってきて、黒板にトーナメント表がプリントされた紙を貼っていく。ちなみに、先生は下は黒いジャージ、上は緑色の半袖のスポーツウェアを着ていた。1学期の体育祭でも同じ服装だったな。

 佐藤先生がトーナメント表の紙を貼り終わったので、俺達は黒板に行き、トーナメント表を見る。

 ちなみに、ドッジボール、バスケットボール、卓球はどれも男女別で全学年でのトーナメント戦だ。また、ドッジボールとバスケットボールはクラス対抗のチーム戦で、卓球は個人戦である。

 男子ドッジボールのトーナメント表を見ると……佐藤先生が印を付けていたのですぐに見つかった。うちのクラスの初戦は全体の第2試合で、相手は2年6組か。


「俺達の初戦の相手は同学年か」

「そうだな。同級生だからまだ戦いやすそうだ」

「そうだな。まあ、上級生ならそれはそれで燃えるけどな!」


 鈴木は明るくそう言う。何だか鈴木らしいな。

 1勝はしたいと考えているので、初戦が2年生なのは運がいい方だ。


「女子バスケの初戦は第5試合ですね。相手は2年8組です」

「こっちも相手は同じ学年だね。3年生じゃなくて良かった……」

「そうね」


 女子バスケの方も初戦は2年生か。愛実の言う通り、3年生じゃなくて良かった。

 あと、男子ドッジボールは第2試合で、女子バスケットボールは第5試合か。これなら、初戦はお互いに応援できる。そのことにも良かったと思える。

 それから程なくして、朝礼のチャイムが鳴り、佐藤先生によって朝礼が行なわれる。


「今日は球技大会です。いい天気になって何よりです。先生はできるだけみんなの試合を応援しに行くからね。みなさん、怪我には気をつけて、それぞれ出場する種目を頑張ってね」


 佐藤先生は明るい笑顔でそう言ってくれた。そのことにクラスメイトのみんなが「はーい!」と元気良く返事した。

 高校生になって2回目の球技大会。試合も応援も頑張ろう。

新しい特別編がスタートしました! 既に完成しており、全4話でお送りします。

1日1話ずつ公開していく予定です。よろしくお願いします。

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